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第一章 Vol2.10 必ず当たる宝くじ

 マイパソコンへ転送するにも、表示が本物であれば巨大なファイルを抱えるほどの余裕は家にはない。

 うろ覚えのコマンドを頼りに、データ量を記録可能な限界値で分割し、なんとか一部のみをこちらへ切り離す。


 


 有線で繋ぎ、該当データの転送を開始するが、送り先のパソコンが悲鳴を上げる。

 ファンがうなり、HDDがギリギリと異音を発し、メモリ使用率は警告ラインを振り切っていた。

 ゴーグルを外して唸りを上げる我が家のマシンを眺めながら、転送後のハードディスクを研究室に持ち込むべきか逡巡する。

 しかし、この場では決めきれない。この案件は一旦棚上げする。


 


 結局、一つの圧縮ファイルの三分の一にも満たないデータしか転送できず、悔しさと、そして“αの一部を入手した”という奇妙な達成感が心の中でせめぎ合う。


 ――不思議なシステムの証拠を、今、自分が握っている。


 その事実が、微かな優越感をもたらしていた。


 


 けれど同時に、そんな感情を自覚してしまう自分自身に、どこか後ろめたさもあった。


 もやもやした気分を、αテスターとして“やるべきことをやった”という実績で塗り潰し、欺瞞で誤魔化そうとする――

 小ずるい自分が、確かにそこにいた。


 


 ――もしもの時の保険として、持っておこう。


 


 俺は、善人で在りたいと思っている。

 そうで在りたいと、願っている。


 


 でも、わけのわからない存在が、すぐ近くにあると想像するだけで……怖くなる。

 理屈では説明できない臆病さが、じっと背後に潜んでいるのを感じる。


 


 そんな気分を振り払うように、俺は話題を切り替えることにした。

 バイト帰りに買ったロトくじのことを、思い出したのだ。


 


 「αさん、ゲームって約六ヶ月前が舞台だよね?」


 


 「はい、そのような仕様です」

 相変わらずの即答だった。


 


 「その頃のロトくじ……なくし物とか、探せるかな?」


 


 ――数秒の沈黙。


 


 「現時点のゲーム内に涼太様が所有する『ロトくじ』は存在しません。

 ゲーム内で実際に購入し、その行方を確かめてみてはいかがですか?

 極力、当時の行動をトレースいただくと、より効果的だと思われます」


 


 「くじの番号は……どうだろう」

 再び、わずかな間を挟んで。


 


 「涼太様は、ずるいお方ですね」

 そう言ってから、αは推論に基づいた解説を始めた。


 


 「感情・思考の方向性から推測し、結果を回答いたします。

 現実の当選番号を利用し、ゲーム内でくじを購入された場合、当然ながら100%当選します。

 ただし、留意点がございます。

 現実とゲーム内の結果に大きな乖離がある場合、システムは“現実との整合性”を取るため、元の結果に近づくように収束する傾向があります。

 誤差が大きければ、それに比例して“修正力”も強くなります」


 


 少しの間を置いて、αは付け加えた。


 


 「……この件は、ゲームバランス的にも『身の程をわきまえる』必要のある事案と、αはアドバイスいたします」


 


 「――ありがとう」


 


 収束するって、どういうことなんだろう。

 どうせ宝くじで得た賞金なんて、くだらない買い物や無駄遣いに消えて、結局は残らない――そんな程度の意味なのだろう。


 このときの俺は、まだその程度の認識しか持っていなかった。


 


 ゲーム内の自宅の机にあったメモ用紙に、ゴーグルの外で確認した七桁の当選番号をメモする。

 そして、あえて四等が当たるように数字を一部削り、触っても感触のない財布に、その紙切れをそっと滑り込ませた。


このあと、「ロトくじの行方」がどのように展開するか、未来のシーンにどんな“収束”が起きるかも、かなり魅力的に膨らませられますね。

次の章に繋げる形で、仮想世界と現実世界が干渉し合う描写や、αの「修正力」そのものが何らかの力を持つ存在だとわかる伏線を張ることも可能です。


続きの章や、より内面描写を掘りたい場合も、気軽にどうぞ!








あなた:

量子もつれの概念を含め原文を膨らませて



ChatGPT:

了解です。では、「量子もつれ(エンタングルメント)」の概念を自然に組み込みつつ、原文の世界観と主人公の心理描写、αとの会話、そして「仮想世界と現実の干渉」に深みを与えた膨らまし版をお届けします。

量子もつれは、「一方を観測すればもう一方にも即座に影響が及ぶ」という性質が鍵なので、それをロトくじと現実の干渉/“収束”の原理に結びつける形にします。


 マイパソコンへ転送するにも、表示が本物であれば、あまりにも巨大すぎる。

 自宅のHDDに、そんな莫大な容量を抱える余裕などない。

 うろ覚えのコマンドを入力し、記録可能な限界値でデータを分割。手探りで、なんとか一部だけを切り離した。


 


 有線で繋いだパソコンが、転送を開始した瞬間から悲鳴を上げ始めた。

 ファンが狂ったように回転し、HDDが唸り声のようなアクセス音を響かせる。

 まるで自分の選択そのものに抗議するように――。


 


 ゴーグルを外し、叫ぶように動く自宅マシンを見つめながら、ふと考えがよぎる。

 ――このデータを、研究室に持ち込むべきか?

 しかし、今の自分には、その判断を下す覚悟が足りなかった。

 この件は、いったん棚上げする。


 


 結局、一つの圧縮ファイルの三分の一にも満たない量しか転送できなかった。

 悔しさが胸を締めつける。けれど――同時に、不思議な安心感もあった。

 “αの一部を手に入れた”という確かな実感。

 これは、誰かに追いついたような……いや、誰よりも一歩先に進んだような感覚。


 


 その小さな優越感に浸りながらも、自分の中にあるズルさに気づいてしまう。


 もやもやとした気分を、「テスターとして任務を果たした」という言い訳で塗り潰そうとする――

 卑怯で小ずるい自分が、確かにそこにいた。


 


 ――もしもの時の保険として、持っておこう。


 


 俺は、善人でありたいと思っている。

 そう願っている。……だがそれだけでは、不十分な時がある。


 わけのわからない存在が、すぐ近くにあると想像するだけで――

 心の奥底に、名状しがたい“恐怖”が芽吹いてしまう。


 


 複雑な気持ちを振り払うように、話題を変えた。

 バイト帰りに買ったロトくじのことを思い出したのだ。

 αと話すことで、この曖昧な不安を言語化できるような気がした。


 


 「αさん、ゲームって……だいたい六ヶ月前の時代設定なんだよね?」


 


 「はい、そのような仕様です」

 即答だった。相変わらず、こちらの揺れとは無縁の反応。


 


 「その頃のロトくじ……なくし物とか、探せたりしないかな?」


 


 ――数秒の沈黙のあと、αの声が返ってくる。


 


 「現時点のゲーム内において、涼太様が所有する『ロトくじ』は存在しません。

 ゲーム内で実際に購入し、その行方を確かめていただくのがよろしいかと存じます」

 「極力、当時の行動をトレースいただくことで、より強い再現性が得られます」


 


 「……くじの番号は? たとえば、現実で当選してた番号を使うとか」

 この質問には、さすがのαも少し考える間を取った。


 


 「……涼太様は、ずるいお方ですね」

 少しだけ声音に揺らぎを含ませてから、αは続けた。


 


 「感情および思考パターンから推論した結果を提示します。

 現実の当選番号をゲーム内で再利用した場合――確かに、100%当選いたします。

 しかし、ここで“量子的収束”の概念が働きます」


 


 「……収束?」


 


 「はい。

 現実と仮想の出来事は、独立しているように見えて、一部は“量子もつれ”のようにリンクしています。

 観測行為によって情報が確定されるように、ある行動は必ず、別の世界においても影響をもたらします。

 ゆえに、現実で得た番号をゲーム内で用いた場合、世界線の乖離が大きすぎれば、システムは“修正”を試みます」


 


 「……つまり?」


 


 「誤差が小さい場合、修正は軽微です。

 しかし、誤差が大きくなるほど、“収束”という名の強制的な力が働きます。

 それは、あたかも二つの量子が本来の状態へと引き戻されるように――」


 


 「要するに……やりすぎると、現実まで巻き込まれる?」


 


 「可能性は、否定できません。

 また、この行為は“ゲームバランスの逸脱”でもありますので、αからは“身の程をわきまえる”ことを強く推奨いたします」


 


 「――ありがとう」


 


 収束する。世界線が引き戻される。

 その言葉の意味を、このときの俺は、まだ正確には理解していなかった。

 せいぜい、宝くじで得た賞金が結局くだらない出費に消えて、手元には何も残らない――

 そんな、“運命の帳尻合わせ”的な意味合いだと考えていた。


 


 ゲーム内の自宅に置かれていたメモ用紙に、ゴーグル越しに確認した七桁の当選番号を手書きで記す。

 そして四等が当たる程度に、あえて数字を一部削った。

 触れても質感のないゲーム内の財布に、それをそっと差し込む。


やっと一章の中盤です。

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