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悪魔使いで異世界冒険  作者: インスタントカルマ
12/19

12.尋問

 レブナスさんに付いて砦のおそらく最上階まで登ってきた。 着いた先は鎧や馬具などに入っている紋章が大きく彫り込まれた無骨な砦には似つかわしくない豪華な両開きの扉。


「レブナスさん、ひょっとして隊長さんって領主様だったりします?」

「気が付いたかい? ま、そういう事だから観念して洗いざらい吐いた方が良いと思うよ」

「別に自白しないとイケないような悪事は働いていないので」

「ふむ、そうかね? では開けるよ。一歩入ったら一礼して後は背筋をキチッと伸ばして立っていると印象が良いぞ」

「ご忠告痛み入ります」


 2度ノックして”失礼します! 第一騎士隊 コーバス・レブナス 昨日保護しました参考人を連れて参りました。領主閣下にお目通りをお願い致します”と大声で名乗ると間髪入れずに許可する声が返ってきた。あの声はやはり昨日の隊長さんだ。

 レブナスさんに続いて室内に入り一礼。 屋内にはコチラに向かうように大きな処務机が置かれ、その向こうから昨日話した隊長さん、いや この領トルラート領領主様がオレを見つめている。 昨日も面覆いを跳ね上げた状態で会話をしたが、こうして部屋着姿でいると金髪碧眼に細い顎を見るにつけ「お貴族様」と印象が強い。しかしその鋭い眼光は歴戦の戦士の迫力を感じさせた。 歴戦の戦士なんてコレまで一度も会ったことは無かったけれど、今まで山の様に見てきたハリウッドの戦争モノや剣と魔法のファンタジー映画がオレにそう教えてくれる。


「昨晩は罪も確定しない内から犯罪者用の牢に繋いでしまったようで済まなかったね」

「いえ、誤解の末の不幸な行き違いが有っただけの事です。そしてコレからはもうそんな目に合うことは決して無いでしょう」

「あくまで君は盗賊団とは関係ないと?」

「はい。私は潔白です。あの男たちに会ったのは街道ですれ違ったのが初めての事ですし、リーハン騎士に問われたような首領にも一切関り合いは御座いません。」

「ふむ、、実は君がここに来る少し前に報告があってね? 君が囚われていた牢獄に入れた囚人の傷が完治していたとか。隣の房に入れていた暴れモノの冒険者の言によれば君の手による治療だそうじゃないか? 昨日一瞬すれ違っただけの相手、しかも犯罪者に対して高度な治療行為をする者など居るだろうか? 私はそうは思わない。 彼らが君の知人だったから放置することが出来なかったんじゃないかね?」


 タダでさえ鋭い眼光が一層強く放射されてくる。 ビビるな! ココで視線を外すのは悪手だ。


「私の生まれ育った国では、喩え唾棄すべき犯罪を行った死刑囚だとしても、その者が怪我や病気であれば先ず治療を施し、治癒後初めて自分が成した罪の重さと、それによって受ける刑罰の妥当性を理解させた上で死刑を執行致します。 私は法務に関係ある仕事をしているわけでは有りませんが、その理念については理解しているつもりですし共感しています」

「故郷の流儀に従って無償で癒やしただけと?」

「はい。ご納得頂けませんか?」

「納得行かないね。 君は、、君はそう、酷くアンバランスだ。 最初私は君が南の蛮族の出身だと考えていた。だが少し会話をしてみれば高い教養を持っていることが見て取れる。蛮族でも商家や族長の子女であればそうした礼儀作法を仕込まれて育てられる事も有るだろう。 しかし君にはそうした者達が持つ腹黒さ、打算的な物の見方をする連中の持つ傲慢さは感じられない。善良なのにシタタカ、賢いのに愚直。 今の君の話を聞いて、私には君がまるで善人だけが住む楽園のような世界からやって来た者の様に見えるよ」


 外国から見ると日本人は時々そうな風に見えるらしいね? おまけに危機感や人を疑う事を知らないからすぐ事件に巻き込まれたり。 ま、日本は日本なりの生きて行くのに辛い部分や、人の心の黒い部分もそれなりに持ってるんだけど。


「ときに君は幾つかね?」

「20さ、、20と8歳です。」

「28歳!? それは無いだろ。私の息子と同じか少し上くらい、15前後だと思っていたが、、、」

「私の民族は外国の方からは年齢が低く見られがちですから」

「妖精の血を引いているのかな?」

「エルフやドワーフと言った話ですか? いえ純粋な人間ですよ。」

「君と話していると何が本当で何が嘘なのか分からなくなってくる、、 では別の角度からの質問だ。 君が治療してくれた男たちを捕らえた際に盗品の多くも回収することが出来た。 今回奴らが狙ったのは王国中央に住まう高位貴族を顧客に多く持つ商人でね、被害品には宝飾品や高級衣類、様々な贅沢品を扱っているのだが回収した品々と君から預かっている品を見比べて見たが全く類似性が見られなかった。」

「それでは私への”盗品を運んでいた”という疑いは全て晴れたと考えてよろしいのでしょうか」

「確かにその疑いは晴れた。しかしそれで余計に分からなくなったよ。 アレは何だ? アレらは何処から持って来たものだ? 自称”まじない師”が何故、高位貴族が纏う衣服や魔道具を遥かに越えるような品々を持ち歩いている?」

「・・・・・」

「リーハンにはまじないの師匠から独り立ちの門出に送られたものだと説明したとか? 君の故国のまじない師は特権階級なのかね? 君があのダガーや透明水筒を創ったとか?」


  地球産のキャンプグッズは不味かったな。 村まではともかく街道に出た時点で早急に対策を打っておくべきだった。能力やアイテムリストを調べれば定番の魔法鞄の能力を持った悪魔が居たかも知れないし、手っ取り早くソグンに担いでもらって街道と並行して移動してもらう事も出来た筈だ。全て後の祭りだが。


「特権階級では無いですが稀有な力であることは否定しませんよ。それに私は武器や道具類、衣服も含めて創ることなど出来はしません、全て祖国の物産です。」

「では手紙を送ってあれらを買い付ける事は可能かな?鍛冶師や職人を招聘出来れば尚の事良い。」


  やっぱり目的はそこか。オレがもし領地を持っていたとしたら他領では絶対に手に入らない商材は是非とも抑えておきたいもんな。コチラの言い値で輸出してガッポリ稼ぐも良し、独占販売する事で爆買いしてくれる金満商人や貴族を呼び込んで販売利益を得つつ、ついでに領内の宿泊飲食業界からの税収増、領内の人物金の流れが増えてガッポガポ。

  他国が持っていない高性能の武器類も為政者なら気になるポイントだろう。 ゴブリンから頂いたナマクラは比べるべくもないとして、リーハンの驚きようを見ると彼らの下げているロングソード(?)と比べても地球製サバイバルナイフは相当質が高いのかも知れない。

  ノコノコと自領に現れた金の卵を産むガチョウを目の前にして領主はどうするか? 環境の良い納屋に閉じ込めて一生卵を生ませ続けるか? それともくびり殺して金を生み出す秘密を探るか?


「私が東の最果て、海を越えたその向こうからやって来たという話は聞いておいでですか? それは本当に遠い場所で御座いましてもおいそれとは帰ることは疎か連絡を取る事もままならない程なのです。ですが私を送り出してくれた師匠の”まじない”ならば彼方から此方へ人一人を届けることぐらいは実に雑作もない事なのでしょう。弟子の私ですら師匠がどれだけの力を持っていらっしゃるのか想像も出来ません。」


 どうするの? ウチの組と敵対しちゃうの? オレの親分筋はチョットヤヴェーぜ? ってなメッセージを視線に込めつつコチラも睨み返す。

 タップリ1分は見つめ合った後、突然表情を崩すと領主様は口を開く。


「、、、ふー、君の胆力は上級貴族か高級官僚並だね? 分かった、降参だよ。 正直、王国の一領地を預かるものとして君のような得体の知れない存在の滞在を看過する事も、それだけの魅力的な製品が存在しているのに手を付けずに居ることも領主として失格だし、ひいては王国への背任にも取られかねない行いだ。 だが私の死んだ親父殿の口癖は"ドラゴンの尾を引くな"でな。」


 いえ、そんな事無いです。 ホントはチビリそうです、足がガクガクするのを必死で抑えてました。 北野○監督のヤクザ映画を繰り返し見て耐性が付いていなかったら土下座していたと思います。


「代わりに、と言っては何だけど他国にはその製品、決して卸さない事を約束して貰いたいのと国内に居る間は護衛兼案内役を付けさせて貰うよ。」

「その程度のご協力でしたら喜んでお約束させて頂きます。初めて訪れた外国の地、案内役まで付けて頂けるとは願ってもないお申し出です。ご懸念の武器・道具類でしたら、そうですね、、案内役のお礼として進呈させて頂きますよ。」


 長いものには自分からグルグル巻かれに行くのが自分の生き方である。ナイフは命綱ではあるがバーターで長剣の一本でも貰えれば何とか成るだろう。テント、コンロ、寝袋、携帯食、懐中電灯や方位磁石、地図、野営道具一式は魔法が使えるように成った上、護衛付きで宿場町を巡りながら移動するなら必要ない。 ペットボトルとポケット浄水器はちょっと悩んだけれど物理魔法の中に”浄水”魔法が有る事に気が付いたのでコイツもプレゼント枠へ。 コ○カの¥29,800スーツと革靴は現在体験入社中のオレには当分必要がないものだ。

 財布とEDC類、グルーミングキットに下着、トイレットペーパーだけ回収して後はバックパックごと献上した。 トイレットペーパー、これ大事! 食生活や服飾関係はもう慣れたけどボロ布とか荒縄でお尻拭けない。持たせてくれた上長に感謝である。

 引き換えに頂いたのが数打ちの長剣と短刀、華美では無いものの騎士や下級貴族が普段着に着てもオカシクない服上下セット×2とコチラ風の革靴と背嚢。そして金貨20枚! 金貨20といえばアホのリーハン二人分の年収である。貨幣価値が今一つよく分からないが日本円で200万以下という事は無いだろう。ホクホク顔でテントの組み立て方や携帯食の食べ方、その他道具類の説明を終わらせると早速馬車を出してくれるというので飛び乗った。


 ーーーーーー


「隊長。一つ伺ってもよろしいですか?」

「『何故ああも下手に出たのか?』だろ。レブナスは渡来人の話を聞いたことが有るか?」

「子供の寝物語などで出てくるアレですか? 周囲の人間から虐げられている獣人の村を訪れた一人の男がたった1年で周囲の国々を併呑し獣人に国を預けると何も受け取らずに去っていった、とか、どんなにバカにしても何度騙して財産を巻き上げても寂しそうな笑顔を絶やさなかった女がある日突然豹変して国中の街を焼きつくし子供以外は皆殺しにした、でしたか。 あれは”弱い者いじめをしていると何時か数倍に成って自分に帰ってくるぞ”という戒めの為の作り話だと思っていたんですが」

「両方共実話さ。過去の文献を調べればその話を裏付ける情報が幾らでも見つかるよ。 それに我らが王家に5代前に嫁いできた炎帝サエカが件の”寂しそうに笑顔を浮かべる女”その人だよ。」

「サーバス砦皆殺しの炎帝サエカ様ですか!」

「あれはサエカ様が珍しく強権を使って通した奴隷所有及び売買禁止令後も隠れて奴隷取引を行っていたオクナス伯をサーバスまで追い詰め、炎帝自ら降伏勧告を幾度も行ったにも関わらず徹底抗戦したのに切れたらしい。実物を見に行った事があるが、元はこの砦より大きかったサーバス砦が溶け崩れて岩山の様になってたよ。」

「そんな恐ろしい存在にリーハンを付けて置いて宜しかったのですか? 今からでも私が追いかけて交代しますが?」

「あいつには悪いが渡来人の怒りが領地や国に向かわず一個人に向かう為の的に成ってもらう。なに、渡来人は元来みな穏やかな気質だというじゃないか?リーハンが私の客人をシッカリと饗してくれれば何も問題は起らないさ。

 さて、レブナスにはこのダガーを城付きの鍛冶師に渡して作成方法の調査を申し伝えて欲しい。道々、渡来人一行を追跡しながら目を配って置いてくれ。それから、、」


 ーーーーー


 ふむ、オレに関する話はこんな所かな? テント設営をレクチャーしながらコッソリ召喚しておいたデーモンバグとの感覚接合を解くとトルラート伯爵様専用馬車の座り心地良い座席に身を沈めた。 ふと目を外にやると馬車に随伴する馬鹿リーハンと目が合った。 憎々しげな目で睨んでくるもオレにはもう哀れみの気持ちしか湧いて来ない。 お前、祟り神への人身御供にされてるぞ?

 渡来人というのはやはり異界から転移ないし召喚されてきた存在だろうか? それともオレやミコト様の様な神に近い存在の可能性も否定できない。 ”炎帝サエカ"か? 先輩方も色々苦労されているようである。

 監視付なのは多少うざったいが、お陰で旅費宿泊費は全てご領主様持ちだ。領都の次は逸そ王都まで足を伸ばしてみるかね?

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