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召喚術士と妖怪王  作者: 菅田原道則
水の街の長い一日編
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【73】海神リヴァイアサン

 神獣図鑑。シュリチカ教会が発刊したその図鑑のページを二十二ページ捲るとリヴァイアサンの項目がある。


 リヴァイアサンとは水を司るウンディーネとは違い。海を司る神の獣として書き残されてきた。リヴァイアサンは世界中の海を遊泳している。塒となる場所はユージュアリー王国とヨソドム国の間にあるソリード海域に住まうと言われている。近年はソリード海域から姿を消し違う場所を塒にしたと噂されているが姿を見た者はいない。


 リヴァイアサンの特徴としてあげられるのは、その大きな体躯。蛇のように細長い胴体に竜のように気高しい顔。体には頑丈で七彩色に光る鱗が蛇の肌のように敷き詰められている。卑しい話だが鱗一枚で十金貨はくだらない。もしも海で成人男性の手のひらサイズの七彩色に光る鱗が流れてきたならば、それはリヴァイアサンのものだろう。


 リヴァイアサンが神獣と呼ばれる理由は幾つかある。まずは海を司っていると言う事だ。海とだけどでも大きな分類だがリヴァイアサンは更に海の天候をも司っているからである。リヴァイアサンが現れた所は三日三晩大嵐が続き海沿いの村や街に甚大な被害を及ぼしてきた。恵みの雨も神獣の手にかかれば災いへと変ってしまう。


 この本の初めでも記述した通り神獣を狩ってはいけない。天災とは神が人間に与えた試練である。


 ここからはリヴァイアサンを糧にしてシュリチカ教会の方針がつらつらと書かれているだけだ。


 だがしかし、リヴァイアサンを狩ると言う事は自然に牙を向ける訳だ。ましてや封印して街の要にしてしまうなど各方面から苦情がくるレベル。何故かって?神獣は神の使いの獣ではないからだ。神なのだ。人が定めた神だけど、この世界に最古から生きている獣だからだ。歴史的大災害は大方神獣のせいだ。だから封印するって事は自然の理を破壊しかねないのだ。


 だからボクは反対だった。


 目の前には魔晶石にいるはずのリヴァイアサンがマキナを通して喋っている。


「おこがましい、汚らわしい、何年も、何年も、私を、愚弄し、続け、おって!」


 マキナの感情の少ない口調の中で、最も怒りに狂った口調でリヴァイアサンは話す。


 ボク達は何が起こっているのかは解っていない。


「私を、また、封印、する、だと?・・・図に乗るでない、カス虫!」


 リヴァイアサンは怒りはするも口調だけであり攻撃に移行しては来ない。憎悪に満ちた機械の瞳でこちらを睨むのが精一杯のようだ。さっきリッツオルニカさんを刺そうとしたのが執念の力だったのか。


 リヴァイアサンにおこがましいと言われてもボクとキサラギさんは口を瞑んだ。何も言い返せなかった。人間の烏滸がましさでリヴァイアサンを物として扱っているのだ。意思疎通ができる相手を物として扱っているのだ。烏滸がましい・・・。


「どうやってマキナの中に魔晶石に閉じ込めたはずだ」


「魔人、から、創られた、物の、中に、入る、事など、容易い」


「マキナの中にある魔石に転移した?いや、そんな事は・・・」


 リッツオルニカさんは考え込んでしまう。マキナの胸の中で光った物は魔石だったのか。やっぱり魔から創られたマキナはウォーターブーツのように魔石で動いていたのか。


「十年ぶりだなぁ、リヴァイアサン」


 ジャラシャーシカさんは変わらぬ口調で再会を果たす。


「私は、久しく、ない。最近は、お前を、ずっと、見ていた、からな。キャノンショット・ジャラシャーシカ!お前は、復活した、私が、直々に、滅して、やろう。天で、クロノスに、会わせて、やる」


「そうは言うもお前は手も足も出せねぇって感じだな。何のために今マキナから自我を奪いやがった。復活できる喜びを分かち合おうってか?それとも俺達にはもう封印されないって宣言でもしにきたのか?」


「解らぬ、のか?」


「獣の考える事なんて俺には解らねぇよ」


 ジャラシャーシカさんの言っている事は本音ではないだろう。本当は大方予想が出来ている。リヴァイアサンが動けないマキナから自我を奪って現れた理由。それはリヴァイアサンが復活する目前だからであろう・・・。


 言わばボク達人類に宣戦布告の為に現れたのだ。


「呆れを、通り越す。私が、力を、取り戻せた、のは、そこの、この、世界の、人類では、ない、男の、おかげだ。礼を、言うぞ。褒めて、つかわす」


「そりゃどうも」


 リヴァイアサンが目で射抜いた男はリンジだった。何でリヴァイアサンがリンジがこっちの世界の人間じゃない事を知っているんだ?この事はボク達の中でも数人しか知らないはずだし、口外して噂が広まる訳もない。ましてやリヴァイアサンとは今日初めて会ったのだ、初対面なんだぞ。


「そして、そこの、鍵。お前もだ。しかし、お前は、排除しなければ、ならない」


「は?ボク・・・?」


 自分を指さして瞬きを二、三度する。何でボクが指名されたのかも一向に見当がつかない。  


 排除って言葉はマキナと初めて出会った時と同じフレーズだった。やっぱりあの時出会ったマキナはマキナでは無かった。言葉を区切る部分が少しだけ違うのだ。


 というか鍵?鍵ってなんだ?ガキと言い間違えたのか?


「おい、一体何の話をしてやがる。ちゃんと説明しやがれ」


 たった二つの会話で置いてけぼりになったジャラシャーシカさん。それは指されたボクとリンジも同じだ。全く理解できない。


「その質問には答えない。だが腐った縁もあることだ、最初の質問だけでも答えてやろう。私は今、私の意志で復活する。絶望するがいい」


 そう言い残した後にガクンとマキナの首はすわる事を止めて俯いてしまう。最後リヴァイアサンの口調は流暢に喋っていた。リヴァイアサンはマキナを使いこなしている。


「今の言葉が本当だとするとリヴァイアサンは今ここ、ディセムボンドの上で復活するつもりか?」


「断定はできねぇが早くしねぇとな。サンドロス、マキナを回収して・・・っておい、マキナに空中浮遊なんて機能付けたのか?」


 ジャラシャーシカさんの言う通りマキナの身体は力が抜けたまま上へ上へと上昇して行く。これは奇術?いいやそんなもんじゃない。もっと邪悪で悍ましい力だとボクは感じる。何となくだけどまだマキナの中にはリヴァイアサンが残っている。


 ボクの中で良くないお告げが聞こえた気がした。


「ジャラシャーシカさん、この上には何があるんですか!?」


「んあ?この上へは総合ギルドだが。まさか魔晶石へと向かってるのか!?こいつは流石に冷や汗もんだ、おめぇら止めるぞ!」


 ジャラシャーシカさんは両足に力を入れてもう既にボクの身長の四倍の高さまで上がっているマキナへと向けて飛び上がる。わぁ人間の跳躍力じゃないや。あれじゃあ着いて行けるのはリンジくらいだ。


 マキナを引き下ろすために手を伸ばし掴もうとしたその時ジャラシャーシカさんは見えない力に弾き飛ばされてボク達の後ろへと着地した。掴みたかった手は火傷を負っていて爛れていた。


 マキナは二相発破で出来た穴へと吸い込まれていく。目を凝らして見てみれば丁度上にリヴァイアサンの魔晶石が見える。魔晶石は二相発破を受けているようだけど大きな傷は無い。どれだけ硬いんだよ。


「私は民を護る為なら機械を壊すことも厭わない。如月流」


「待ってキサラギさん」


 ボクは武術を出そうとしているキサラギさんの手を押さえる。もう少し押さえるのが遅ければボクが半分になっていただろう。


「何をするんだヨシュア君。今あれを止めないとディセムボンドはおろかユージュアリー王国やヨソドム国までもが大災害に見舞われるんだぞ!解っているのか!」


「解っています!だけど、だけどマキナには心があるんです!ボクも機械には心がないと思っていました。けど違いました、マキナには心が、感情がある。キサラギさんが護るのは民だけなんですか!?」


 ボクの言葉を目を離さず聞いてくれる。そして一度マキナを見上げた後に苦虫を噛み潰したような表情を見せてからキサラギさんは刀から手を放してくれた。


 マキナは壊しちゃいけない。心があるならば、彼女は機械人形と呼ばれようがボクは人だと断言する。彼女は物なんかじゃない。


「ヨシュア君・・・ありがとう・・・」


 今にも泣きだしそうな掠れた声でリッツオルニカさんが礼を言った。


「ヨシュア。そんな甘い事を言っている間にもうマキナは辿り着いたようだよ」


 リンジの発言で上を向くとマキナが魔晶石の中へと取り込まれていくのが目に入った。マキナの表情は変わらず生気が感じられない。遠目からなのにボクはマキナが助けを求めているように見えた。


 マキナは魔晶石に入ってすぐ魔晶石は直視できない程光り、ボクは腕で目を覆い隠す。その動作の間に隣にいたリンジが飛び上がっていた気がする。


「海の覇者・・・ここに顕現したり!」


 リヴァイアサンの声が響き渡ると同時に地面が大きく揺れた。


術一覧

特記無し

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