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召喚術士と妖怪王  作者: 菅田原道則
水の街の長い一日編
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【71】ギルドマスターの目的

「まずはおめぇに謝らなければならねぇな。すまなかった」


 ジャラシャーシカさんはボクとリンジに頭を下げた。あのギルドマスターに頭を下げさせている・・・。


「ヨシュアちゃんやリンジちゃん。いえ、ギルド員の皆には悪い事したわね」


 ユアンさんも申し訳なさそうに頬に手を当てている。


「ねぇマスターは俺にギルドクエストって言ったよね?それって信用していいって事なんだよね?」


 リンジが怒っている。口調は穏やかだけど発言の芯から伝わるのは怒りだ。リンジ、ジャラシャーシカさんの事かなり慕っていたもんな。そりゃあ理由は知らないけど裏切られた気分だろう。


「そうだな・・・しかし公言してしまうと国に目を付けられちまうんだよ」


「キャノンちゃんを責めないで上げて、今回の件は全ギルドマスターが批難を受けるべきなのよ」


「発案した私が一番悪いんだけどね。だから私を煮るなり焼くなりしてくれ」


 黙っていたリッツオルニカが前へ出てくる。


 全員が全員自分が悪いと主張するのは解ったけど話の実が無さ過ぎる。


「ちょっと待ってください!話の内容が全くないから解りませんよ!それにリッツオルニカさんが発案したって貴方はギルドと関係ないじゃないですか!」


「いや、関係ある。リヴァイアサン。お前達が喋ったあれはこいつだ」


「う・・・ん?」


 駄目だ混乱してしまっている。ジャラシャーシカさんが真面な事を言っているはずなのに首をかしげてしまう。


「私は声色を変えるのが得意でね。こんな風に。わいが悪かった。わいが本当の総合ギルドマスターや」


 昼に聞いたリヴァイアサンの声とそっくり、いやいや本人だった。


「じゃあリヴァイアサンがギルドマスターなのは冗談だったって事?」


「冗談じゃねぇ。総合ギルドマスターは世間に知られちゃならねぇ。知られた場合はリヴァイアサンと言う事にしてあるんだ。リッツオルニカが総合ギルドマスターだと明かすのはまだ早かったんだよ」


 恐らくリッツオルニカさんがリッツオルニカの名前を無くすまで、ギルドマスターであることは明かす気はなかったのだろう。


 リッツオルニカと言う名前は本名ではない。彼の本名はリッツオルニカの後に続くシューリア・サンドロス。リッツオルニカは代々引き継がれてきた名前なだけだ。サーカス団は百周年目であってリッツオルニカと言う名前は古い。三百年前からはあると自伝書に書いてあった。


「リッツオルニカさんはどうしてボク達の命を狙ったんですか?」


「ヨシュア君達の命?とんでもない!どうしてユージュアリー王国を救ったヨシュア君達の命を狙う理由があるんだい」


「そこのマキナはボクの命を狙って来ましたよ。マキナを操っているのはリッツオルニカさんですし、必然的にそうなります」


「ちょっと待ってくれ。ヨシュア君は何か誤解しているよ。私は確かにマキナの戦闘能力を上げるために今回の事を発案したがマキナにヨシュア君の命を狙えなどと言った覚えはないよ。さっきだって焚きつけるために言っただけですし・・・もしかして勘違いしたのはマキナの方かも・・・」 


 思い当たる節があるようでリッツオルニカさんはボク達に背を向けて、まだ動かないマキナへと近寄った。


「そもそもあの機械の戦闘能力を上げさせて何がしたかったの?」


 リンジがジャラシャーシカさんを見つめる。渋ったような顔をしてからジャラシャーシカさんは口を開いた。


「リヴァイアサンを復活させるためだ」


「リヴァイアサンを!」「復活?」


 驚いているボクと疑問符を頭の上に浮かべているリンジ。そんな馬鹿な事があるか。リヴァイアサンを復活させると言う事は天災を起こすと言っているようなものだ。どうやってあの魔晶石に封じ込めたのかは知らないけど、ギルドマスターが全員でかかっても容易ではないことはボクだって理解できる。それをまた復活させようなどおこがまし過ぎる。


「このディセムボンドはリヴァイアサンで成り立っていると言ってもいい。ディセムボンドを占めている水は全て海水だ。だがな本来は湧き出る水は真水、時間が経つごとにリヴァイアサンの魔力が回復して湧き出る水に魔力が注がれている事に気が付いた」


「それでリヴァイアサンを復活させて元の真水へと戻そうと言う事ですか?」


「そうだ。だがな俺はこのクソガキの姿で戦力外だ。変わりになるものがないかと考えていたところ一か月前にリッツオルニカが俺に相談してきた。リッツオルニカの家宝であるオートマタが動いたと」


「リッツオルニカの家宝がオートマタ?」


「リッツオルニカの名を継いだ証には魔人の遺産であるオートマタを所持する事が許されているのよ。けどオートマタは魔人アリスが死んだ時からピタリとも動かなくなった。それがつい最近になって動いたのよね」


 ユアンさんはマキナを弄っているリッツオルニカさんに声をかけると背中を向けながらもリッツオルニカさんは頷いた。相当集中しているようなので話に加わるのはまだ時間がかかりそうだ。


 マキナを修理させても大丈夫なのだろうか・・・。ジャラシャーシカさんもユアンさんもいるし大丈夫だろう。


「マキナはリッツオルニカに従順であり。戦闘能力も長けていた。俺ほどではないがリヴァイアサンをまた封印できる戦力には成りえた。だからリッツオルニカ発案のこの計画を実行に移したんだ」


「成程な、私達はリヴァイアサン復活の堕しに使われた訳と言う事だな。レベット宰相も懸念する理由も解る」


 ボクの横にはいつの間にかキサラギさんが凛として立っていた。結んでいたポニーテールの紐が切れてたのか綺麗な長い白髪を揺らしている。


「キサラギさん大丈夫なんですか!?」


「存外痛かったぞ」 


「ごめんなさい」 


「気にするな、今度稽古をつけてやる」 


 ドンとリンジの胸を叩いてニッコリと笑顔を見せた。気にするなと言う割には根に持っているんだけど。


「あいつ気づいてやがったのか・・・」


「この事は報告させてもらう。ジャラシャーシカ殿、小言だけでは済まされないぞ」


「実行した時点で覚悟しているよ。あわよくばバレずに事を成したかったがな。はぁ・・・これじゃあディセムボンドもお終いだな。総感祭が終わればギルドって集まりも無くなるかもしれねぇな」


 ジャラシャーシカさんは遠い目をしている。


 ギルドだけで内密にやろうとしたのは自国に頼れなかったからだろう。自由を謳うディセムボンドの事情はギルドで解決するのが当たり前。救助を求めても戦争をしている国々が力を合わせる事はない。もしかしたら体面を良く見せるために救援をよこすかもしれないが、知れている程度。そんな未来を予測できるからこそ、こうして計画を実行したのだ。


 リヴァイアサン復活となると近隣諸国にも影響が出るため、ディセムボンドから近いユージュアリー王国とヨソドム国は事態を把握したかったのだろう。だから聡明なレベット宰相はキサラギさんを使わせた。


「じゃあさ、リヴァイアサンを復活させて倒そうよ」


「リンジ!?」


 今までの話を聞いていたのかと言いたくなるほどぶっ飛んだ発言をしたのはリンジだ。


「だって今がチャンスじゃない?マスター戦力が足りないって言っていたけど、今この場に沢山いるじゃん。俺にヨシュアにキサラギさん、寝ている人達も手練れだし。なんならギルド総出でリヴァイアサンを出しちゃえばいいじゃないの?もうバレちゃったし怒られるのには変わりないでしょ?だから総感祭のイベントだーとかでさ」


 出た。久しぶりのリンジの思い付き発言だ。


「あのねぇリンジ、そんなことして失敗したらただじゃ済まないよ。誰が責任をとるのさ」


「俺達が取ろう。いいじゃねぇか、それ。どうせお咎めくらうなら表沙汰にしてやるか!」


「ちょっと待ってくれ、ジャラシャーシカ殿、私は許さないぞ。今は総感祭で民間人が沢山ここへ来ている」


 うんうん、そうだそうだ。リヴァイアサンがディセムボンドに目を付けたらここは壊滅するだろう。そうなれば多大な被害が起きる。下手をすればこの前のユージュアリー王国の悲劇がまた起こるかもしれない。


「キュリア。今総合ギルドにはな有能な奴らがわんさかいるんだよ。それにおめぇも騎士団としての国民を守る義務として手伝ってもらうからな。断るってんなら俺は証言台であらぬことを言うぜ」


 ニタニタと笑いながらキサラギさんを脅す。詭弁だけど事態が起こってしまえばキサラギさんはそう動かざる負えない。ここで武力を行使して止めてもギルドマスターには歯が立たないことも重々承知。


 キサラギさんが言えることは一つ。


「リンジ君。稽古は厳しめになると思った方がいいぞ」


 額を押さえた後に了承したととれる言葉を項垂れて言った。元から厳しくするつもりの稽古がもっと厳しくなるって死線を超える稽古なんじゃないか?リンジに同情はしないけど。


「じゃあ僕は総合ギルドの皆に知らせてくるわね。大仕事よ、大仕事」


 ユアンさんも嬉しそうに言ってから気づかぬうちに姿を消していた。あの人の魔術一体何の魔術なんだよ。


「日が出てからは定期船が来ちまうな。リミットは夜明けまで、それまでにリヴァイアサンを復活させて、再度封印する」


術一覧

特記無し

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