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召喚術士と妖怪王  作者: 菅田原道則
水の街の長い一日編
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【69】機械と妖怪と召喚術士と真実

「あの変な肌だけをなんとかできたら勝ち筋はある」


 こんな状態でもリンジはボクを庇い、前に立ち塞がってくれる。いくら目標がボクだからってリンジを狙わない事なんてない。前に立ち塞がる壁は懐柔などせずに破壊する、それが機械ってやつだ。人情も感情も持ち合わせていない。


 変な肌。たしか柔らかかったと言っていたな。リンジが攻撃した時にマキナはスライムの魔術を使ったのではないだろうか。人が使うと粘液を分泌するが、魔物が使えばスライムのように液状化することが出来る。まさか機械が魔術を使うなど聞いたことが無いからどちらに適応されてもおかしくはない。


 じゃあそもそもマキナの装甲は硬くない?スライムの魔術を使わなければ何らかの物質には変わりなく、壊すことが出来るはず。


 スライムの魔術の弱点は火。水魔術のくせして火が弱点なのだ。魔物と戦う職業についている人ならば知っていなければならない知識だ。


「リンジ、火って出せる?」


「火はまだコツを掴んでないかな・・・解決策を思いついた?」


「うん。ボクが火の魔術を使うからそれと同時に攻撃してみて。できる?」


 結局リンジがいなければマキナを倒すことは出来ないようだ。リンジの身を気遣うと、無理して笑ってくれた。


「できなきゃやられちゃうしね。力を振り絞るよ」


 もうこれ以上酷い顔つきにならないみたいだ。足に力を入れて痙攣している体を奮い立たせる。


「まだ、邪魔、を、する、つもり、です、か?」


「ヨシュアには指一本触れさせないよ」


「壁、は、大きい、ほう、が、乗り越え、甲斐、が、あり、ます。貴方、に、は、貴方、の術、で、引導、を、渡して、あげ、ま、しょう」


 不味い。今まで律儀に攻撃をくらっていてくれたおかげで、先にあちらから攻撃をされることを考えていなかった。


「・・・・?」


 しかしマキナの体には九尾の尻尾も千脚万雷も酒者洗濯もブギーマンのピアスも現れない。マキナ自身も不思議に思って、今度は手に力を入れる動作をしてみるも、妖術が発言する事は無かった。


 何故だ?ブギーマンのピアスの能力はリンジに与えているのに他のは使う事は出来ないのか?何にしても今がチャンスだ。


「ファイロメント!」


 中級火魔術ファイロメントを放つと同時にリンジが動いた。ファイロメントはファイロの上位互換である。ファイロよりも広く更に強い火を発生させることが出来る。その火を背にしてリンジはマキナへと攻撃を仕掛けた。


 スライムの弱点を知っているようでマキナは後方へ飛んで避けようとする。流石にステージ外、地下迷宮辺りまで逃げられたらファイロメントの範囲外だ。


「可愛い子は逃がさないってね!」


 今度はリンジの腰にベルトが巻かれている。ベルトの真ん中には大きな水晶のようなものが埋め込んである。その水晶の中に手を突っ込むとリンジはそこから鎖を取り出した。


 そしてその鎖を回し、マキナへと狙いを定める。油でも塗ってあるのかファイロメントの火が少しだけ触れただけで鎖は燃え上がる。燃えたのを確認するとリンジは鎖を投げて見事マキナの胴に鎖を絡ませた。


 空中へと逃げたのが不幸だったのかマキナは捕まってしまった。


 マキナはスライムの魔術で抜けようとするもファイロメントの火で液状化することができない。


 リンジは鎖を引っ張って空中にいるマキナを引き寄せる。


「ブギーマンの親父のトラウマを思い出させてくれてありがとうね!」


 千脚万雷を脚に纏い、マキナへととどめの一撃を入れる準備を完了する。


「邪魔、です」


 マキナは最後の悪あがきなのかユグラシアントゲイルを発動する。鎖を持っているリンジは避けることが出来るが、このチャンスを無駄にしてしまう。もうボク達が仮面をつけていないから学習効果がなくて攻撃を真似させることはないけど、マキナ自身が自立型の機械だから同じ手が通用するとは限らない。


 リンジもそれは解っている。だから鎖を離すことはなく相打ちになる覚悟で攻撃する気だ。


 いけない。今にも死にそうなリンジが真面に上級魔術を受けてしまったら死んでしまう。防風魔術をリンジに掛けなければ。


「消えて、くだ、さい」


 マキナはユグラシアントゲイルを放った。防風魔術が間に合わない。


 焦り苦い顔をするボクとは裏腹にリンジは口角を吊り上げていた。


「その魔術を使うと思ってたよ。さっき俺の術で俺を倒すって言ってくれたよね。そんなに自滅を誘うのが好きならば自分で味わいな」


 キサラギさんとの戦いで見せたマントをリンジは羽織っている。そのマントを前へ出してあの時と同じようにユグラシアントゲイルを弾いた。


 弾かれたユグラシアントゲイルは発動術者であるマキナへと返って行き。今度は何かが壊れる音を立てて直撃した。マキナは弾かれたユグラシアントゲイルと共に斜め上へと飛んで行き、天井へめり込んでしまった。


「マ、マキナ!」


 今まで黙って見ていたリッツオルニカが立ち上がってマキナの元へと駆けて行く。


 マキナはズルりと天井から落ちて地面へと叩きつけられた。


「リンジ、今のは」


「今のは衾の妖術反面鏡私。あらゆる物理的攻撃を反射する事が出来るんだよ」


 リンジの顔はもういつも通りの顔へと戻っていた。物理的攻撃なのに魔術を反射するのか。まぁ魔術も物理なのだが意味合いでは武術だけを反射するように聞こえる。


「どうしてそんなのがあるって黙ってたのさ!」


「二夜と出会ってから使えるようになったんだよ。それに紅孩児と塵塚海王の能力も具現化できるようになったし。一気に四つも使えるようになったよ」


「と言うか何でリンジがこのイベントに参加しているのさ。確かジャラシャーシカさんとユアンさんとリヴァイアサンにニヤさんと一緒に頼まれ事をされていたよね?」


 戦闘が終わったことによって溜まっていたものが口からどんどん吐き出て行く。


「それには事情があってね。うーん、まずどこから話せばいいかな」


「二人とも・・・やってくれたね・・・」


 マキナの損傷を確認していて、それが全て終わったのかリッツオルニカは立ち上がった。マキナの腹部にはユグラシアントゲイルが貫通した痕があり右腹部が無くなって内蔵が露わになっている。 


「仕掛けたのはそっちからですからね。何ですか、戦うんですか」


 ボクは敵意をむき出しにしてリッツオルニカを睨む。


「いや、お手上げだ」


「は?」


 ボクは抜けた声を出してしまった。リッツオルニカは両手を上げて降参のポーズを見せる。騙されるな、狡猾なリッツオルニカはまだ何かを仕掛けようとしている。ここで警戒を解いてはいけない。


「お見事!としか言いようがない。私が奇術を初めて見た時より驚いているよ」


 興奮して嬉しそうにリッツオルニカは話す。何だ?何が目的だ?さっぱり解らないぞ。


 本で読んだがリッツオルニカは大きな魔術を使う事は出来ない。生活に必需な魔術は使えるらしいが魔物を討伐する為の魔術は使えない。武術も嗜みは一切なく生涯を全て奇術に捧げてきている。本の内容が正しければ確かに害はない。


「いきなり何もしないと言っても信用してくれるわけないよね。おーい、見てるんだろう?出て来て二人を説得してくれ」


 キサラギさんの二相発破が開けた穴に向けて声をかける。


「しょうがねぇなぁ」


 ため息混じりの声が聞こえたと思うと穴の奥から二人の人影が落ちてきて、リッツオルニカさんの横に着地する。


 降りてきたのは昼に出会ったバカラスネークとバットルーレットのギルドマスタージャラシャーシカさんとユアンさんだった。


術一覧


妖術

反面鏡私はんめんきょうし

妖怪衾の能力を具現化したもの。羽織ったマントは物理的攻撃(魔術も含む)を跳ね返してしまう。但し、マントに触れた部分だけの模様。


塵塚壊王のベルト

妖怪塵塚壊王の能力を具現化したもの。腰につけたベルトの真ん中に付属している水晶の中には数多の付喪神が付着した異世界の代物がある。リンジが好んで出すのは主に鎖。


紅孩児の腕輪

妖怪紅孩児の能力を具現化したもの。ノーリスクで時間を止めることができる。具現化していなくても発動は出来るが時間を止めている時間が短い。止まった時の中を時が刻む現象は当の本人にも解らない。


ファイロメント

中級火魔術。ファイロの上位互換。ファイアを複数打てるファイロよりも強い炎と効果範囲を維持できる。


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