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悪魔使いで異世界冒険  作者: インスタントカルマ
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1.安定の森スタート

 見渡す限りの緑溢れる森林。それも雑多な針葉樹や広葉樹が入り混じった全く人の手が入っていない事を伺わせる植生豊かな森である。

 池袋駅に近いオフィスビルから移動時間僅か数秒とあっては週末のハイキングコースやサラリーマンOLの憩いの場所としては最高の場所であろう、、、もし帰ることが出来れば であるが。


 何故こんな森の中にクローゼットから出してきたばかりのリクルートスーツ姿で立ち尽くしているのかと言えば「安定の森スタート」と言えば分かる人なら俺の置かれた状況を8割方理解してもらえたと思う。


 始まりはアパートの郵便受けに入っていた2色刷りの折込広告であった。



 曰く


「貴方しか出来ない仕事、


 真新しい環境で働いてみませんか?


 優位性のあるスキル習得をお約束します。



 資格経験一切不問、中途採用歓迎、完全能力給


 まずはお電話で 03-XXX−XXXX


 神楽コーポレーション 採用担当:伊勢凪



 早速連絡を取ってみれば面接は何時でもコチラの都合に合わせて頂けると言う。

 都下の市役所職員という安定志向の現代に於いてはそれなりに羨ましがられる職場であるが、事ある毎にやって来るプロ市民の理不尽な要求や話が延々ループする老人達の応対にはホトホト嫌気が差していた。

 何より一番俺の背中を押しているのが先月喧嘩別れに至った元カノの存在である。違う部署とは言え同じ職場、同じ建物に勤務する関係で朝な夕なに顔を合わせる事しばしば。 お互い良い歳をした大人なので会ったとしても掴み合いの喧嘩をするで無し、なじり合う訳で無し後は時間が解決してくれる問題だとは思うのだがそろそろ周囲にも我々の関係が把握され始めているようでコチラを見てコソコソ噂話をしている同僚たちが目に入る度に居心地悪い思いをしていた。

 ここで俺が転職するのは何だか逃げるみたいでカッコ付かないという気持ちも有るのだが、、、ま、面接を受ける=転職を決めるという事もあるまい。 事前の連絡の際にも今現在就労中である事、他にも数社面接を受けている旨は伝えてある(嘘だがな)ので義理は立つだろう。


 日曜の午前11時、お約束頂いた時間5分前に指定場所に辿り着く。

 クールビズからの流れで私服勤務が基本になっていた最近は曜日を問わずポロシャツやクルーネックを着ていることが殆どな為、久しぶりのスーツと革靴はどうも堅苦しくて仕方ない。 こんな事なら数日前から着慣らしておくべきだった。

 会場はテナント料を相当取られそうな真新しいオフィスビルの8Fなのだが、短期契約なのか?1階のテナント表示には「空室」表記であったし会社正面のドアに模造紙に大きく「(宗)神楽コーポレーション 採用面接会場」とプリントされたものが張り付けられているだけであった。


 軽く咳払いしてから2度ノック。 失礼致します、と声を掛けてドアを開く。

 そこは公立小学校の教室なら4つは入る広い空間なのだが机や棚の類は一切なく、中央に置かれた折りたたみ椅子が3脚あるだけで余計に広さを感じさせた。

 コチラ向きに置いてある2脚の椅子の横には男性と女性が立っている。


「ようこそお出で下さいました。」「折角の日曜日にお時間を取らせてしまってスイマセン」

「いえ、コチラこそ日程を合わせて頂きまして有り難うございました。」

「どうぞお掛け下さい。早速履歴書を拝見してもよろしいですか?」

「コチラが履歴書です。失礼します」


 男性が履歴書に目を通している間、女性から天気の話や最近の世相について当たり障りのない会話を振られる。

 それにても美しい人達だ。 濡れ羽色の黒髪、濃い茶色の瞳、淀みのない綺麗な発音などから日本人だとは思うのだが、同時に大きな瞳と高い鼻梁、小顔でスラリと伸びた手足からは日本人離れした印象も受ける。女性の美しさは勿論なのだが、履歴書を読みながら時々こちらをチラッと楽しそうに伺う男性もまた非常に、、なんと言って良いか魅力的だ。 自分は全然そんな趣味は無いのだがもし2人切りで居たら変な気持ちに成ってしまいそうな位である。

 二人共至って普通、濃紺のビジネススーツ姿なのだが何と言うか年齢が全く読めない。容姿からは20代中頃に見えるのだが、その瞳に見つめられていると田舎の婆ちゃんと話している時のような慈愛に満ちた眼差しを感じるというか、、、


 男性が落ち着いた語り口で話し始める。


「では月並みな質問ですが私達の会社のどの当たりにご興味を持たれましたか?」


 さぁ、早速今日一番の難問が飛んできましたよ!!

 チラシを読んで直ぐに会社名をインターネット検索してみた。しかし、何も引っかからない。割とありがちな名前の組み合わせだから区切って検索すれば数十万とヒットするのだが”神楽コーポレーション”では不自然なくらいに何も引っかからない。同名他社だって幾つか存在しそうなものなのに、、、例え会社ホームページを持ってなくたって社員の呟きとか顧客の書いたブログとかなんかしら有るだろう?

 電話でアポを取った際にそれとなくに業務内容を伺ったのだが「調査、折衝、開発、建築、運搬、教育、販売、その他もろもろ」とか、、、何屋だこの会社?土建屋?? それなもんで実は面接するというのにその会社の職種やら沿革は全く知らないのだ。なのでココは一つぶっちゃけて行くことにするか。


「実は今の職場に行き詰まりを感じておりまして、しかし特別手に職がある訳でもありません。そんな時に御社の募集広告を拝見しまして、私も何か学ばせて頂く事が出来れば将来的に御社のお役に立てるのでは、と考えました」

「なる程、素晴らしい。ウチの求めている人材にピタリと符合する。それでどんな力を欲していますか?」

「そうですね、、若輩ゆえ私は人の上に立った経験が余りありません。将来的に人を指導する立場に成った際に役立つ知識を持てればと。加えて御社は多様な業務を行っていらっしゃるとの事ですのでそれに対応できる広範な知識や資格を。 そうは申し上げましても、何か一つ自分の武器になる様な力も極めたいと思っています」

「なる程、多くの配下を従え、様々な状況に柔軟に対応でき、武器にも成るたった一つの能力、、、うーん、興味深い」

「、、、配下?、、従える、、? 、、ええ、まぁそんな感じかではないと、、」


 訝しげに応えるオレを無視して二人は嬉しそうに頷き合うと、、、


「「採用決っ定ーー!!」」

「え、いや、まだ詳しいこと伺ってませんし、今の勤め先の事もありますし、就労条件とか賃金とか色々ですね」

「良いから良いから」「そうそう! 良いから良いから。条件とかは大概のことは柳ケ瀬君の希望通りで良いからさ」

「いやっ、希望通りってそれはマズイでしょ!?」

「良いから良いから。まずは体験入社してもらって様子を見てもらったら良いよ。取り敢えず10日ばかり入ってもらって気に入ったら続けてもらえば良いしダメだったらその時、言ってくれれば。」

「いえいえ、明日も今の勤め先に行かないとイケマセンし退職するにしてもソレナリに手続きと時間を貰ってですね」

「ダイジョブダイジョブ、10日したら今現在、この日、この場所、この時間ピッタリに戻すから」

「いや、そういうワケには、、、、えっ、何です?」

「だから向こうで10日経ったら、今この瞬間に戻すから今のお勤め先も問題ないって! ね?ハニー?」

「ええ、ダーリン。 この人の言う通りですよ。 それでは頑張って行ってらっしゃい。あ、そうだ!コレ用意しておいたから。ハイどうぞ♪」

「いや、、、どういう事!? この日、この場所って って重っ!?」


 女性が何処から取り出したのはパンパンに膨らんだ登山バック。軽いクッションでも渡すようにホイッと渡されたソレは男のオレでも抱えるのに苦労するくらいの重さ。30kg以上有るんじゃね?


「ほら、赴任先の生活環境が色々不整備だからアレコレ必要だと思って纏めておきました♪ それじゃ娘のことよろしくね♪」

「娘って何のことですか?」

「大丈夫! 柳ケ瀬くんは知らなくて良いことだから。 とにかく向こうを楽しんでよ。 あ、あとね、ご希望に添えるか分からないけど”力”も渡しとくから色々試してみて。それじゃ送ります。」

「いや、ちょっと、、らめーーーーーーーーっ!!」



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