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悪魔使いで異世界冒険  作者: インスタントカルマ
11/19

11.砦にて

「領主様がお戻りに成ったぞ-!」「捕虜を連れていらっしゃる。受け入れの準備を急げ!」「開門!開門!開門!」「お湯の用意を早く! ご朝食の用意に掛かるぞ」「馬房の水と藁は足りているか?」


 突然やかましくなった周囲の音に目が覚めた。 うーーーんっ?イタタタ、、マントを被っていたとは言え露天で寝袋もマットもなしというのは骨の芯まで応えた。節々が痛い、手足の指先が冷たくなって感覚が無い。

 手足を擦ったりほぐしたりしていたら全身血まみれ傷だらけの男たちが檻の前に連れてこられた。間違いない、今は6人に減っているけれど昨日オレと最初にすれ違った男たちだ。ココには2m四方程の檻が3つ並んで居るのだが一箇所に6人を詰め込んだらギュウギュウだろう。オレの房にも2人入れられた。

 入れられた途端皆バッタリと倒れ伏す。 あれ?オレ今晩何処で眠ったら良いのだろう? つーかこのまま放っておいたら死体と添い寝する羽目に成りかねない。オレに近い方の男なんて特にヤバイ、血を失い過ぎたのか内臓をヤラれたのか顔がドス黒い色に染まっている。


「ねぇ、寝こみを襲われた人」

「何だよ? 変な呼び方すんじゃねぇよ。勘違いされるだろうが」

「名前を伺ってないんですからしょうが無いじゃないですか。 それよりこの人放っておくと危なそうなんですが治療したら問題に成りますかね?」

「大丈夫じゃねえの? 別に暴れまわれる程まで回復させる訳じゃないんだろ? オレの名はハーディンだ。」

「オレはまじない師のタシアと申します。」


 正しい発音で呼ばせるのは諦めた。 ソレはともかく、召喚プログラムを出すとマントで手元を隠すようにしてアークラさんと同じジュエルデーモンを召喚する。技能付与:中級、治癒魔法:中級、物理魔法:中級、結界魔法:中級、診察:中級を加え限界まで魔力を上げる。 何十カラットもありそうな真っ赤なルビー付きの指輪姿で顕現したので目立たない木製の指輪へと変形を頼んだら


「そんな地味な姿、イヤよ!」


 全力で拒否られた。声年齢推定36歳 アンニュイな有閑マダムタイプ


「お前今なにか言ったか?」

「いえ、独り言っす」

「変な声だすな、気持ちわりぃ」

「スンマセンっす」


 心の中で「アルバザルバさんの魅力的な姿を見られたら、すぐに奪われてしまうよ。君と離れたく無いんだ!」「君の美しさは外見を変えたくらいじゃ少しも陰らないよ」「君といつも触れ合って居たいんだ。普段着の僕でもいつも付けて居られる様な姿に成って僕を支えて欲しいな」などと5分掛けて説得することで漸く、熟練の細工師でも真似できない精緻な細工が施された銀製の一見シンプルな指輪に変化することを了承してもらった。

 面倒くさい、元カノより面倒くさい。 ソグンのあの素直さが懐かしい。早くあいつに会いたいよ!


 手前の既に息が不規則になり始めている方から始める。 光り輝く指輪を見られないよう周囲に目を配りながらアルバザルバさんに威力最大で治癒魔法をぶっ放して頂く。さすが最高出力! 一撃で体中の刃傷は消え、顔のドス黒さも幾分マシになっている。呼吸も穏やかに成ったし後は自然に体力の回復を待てば大丈夫だろう。 もう一人は右手と左足がオカシナ方向に曲がっている。省エネの為、少しずつ回復させよう。下から2番目の外傷治癒呪文を数回使ってもらい、傷を癒やしていく。特に”骨を引っ張って固定して”などという作業も必要なく魔法を掛けると勝手に正しい位置に動きながら治っていく。 この呪文、例えば切り飛ばされた手首に投射したら跳んで戻ってくるんかな?


「どうだ?」

「はい、コレだけやっておけば放っといても死ぬことはないでしょう」

「もう二人共処置したのか? 早いな。 こっから出れたらオレと組んで迷宮潜ろうぜ?」

「そうですね、出れたらお願いします。そちらの人はどうですか?」

「こいつも向こうの3人も一応止血はされてるから、すぐさまどうにか成ることは無いだろう。今は体力が落ちて眠ってるだけだ」


 ”ゴブリンは虐殺するのに人間は盗賊すら助けるのか?”と世が世ならお花畑にお住まいの平等主義者に責め立てられそうであるが、別に無分別に助けたり殺したりしているつもりは無い。懸命に生きている命が消える所はそれが人間でも動物でも見たくない。しかし食べるため生きるために殺さないと生きてイケナイのも生命だ。

 あの村の人達は「助けたい」と思える人々だった。ゴブリン達は村の生活圏を脅かす存在だった。それにあの森のゴブリンは異世界初心者のオレから見ても異常繁殖だと思えた、それだけだ。

 それにオレは常に人間の味方に立ち続けるつもりもない。時には亜人族やモンスターの味方に成ることも有るかも知れない。


 真っ黒のデザインと長袖のお陰で取り上げられずに済んだ耐衝撃性能の高い国産腕時計の表示によれば現在は午前10時過ぎである。この星が地球と同じ24時間周期で自転しているかは知る由もないが、コチラに来て3日間生活してみた体感上、1時間は違わないと思えた。

 、、、しかし腹が減った。 ハーディン情報ではパンの支給まであと3〜4時間はあるだろう。 今ならどんなに硬くてマズイパンでもマッハで食べてしまえるだろう。牢の隅で体育座りをしながら村で食べたアレヤコレヤ、好物のオムライスの事などを思い出してトリップしかかっていると外から声がかった。


「坊主スマンな、手違いが有ったようだ。」


 昨日、拘束を受ける際に居たもう一人、確か名前はレブナスさんだ。


「オレの容疑が晴れたんですか?」

「いや、そいつは未だだが今の所君の扱いは『重大な容疑の掛かった一般人』だ。オレは牢ではなく空き部屋にでも軟禁しておく様に指示をだしたつもりだったんだが上手く伝わらなくてな」


 日本だったら行政訴訟モノの大ポカだがー殴られたし、殴られたし、殴られたしーこっちでは平民・流民風情が訴えた所で右から左だろう。殺されなかっただけめっけ物と考えるべきである。


「軟禁というなら日に二度は食事も貰えますよね? 昨日の夕方から何も食べてないんです! せめてパンと水だけでも良いんで恵んで下さい」

「隊長が事情聴取を行うから直ぐに連れて行くつもりだったんだが、、、その分じゃ食事を先にした方が良いだろうな。」

「はい!お願いします。なんだったら生野菜でも良いです」


 レブナスさんは苦笑いを浮かべながら牢から出してくれた。 ハーディンに目礼しながらフラつく足になんとか力を込めてレブナスさんに付いて行く。

 案内されたのは兵員食堂だ。バイキング形式らしく壁の一つの前に大鍋大皿が並び、多くの制服姿の男たちが長テーブルについて食事をかき込んでいる。


「兵隊さんとご一緒させて頂いても良いんですか?」

「オレが横に入れば問題ないだろ。 好きなものをアチラで貰って来なさい。」

「では失礼して」


 オートミール風のもの、蒸かした芋の上に味付けしたひき肉をブッカケた様な料理、野菜のオーブン焼き、クリームスープ、何かの唐揚げ、手頃にカットされたチーズ3種、ピクルス数種、パン数種。 お代わり自由なのかどうか分からないので皿に山盛りでもらってきた。パンも3つポケットに突っ込んでチーズもワシ掴み。レブナスさんの所へ戻ると流石に呆れられた。


「そんなに山と盛らなくてもお代りできるぞ」

「え?ほーなんへふは?」


 席に戻るまでの間にチーズを咀嚼していおりました。熟成はイマイチだけどウンマイよ!マナーとしては最低だけど今だけは勘弁して欲しい。他の料理も次々に口に流し込んでいく。 村の料理に比べたら味付けも野菜の鮮度も数段落ちるけど空腹は最高の調味料と申しますな? 騎士・兵員向けの為か塩味がシッカリ付いていて肉類もそれなりに豊富である。もう一度おかわりして最後にリンゴの様な果物をまる一個頂いてやっと一心地ついた。


「良い食べっぷりだな」

「豪華なお食事をさせて頂きまして有難う御座いました」

「ここは見ての通り騎士と兵士共用の食堂でな、領主様の『兵の食事は防衛の基礎』というお言葉に従って成るべく旨いものを出すようにしている。今では飯目当てに他領からも任官希望者がやって来る位さ。」

「それは開明的な為政者でいらっしゃいますね。 兵の規律も一際高いと耳にしました。」

「そうさ、俺達のご領主様は本当に優秀で偉大なお人なんだよ。そんな訳だから隠しだねせず全てを正直に話すことだな。」

「?」


 食休みを暫く入れてから席を立って隊長さんの居室に向かう。食堂を抜ける際にふと目を向けるとリーハンの馬鹿野郎が飯を頬張りながら憎々しげな視線を飛ばして来るのだが睨みつけたいのはコッチの方だ。さて、隊長殿はオレの荷物を全て見聞しているはずだが何と言って誤魔化したものか。



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