Vol1.01 アルファシステム起動
4月上旬だというのに、寒い!
キャンパスに向かう涼太は、赤を基調にしたアロハシャツにジャケットとジーンズを合わせ、初夏を先取りしたような服装だ。襟元をぎゅっと引き寄せて寒さを凌ごうとしても、襟に遊びがないせいで外気が直に入り込む。
ちょっと浮いているかもしれない。いや、完全に浮いている!
西鉄久留米駅から西へ続く商店街の一角、東町公園の近くにある『コレール・カショーロ』という衣料品店が、俺のバイト先だった。
今回のバイトは、久留米絣のアロハシャツのセール時に売り子をすること。
商品はなかなかの高額だったが、海外の大物女性シンガーが観光で近くを訪れ、そのアロハシャツを「私、これが好き」とSNSにアップしたのが数日前の話。
その書き込みがネットで話題となり、「これはどこのアロハ?」と騒然となった。
久留米在住の女性が「Getしました!」と写真をアップすると、地球の裏側からも片言の日本語で問い合わせが殺到。
そんなこんなで問い合わせが急増。
俺の面接も縁故紹介なしの飛び込み当日採用だった。
バイト初日、午後からは電話やFAX、メールでの問い合わせが激増し、気が付けば在庫が次々と消えていく怒涛の10日間だった。
オーナーは、売り子用に支給した元売り物のシャツをくれて、バイト代も少し上乗せして現金で支払ってくれた。
最終日の午前中には在庫が尽き、バイトは終了。
そんなわけで、俺は春休み中、いつものようにキャンパスへ向かう日々を送っていた。
「オーナーは似合ってるって言ってたけど、これって何かチャラく見える気がするんだよな……」
校舎の窓や車のガラスに映る自分の姿を目にするたび、服装が気になってしまう。
そもそも自分で似合っていると思っていないのだから、人目がやたら気になるのも無理はない。
そわそわしながら掲示板を確認していると、見知った同級生の姿が視界に入った。
「やぁ、杉山」
「あっ、瀬上君、久しぶり」
細身で190センチを超える長身の杉山は、薄手のセーターを着ていて、手足の長さも相まって周囲からは折れそうな印象を持たれている。
彼の青白い顔と長い睫毛、面長の顔立ちから女子には「キリン君」と呼ばれているらしいが、俺は大人の態度で接することにしている。
「杉山は今日はどうしたの?」
「ぼ、ボク?掲示板を見た後、部室に寄ろうかと思って……先輩がアニメのDVDを持ってきて、上映会をするって言ってたから見に行こうかなって。あっ、瀬上君も一緒にどう?」
杉山は、久留米中央大学日本アニメ文化研究同好会(通称KJACC、クジャク)に所属している。
サークルのマークは鳳凰のような孔雀が描かれている。
「えっと、『何とかのエデン』だっけ?かなり面白いらしいよ」
午後の予定は空いていて、アニメは好きな俺は誘いに乗ることにした。
御呼ばれするのに手土産なしで部外者が顔を出すのも気が引けるので、バイト明けの温い財布から定番のポップコーンやスナックを買い込んで、サークルにお邪魔した。
「松山先輩、友達連れてきちゃいましたけど、いいですよね?」
「あっ、いいぞ、あがってあがって。そろそろ始めるから」
松山先輩は、冬休みに入った映画館のバイト頭だった人物で、面識がある。
「あっ、松山さん、瀬上です」
「ほぉ、涼太かぁ。ああ、杉山と同じ学科だったな」
「気を使ってもらって悪いな。まあ寛いでいってくれ。お菓子もあるぞ(笑)、瀬上の持ってきたやつだけどな」
『世間狭いな!』と思いつつ土産を渡し、簡単な挨拶を交わす。
部屋は化学部の準備室で、サークルの正式な部室はないが、ほぼ占拠している感じだ。
暗幕が引かれ、かすかな薬品の香りが漂う室内。
差し込む外の光に、埃がキラキラと輝いている。
プロジェクターから、入り口方向に置かれた簡易スクリーンへ映像が投影され始めた。
8畳ほどの縦長の部屋。薬品棚と書類棚に挟まれた中央には、横3×縦2に並べられた長机がある。
プロジェクターの温風が机を撫で、近くの書類をかすかに揺らしている。
部屋には俺と杉山、松山先輩を含めあと2名が折りたたみ椅子に座っている。
残念ながら面識はなく、松山先輩に簡単に紹介され会釈した。
このサークルには幽霊部員が10名ほどいるらしいが、今いる人数が主要メンバーとのことだった。
俺が見たアニメは、『10億円を好きに使って日本を良く変えてみないか?』と問われ、もがく主人公とその友達が奮闘する話だった。
AIが特に印象的で、「今の技術で実現できるんじゃないか?」と強く思ったのを覚えている。
まったりと4本のアニメ映画を観てしまい、杉山と別れる頃には辺りはすっかり暗くなっていた。
俺は原付で走り去る杉山の後ろ姿を見送り、「無駄に背が高いよな……」と思いながら、映画の余韻を反芻した。
「はぁ、久々に面白かった。そういえば、アルファテストの返信がそろそろ届いてもおかしくないな……」
忙しさで忘れかけていた頼まれごとを思い出し、帰路についた。
玄関の郵便受けに伝票のような紙切れがハタハタしている。
それは気になっていた不在通知だった。
『当選は発送をもって替えさせていただきます。ってやつか?』と一人で突っ込みながら、逸る気持ちで不在通知の担当者へ電話した。
パソコンを置く場所を確保するのにも慌ただしく思い、明日の午前中の早め配送を依頼した。
ちなみに明日はバイトのない休み日。ゆっくりと新しい機械を弄り倒せる時間が取れる。
――――むふっ、ラッキー?なんかついてる?
明日のことを思い、楽しみで仕方なかった。
指定日当日は、少し早めに目が覚めた。
朝靄がかかり、まだ交通量も少ない。
買い置きしていたコーラも切れていたため、最寄りのコンビニへ買い出しに向かった。ついでに、当座の生活費を引き出し、余分なポテチも買って帰る。
「うぅ~ん、ちょっと片付けるか」
背伸びをしながら、今まで使っていた自作パソコンを横に避け、リサイクル店で買ってきたメタルラックを組み立てて正面に据えた。
たいした家具はないが、作業スペースも確保しておきたいので、ワンルームの隅にあるベッドの上にレポートや参考書の類を避け、概ね満足のいく状況が整った。
一息つくことにした。
お湯を沸かし、インスタントだが一気に湯を注ぐと、部屋にコーヒーの香りが漂った。
コーヒーは少し甘めにして、焼きたてのトーストを頬張る。
テレビからは朝のニュースが流れていた。お隣の国の不動産バブルが弾けて数年、不透明な国の事情だが、都市部で暴動が起き、私腹を肥やした政治家がネットに晒され、その親族が市民にリンチを受けている映像が映し出されている。
「きっと、ほとんど縁のない遠い親戚とかなんだろうな……可哀そうに」
そう呟いているうちに、呼び鈴が鳴った。
ピィーン ポーォン
長押し気味のチャイムの音に思わずビクッと反応してしまい、誰も見ていないにもかかわらず少し照れる。
インターフォンは使わず、ドアへ向かった。
「宅急便です!お届け物です。」
「はーい」
玄関を開けると、見慣れた宅配業者の制服の人物と、そこそこの大きさのダンボール箱を3個ほど台車に積み上げ、動かないように体で支えながら絶妙なバランスで小型のタブレットを片手に持つ姿が目に入った。
「うはぁ、来た来た、きたぁねぇ」思わず呟く。
タブレットにサインをし、部屋へ引き込んだダンボール箱は、1DKの部屋にはかなりの存在感を示しているが、すでに気持ちは箱の中にあった。
カッターを取り出すのももどかしく、鋏の刃の片側をペーパーナイフ代わりに使い、バイトで慣れた手つきでダンボールの解体を行った。
過剰包装気味のビニールや緩衝材を取り除き、本体・モニター(出力装置:要は画面)付属品を取り出した時には、もう足の踏み場がなかった。
取り扱い説明書を発掘し、必要な説明箇所をパラパラとページを飛ばしながら探し出し、組み立てを始める。
接続するだけなので大したことはないのだが、何分狭い部屋なので手順を一通り考えて、とりあえず作業位置を決め、最終フェイズであるコンセントを差し込むところまで終了した。
「えっと、マニュアルは……っと」
別冊のテストユーザーマニュアルなるものを引き寄せ、膝の上に広げる。
これは最初のページから読むことにした。
冊子は帯封がされており、その帯封を切ることでさまざまな同意事項に承諾することになると書いてある。
一般的な規約のほか、一部のテストについて他言無用であり、ネットやSNSへ公開してはならないとも書かれているが、当たり前かと思いつつ“ビッ”と帯封を裂き、本編を読み始めた。
研究機関用大型コンピューターを超える処理能力で、リアルタイムオンラインゲームをプレイする。
ゲームはプレイヤーの意見を取り入れて自己改善されていく……すごいゲームだな。
テスト期間は半年間で、ハードディスクのみ回収し、代わりのハードディスクは郵送で送られてくるという、結構良心的な仕組みだ。
「α版ってβ版の前で、だいたいクローズドテストだよな」
「うはぁ、何だか楽しみだ……」
思わず独り言が漏れる。
要約すると、半年間のαテスト用に調整された高性能パソコンが貸与され、テスト後はそのパソコンが報酬という形で譲渡されるが、その間のデータは会社の所有物となる。遠隔サポートはあるが、ほとんど自立型で、サポートの心配は不要とのこと。
実際、サポートセンターの受付時間は平日の午前中のみ……あまり見ない体制だ。
必ず付属の量子デバイス(ゴーグル)を装着しなければならず(視線や瞳孔の拡散、心拍数もトレース?)、プレイ時はそれを着用しなければならない。
神先輩から渡された紙袋からゴーグルを取り出す。
同じく箱の中から同系のゴーグルも入っているが、神先輩からもらったもののほうがハイスペックのようだ。
スマホよりやや軽いが、少し大きめのサングラス風で、ウインタースポーツ用のゴーグルに近い。
(レンズ部分は偏光素材らしきものが使われているのか?)
屋外でも使えそうなそれを手に取る。
屋内では周囲が透過しないようにカバーをかけて使用する。
カバーの内側は白で、装着すると映画館の最前列でスクリーンを見ているような感覚になる。
「有線で回線接続……コンセントを入れて……よし! OK」
ゴーグルを装着し、朝買ってきた500mlのコーラをテーブルに置き、長時間でも耐えられるよう座椅子にクッションを敷いて準備完了。
初起動。脈を打つのが分かるほど期待しながら、電源ボタンに触れる。
低音の起動音とともにハードディスクが元気よく動き出す。
画面に数字やアルファベットが一瞬流れるが、驚くほど早い。
一瞬で起動パスワード入力画面となった。
「……うわぁ、早っ! すげぇ!」
マニュアルにある初期パスワードを入力。
――――アルファシステム、起動。
見たことのないOS画面が広がる。WindowsでもMacでもない、まるで映画のオープニングのようなムービーとロゴが表示された。
「おぉ!? もしかしてOSまで開発してんの?」
「自前か……凄すぎるけど、汎用性なくない? 他の用途に使えないんじゃね?」
やがて、寒色系のパステル調で構成された初期画面に切り替わる。
直後、ゴーグルの耳元に内蔵されたスピーカーから、中性的な――少年とも少女とも取れるような――声が響いた。
「ヒューマンサポート・インターフェース、アルファです。」
「これより、当テストに関する初期設定を行います。」
「所要時間は約10分ほどとなりますが、よろしいですか?」
――――10分か。意外と短くて助かるな。しかも音声サポート付きって、やけに凝ってるなぁ。
――――でも、ちょっと堅いな……どうせなら、もっとやわらかい、可愛い女性の声が良いのに。
「……処置しました。」
「初期設定カスタム:サンプリングデータ参照、女性音声データ1011へ変更。」
「ヒューマンサポート・インターフェース、アルファです。」
「よろしければ、同意の意思表示をお願いします。」
「えっ!? あ……変わった?」
まるで思考を読まれたかのように、さっきまでの機械的で中性的な声が、ふいに10代の少女のような柔らかい声に変わった。……わりと好みかも?!
うわ、やべぇなこれ。うかつなこと考えられないじゃん。
「好意的同意を確認しました。」
――――!!!
「ご心配は不要です。アルファは、明確な意思表示による変更事項にのみ対応します。」
完全に思考を読まれてる……しかも、声がさらに肉声に近い感じに変化してる……。
「すごいシステムを開発する会社だな……」
「お褒めの言葉、ありがとうございます。」
「改めてお伺いします。初期設定を開始してもよろしいですか?」
――――あぁ、OK―――――
「承知しました。プロンプトを実行します。」
初期設定って聞くと、手入力が多くて面倒なイメージがあったけど、実際は違った。
アルファの質問に対して思考や意識で答えるだけで、各種設定がどんどん完了していく。
――――趣味趣向……いろんな意味で丸裸にされてるような気もするけど、アルファの声がやさしくて、不思議と警戒心が和らいでしまう。
気づけば、設定はすべて完了していた。実際の所要時間は8分ほどだったが、感覚としては2〜3分くらいしか経っていない。
――――まぁ、ゲームのモニターも兼ねてるわけだから、サクサク進むのは悪くないか。
「今後お客様を、どのようにお呼びすればよいでしょうか?」
「りょ……涼太様で……」
「了知しました、涼太様」
「ゲーム起動前にいくつか補足情報がございます」
「情報を開示してもよろしいでしょうか?」
――――いいよ。
「ありがとうございます」
「当ゲームは、内務省・文部科学省・厚生労働省・建設省などによる広域社会実験を兼ねており、一部データを提供するためのシステム調整・テスト期間に当たります 」
「 また、チュートリアルでも説明いたしますが、約180日にわたる個人の行動が社会にどのような影響を与えるかをトレースし、現実との相違を検証するものです 」
「 本ゲームはその性質上、守秘義務の対象となり、オープンテスト終了後は完全秘匿扱いとなります。努々お忘れなきようお願いいたします 」
「 更に、ゲーム内の情報は各諸官庁の保有するデータ、全ての国立図書館のデジタル書籍とリンクしており、より現実的な内容を提供いたします」
「 屋外でのご利用については、通信環境さえ整っていれば該当情報を優先的に取得可能ですが、社会実験で有る為、第三者に渡るような記録は、残らないようご留意ください 」
……とんでもなく大仰だな。なんか怖ぇ……
「では涼太様、当初の目的である《ライフ オブ ライブ(仮)》の起動を開始しますが、よろしいですか?」
うぅ〜ん、この先回り感はなんなんだろう……しかもほんのりメイド臭い口調。
「ご疑問の点ですが、思考パターンを解析するのは仮想量子演算システムによるものです」
「テスト期間を通じ、より適した状態に近づけるよう、アルファは誠意邁進いたします」
「わぁ……あっ、うん。じゃあ始めてくれる?」
思わず赤面する。すごいよ……これ、政府のお偉いさん絡み?
アルファさん自体が、なんだか“人”と話してる気分になってきた……それが自分でもちょっと怖い。
Vチューバーみたいに中の人がいるんじゃない?! と自分にツッコむ。
「疑念を抱かれたようで申し訳ありません。アルファーは自立型AIです」
「特定の人物が当システムをサポートしてはおりません」
「それでは起動します。説明はチュートリアル方式で、アルファが行います」
……神先輩、断れなかったの分かる気がする。そして――これはやばい。
「それでは、《ライフ オブ ライブ》をお楽しみください」
―――む? 今の思考はスルー?!
「ツッコんだ方がよろしかったでしょうか?」
「わぁ……いや、いいよ、気にしないで。ほんとに」
「面白い方ですね、ふふふ」
うわぁ……たかが10分少々で、もう手玉に取られてる気がする……気のせいなのか?!
にしても、人間臭いシステムだな。しかも“ふふふ”って……政府って、こんなの作っていいの?!
起動画面の後、一瞬でゲームが始まり、表示されたモニターには……
「なんでだよ、これ……俺の部屋じゃん……なにこれ」
なんとも見覚えのある、自分の部屋(ただし新しいパソコンはない)の、そのままの状態だった。
ゴーグルを少しずらすと、画面はもやっとする。……3D表示だ。
もう一度、食い入るように画面を凝視する。
「……やっぱり俺の部屋じゃん……どうなってるの、えぇぇ?」
画面の右上には、11月30日の表示。約半年前だ。
確かに至るところに、その年の冬にあったはずの物があちこちにある。
お気に入りのセーターに、マフラー。
振り向こうと意識しただけで、画面が動き、足元のコタツが表示される。
コタツの上には、数枚の年賀状。
バイト先の店長、同じ学部の筆まめな友達からのもの……
実家で小言を言われるのが嫌で、この日に久留米に戻ってきたからこそ覚えている光景。
まるで、見た映像をそのまま取り込んだような、すごく奇妙な感覚だ。
背筋に冷たいものが走る。――監視されてたのか?!
「アルファー、これどうなってるんだ?! 説明しろ!!」
嫌な汗。語気が少し荒くなっているのを自分でも感じる。
「はい、涼太様。現在の映像は、ゴーグル正面のフレームにあるマイクロカメラと対物レーダーにより現在の状態を撮影し、逆演算によってご主人様の嗜好を反映させたものです」
「映し出された各個人情報は、ご主人様の記憶より思考表層に明確化されたものを投影しているに過ぎません。たとえば、年賀状のお年玉番号は思考の表層に明確化されていないため、ぼやけて表示されます」
……改めて、年賀状を見てみる。
番号は、微妙な数字のような、記号のようなものがもやっと書かれており、ぱっと見では読めない。インクが滲んだようで、読み取れない状態だ。
「演算や逆演算で補完可能なものは表示されますが、観測不能なもの、もしくは未知のものは表示できません」
「……ああ、分かったよ。ストーカー行為で入手したデータや画像じゃないってことか……」
「にしても、気持ちのいいもんじゃないな……」
「申し訳ありません。このような仕様となっております。ご容赦ください」
妙なところで機械的というか、お役所的というか……って、ソフトだよな。
もう、少々のことでは動じないぞ! と気持ちを奮い立たせる反面、
きっと度肝を抜かれるのは確定なんだろうな、とも思ってしまう。
――予感とも予知とも言えない、断定的な予測。
けれど、意外と肩透かしを食らうことになる。
玄関に意識を向け、家の外に出ようとすると、歩くような表示画面の揺れと共に屋内から屋外に変わる。
玄関の外は――ワイヤーフレームの世界だった。
すべてが簡素で、ザックリとした直線。
紙とも板ともつかぬ壁に仕切られ、空は薄い水色。
人のようなマチ針、車のようなマッチ箱が、原寸大でうようよと移動している。
―――はぁ、α版だな。うん、間違いない。
そう思ったと同時に、パソコンのファンの音が3倍ほど大きくなる。
フゥォオオオオォォン――――ヒュィィィィン――――ヒィィィィィ――――キィィィィン
ファンが低音から緩やかに高音になり、大量のデータ処理を行っていることが伝わる。
正面のアクセスランプが激しく明滅しているのだが、ゴーグルで視界を遮断された涼太には、その光も音も届いていなかった。
もっと伏線を張りたかったのですが、本編が間延びするので・・・・折をみて時系列を遡り書いてみます。
2025年6月、ネタバレ?ストーリーの時系列が混乱し現実に影響を与えて行くストーリですが、第四章で起承転結の転に差し掛かり、過去にメモした章構成を練り直しています。