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小学生探偵、旭チーム!  作者: 紅葉知花
1/1

はじまりの日

「じゃあ、行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

 お母さんにそう告げて、家のドアを開ける。

 

 私、松下雪(まつしたゆき)

 今向かっている場所は「時津(ときづ)セミナー」って言う塾。

 私が通っている塾では、毎月週の初めにテストをしてそれの点数でクラス分けをされている。

 一番下のコースが「受験Aコース」。その次が「受験Bコース」。更に上が「受験Cコース」って感じで分けられている。

 

 そして一番上のコースが「旭Sコース」なんだ。

 SコースのSは、多分スペシャルのSだと思う。

 その下が「旭Cコース」、「旭Bコース」。旭コースで一番下がAコース。

 旭コースにいる子たちは、きっと大宮中学とか山美中学とかへさっさと行っちゃうけど……

 私のいる「受験Bコース」はそんな中学はいけないと思う。

 

 旭コースの子は、受験に失敗しても私立で小中一貫の中学校だから大丈夫だし、小中一貫じゃない人達は予め塾で用意されている旭中学へ入学できるから。

 

 でも、それ以外のコースはそうじゃない。

 そんな風に塾で用意してもらえるのは旭コースだけだもん。

 私達のコースは余裕が無いんだ。

 勿論、旭コースの人達もそうだと思うけど。


 そんな事を考えながら下を向いて歩いていると、ドンッと前の人にぶつかった。

 思わず反動で、二人とも尻餅をつく。

「わっ、ごめんなさい……。」

「いってー…………気を付けろよっ。」


 ぶつかってしまった男の子は私にぶっきらぼうに吐き捨て、手も貸さずにさっさと行ってしまった。

 ムカつく!男の子なら「大丈夫?」とか言って私を立たせてくれたりしたっていいよね。

 こっそり怒りながら時津セミナーのドアを雑に開けた。

 するとドア前にいた先生とバッチリ目が合ってしまい、気まずい雰囲気が……

 「丁度良かった。松下、受験Bコースの勉強が終わったら職員ルームまで来てくれ。」

 「あ、はい。」


 先生に呼び出されるという事は、クラス落ちかクラスが上がったか……

 うぅ、前者しか思いつかない……

 例えばこの間のテストでしょ、その前の全国テスト。それから…………

 駄目だ、悪い点数しか取ってないよ!

 クラス落ち確定だ……と項垂れていると先生は不思議そうに私の顔を覗き込んだ。

 「松下?時間に遅れるぞ。」

 「あぁっ!」

 時間が………………!


 廊下を小走りで歩くと、ギリギリで授業に間に合った。

 良かった……


 ほっと胸を撫で下ろして、筆箱からシャープペンを出した。

 この塾では、シャープペンは使ってもオッケーになっている。

 しっかり字が書けるなら良いんだって先生が言ってた。

 でも私は鉛筆を握った方がいいと思うんだけどなあ……

 それでも、私はシャープペンを使っている。


 「この問題を……じゃあ高畦!解いてくれ」

 難しそうな問題に、二つ席が離れた高畦たかあぜさんが当てられた。

 さらりと答えを言って、着席する高畦さんを尊敬の目で見つめる。

 赤いフレームの眼鏡に、きりっとした大きな目。そして一つに結われたサラサラの髪の毛。

 女子の中で、高畦さんはカッコイイと噂されている。高畦さんは女子だけど。

 勿論、私もカッコイイとは思う。でも頭がいいのに何で受験Bコースなんだろうって考えちゃう。

 この前、高畦さんに聞いていた子がいるけど、理由は教えてくれなかったって言ってた

 

 それより、私は少しばかり高畦さんが苦手だ。

 結構前だけど、高畦さんに話しかけたことがある。

 友達になれたらいいなぁって感じで軽く話しかけようとしたんだけど……

 

 「そこ、邪魔。通してくれる?」

 冷ややかに冷めた瞳。冷たすぎる声。

 これが普段の高畦さんなの!?って思っちゃって……

 それから友達になるのを諦めた。


 そう。私は見ての通り友達が一人もいない。

 学校でも、塾でもいない。

 学校の子は、受験の話とか進路の話とかはしない。

 遊びに行く事とか、テレビや好きな芸能人の話で盛り上がっている。

 何度かその話に付いて行こうとしたけど、理解が出来なくって直ぐに邪魔者扱いされた。

 友達になるなら、塾の子たちの方が話しやすいと思う。

 でも話したことはないし、結論から言えば私は友達がいないって事。


 でもいいもん。受験して、その学校で友達作るから……!

 なんて思っていると、いつの間にか授業が終了していた。


 私はいっつもそうなんだ。妄想が弾けて、授業中だろうが何だろうかもう止まらない。 

 だから、授業についていけないしテストの点数も最悪。

 お母さんにもお父さんにもいつも言われているし、自分でも自覚している。

 でも、この癖は治りそうにないから出来るだけ自分で気を付けている。


 あ、いけない。職員ルームへ行かなくっちゃ……

 急いで鞄を持って、職員ルームへと足を進めた。

 


 __教室から聞こえた私の陰口は知らないふりをしよう。




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