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召喚術士と妖怪王  作者: 菅田原道則
水の街の長い一日編
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【72】故障

「リヴァイアサンを封印すると言うが一体どうやって封印するつもりなのだ?まさか召喚術士を使うとは言うまいな」


 キサラギさんはボクを庇うように前に立った。サラサラと長い髪の毛がボクの鼻を擽った。 


「その心配はいらねぇ。リヴァイアサンを極限まで消耗させた後に俺の魔術とユアンの魔術を使う。そうすれば魔晶石に出来る。また十年後に同じことをする破目になるがそん時は俺が存分に暴れたらぁ」


「そう言う問題では」


「マキナ!」


 キサラギさんが問題を提示しようとしたがリッツオルニカさんの声で途切れてしまう。


 当のリッツオルニカさんはと言うとマキナを修理してしまったらしい。手足の関節は動きはしないが首と目線、それと口だけが動いているのがここからでも見えた。


「すみません、マスター、負けて、しまい、ました」


 機械に感情はない。しかしマキナの口調からはほんの少しだけ心痛を感じた。


「いいんだ。それよりもマキナ教えてくれ、どうしてヨシュア君の命を狙うなどと言ったんだい?」


「マスター、が、射止めろ、と、仰い、ました」


「やっぱりか・・・。ヨシュア君とリンジ君、君たちは機械に心は無いと言ったね」


 リッツオルニカさんの問いにボクとリンジは顎を小さく引き肯った。


「マキナには五感もあるし表に出さないが感情も一応ある。私はマキナに親心を抱いている、自分の娘のように思うからこそ言わせてもらうよ。マキナはヨシュア君の事が好きなんだ」


「・・・え?」


 この場全体の沈黙。リッツオルニカさんの言葉に自然と反応したボクの声はこだますることもなく消えていく。


 なんて言ったかな。マキナがボクの事を好きと言ったか?いやいやいや、あり得ない、あり得ないよ。マキナはボクを殺そうとしたんだよ、それが好きたる人にする行動か?それが愛だと言うなら愛とは理解し難いものにボクの中で位置付けされてしまう。好いている人を殺して愛を得るなど病んでいる。


 マキナと目を合わせると不自然に目を逸らされた。頬は染めないが何だその初心な反応!目を合わせたボクが恥ずかしくなってくるだろ。


「マキナはヨシュア君に一目惚れしたらしくてね。それで私に相談してきた訳なんだけど、私も恋愛には疎くてね、書籍で知り得た知識だけで対処したんだよ。アタックして心を射止めるしかないと・・・その言葉をマキナは勘違いしたようでね・・・・私の軽率な発言が悪かった、許してくれ!」


 リッツオルニカさんは深々と頭を下げた。つまり、なんだ、ボクを殺そうとしたのは勘違いだったと?機械ながらの誤作動を起こして刃を向けた訳か。確かに先の戦闘中マキナの意味不明な発言を恋愛において解釈してみると合点がいく。


 マキナの中でのボクを殺すと言うのは恋で言う告白すると言う行為なのか。甘酸っぱくない!血の味しかしないよ!


「ヨシュアモテモテだね」


 リンジよ、苦笑いでフォローをするくらいならフォローしないでほしい。


「待って。マキナがボクを見つけた時は排除って言ったんだ。それはどう捉えてもボクを暗殺しようとしているじゃないか」


 ボク達が勘違いしているのか?いや確かにマキナはボクを排除すると言っていた。だから暗殺を企てられていると推測したのだ。それも恋煩いだと言うのか?


「排除ねぇ。マキナ本当にそんな事を言ったのかい?」


「いいえ、覚え、て、いま、せん」


 明らかに嘘をついている。あの場にはルーミアもいたから訊ねれれば明白だ。


 そういえば置いてきたルーミアは今何しているんだろうか。


「マスター、お伝え、した、い、こと、が」


「何だい?」


「私、の、中、に、違う、何、か、が」


「うん?今治している時に人格は一つしかなかったけど、本来別人格がマキナの中にはある訳ないだろう?もしかしてヨシュア君を襲った時は別人格だったと言いたいのかい?」


「確信、は、あり、ま、せん、が」


「そうか。少し調べてみようか」


 レオタードを脱がせてカパッと胸の部分が開かれる。け、結構精巧な作りになっているんだね人肌とは変わらない質感だ。


 胸の中には沢山の精密機械が動いており、人間と同じ心臓部分の作りは素人目に見ても難解な構造だ。その中に手を突っ込んでリッツオルニカさんは弄り始める。奇術使いで手も器用なこともあって淡々とこなしてゆく。


 心臓部分の奥にキラリと光る何かがあったような気がした。


「どうです、か?何か、ありま、した、か?」


 今のマキナの発言にボクはどこか違和感を覚える。発言の内容は会話からして普通なのだけど歯に物が詰まったような感覚だ。どこか不自然でマキナがいう違う人格が入ったような気がする。


「リッツオルニカさん、マキナから離れた方がいいと思います」


 誰も危機感を覚えていない。命を狙われたボクだけが持っている危機感と勘違いされてもいい。この感覚を取り払えるなら言葉に出した方がいいと思ったのだ。


「うん、もうちょっとしたらね」


 案の定危機感は持ってもらえずにマキナの胸部を弄る。けど無理やりにも紅孩児の力を使った後にリンジがリッツオルニカさんの襟首を掴んでボク達の方へと戻ってきた。


「な、なにをするんだ!」


 リッツオルニカさんは怒りを見せる。


「マキナ!」


 しかし、それはリンジではなく、腕に仕込んでいた刃をリッツオルニカさんに向けたマキナにだった。


 ジャラシャーシカさんもマキナから距離をとる。ボクも今のマキナからは無機質な恐怖は感じられない。マキナが醸し出す雰囲気は異質だ。触れてはいけない、マキナが話すまでボク達は口を開いてはいけない。そう威圧されている。


「マスター、にげ・・・・。下賤の、民族が、私を、蘇らせる?忌々しい、私を、誰と、心得る。私は、神獣、リヴァイアサンぞ。恥を、知れ!」


術一覧

特記無し

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