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召喚術士と妖怪王  作者: 菅田原道則
邂逅編
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【15】ギルド入会

 彼女は「あり得ない、あり得ない」と震えながら呟いている。


 昼下がりに見る彼女は突出した服装だと再認識させてくれる。どうやらそれはリンジもキサラギさんも同じだった。


「誰?あのコスプレ少女」


「ルーミア・ファラスだよ」


「へぇー、あれが。追っかけてきたのかな?」


「解らない。何か事情があるようだけど、話せる感じじゃないよね」


「あ、あんた達、何てことしてくれたのよ!ってきゃあ!」


 呑気に話していると、ファラスはいかり肩でボク達の前まで近づいて来た。その際に足元にあったガロックマンの残骸に足を掬われて転びかける。ファラスに一番近く、体力も有り余っているボクが彼女を受け止めようとしたが、そんなことをしたことが無いので、抱きとめる形になってしまった。


 ファラスの匂いは上品な甘い香水と火薬の焦げ臭さがした。


「だ、大丈夫?」


 心拍数が上がったことを悟られずに安否を確認する。


 長いまつ毛が三度瞬きする度に踊る。近くで見ると可愛らしい小顔と整った目、鼻、口。愛玩動物かと間違えてしまう可愛らしさ。


「大丈夫?・・・大丈夫なんかじゃないわよ!離しなさいよ!この変態!」


 ボクは突き飛ばされて尻餅を着いた。


「あんた達のおかげでサザライト鉱山から追ってきたガロックマンを倒せなかったじゃない!てか、あんた、私との決闘を逃げた魔術師じゃない!どれだけ私の邪魔をすればいいのよ!」


「邪魔って言っても、襲われていたし」


「はーん、襲われていたなら人の獲物を横取りして、更には純情可憐な乙女の体を弄り回してもいいって訳ね。このド変態!」


 ボクはどうやら彼女が苦手なようだ。何を言っても彼女の頭の中で彼女の都合の良いように解釈されてしまう。


「あの時の続きと行こうじゃないの」


「久しぶりだな、ルーミア。再会を喜ぶ前に、今、サザライト鉱山から追ってきたと言ったか?」


「うっ・・キュリア・キサラギ・・・。そ、そうよ!ギルドの仕事で私一人でガロックマンを追い詰めたのよ!そ・れ・を・あんた達が倒してしまったんでしょ!無傷でガロックマンの心臓部を持ち帰る依頼だったのに!」


 ルーミアが腕を鳴らしながら、今まさに噛みつかんとした時にキサラギさんが助け舟を出してくれた。


「あぁ・・ロックビーストの心臓部と交換しようとしていたんだな。だが、ガロクッマンがここまで逃げてくることはおかしい事だ」


「はん、私の力に恐怖して尻尾巻いて逃げたんでしょ」


「ふむ・・・。ルーミア、提案なのだが、その依頼私達も同行してもいいだろうか?その、ガロックマンの心臓部を壊してしまったお詫びと言っては何だが」


「はぁぁぁぁぁ?バッッッッッカ!じゃないの!変態もやし魔術師と死んだ魚目黒ずくめの男と王国騎士団副騎士団長と仕事なんてお断りよ!」


 キサラギさんの申し出は速攻で却下された。キサラギさんはどうやらサザライト鉱山を調べたいようだ。確かにサザライト鉱山の主が追い詰められたからと言ってこんな所まで逃げだしてくるのは異常である。


 にしても変態もやし魔術師って、傷つくな。


「そうか。事情を知らなかったが、ガロックマンを倒してしまって申し訳ない。埋め合わせは私がするから。彼らがギルドに入ったら良くしてやってくれ」


「彼ら?」


 ファラスはボク達を見る。ボクとファラスが目を合った瞬間に睨まれた。その次にリンジを見る。リンジはファラスに向けて笑顔で手を振っている。キサラギさん、ボクの第一志望は王国魔術師団ですよ。


「はん、こんな奴らギルドに加入させてもらえないわ。徒労に終わるわよ、おとなしく副騎士団長様のお荷物持ちでもしておけばいいのよ」


 そう言って、ファラスは踵を返して、腰に着けていた道具袋からフェザンタスの羽を取り出してどこかへ飛び立って行った。


「わー、あれ便利そうだね」


 フェザンタスの羽に感心するリンジ。フェザンタスの羽はフェザンタスと言う神獣に生えている羽の事だ。フェザンタスの羽を使えば自分が行きたい場所にひとっ飛びできる。フライアウェイの魔術と効力は同じだ。魔力が少ない人間がよく用いているが、値段はそこそこする。


「勝手に申し出をしてしまったがサザライト鉱山の件が気になったものでな。それにしても相変わらず人当たりにきつい奴だ。もう少し物腰柔らかくなってほしいものだ」


「キサラギさん、カジフまでどうする?」


 馬だけになってしまった馬車をリンジは指す。


「どうもこうも、カーウィン君やリンジ君は馬に乗れるか?」


「乗れないです」


 同じく乗れないリンジも首を振る。


「では、歩いて行くしかないな」


 こうしてボク達は足が棒になって(主にボクが)カジフへと着いたのだった。


 お昼も過ぎてもカジフは賑やかだ。ボク達はギルド、バカラ・スネークを目指している。ガジフのど真ん中まで行くとピラミッド型の建物がある。その建物がバカラ・スネークの本部だ。この辺りまで来ると流石に冒険者の恰好をした多種多様な種族が目立つ。


 キサラギさんは王国師団の服を着替え、自前の革装備を着用している。この人何を着ても画になるなぁ。


「いらっしゃいませ、ご用件は何でしょうか」


 バカラスネーク本部の中に入ると思っていたより広かった。蛇が象られた彫像が沢山あり、壁にまでも班目模様が記されている。受付は柱の中にあり、一つの柱に三つの受付があり、そう言った柱が四つある。ボク達が一番空いている受付の前まで来ると、エルフ族の受付嬢が対応してくれた。名札にはセフィラと書いてある。


「このギルドに入団したいんですけど」


「入団希望の方ですね。では、こちらの紙に記入お願いします」


 受付窓口から紙を渡される。リンジはそれを受け取って机の隣にあったペンを持ってサラサラと書き始める。ボクは何を書いているのか気になるので覗き見る。


 一番最初の項目は名前。偽りなく、阿玉麟児。ごめん、この文字読めないや、多分アダマリンジと書いているのだろう。次に性別。こちらは男性か女性に丸をすればいい、しっかりと男性に丸をしている。アリー語が解るのだろうか?年齢。二十歳。数字で記入しているので読める。同年齢だったのか。次は出身地。日本 京都。これまた読めない、武庸の文字に似ているが、読めない。簡単な武庸の言葉なら解るのだが。


 武術、魔術の場所には妖術!と大きく書かれている。まぁ確かにそうだが、近場で見ている受付嬢も首を傾げている。


 次はユージュアリー王国においての納税。馬車で教えておいたが、ちゃんと理解してくれているだろうか。ギルドでは各国のギルドで使えるようにギルドカードでお買い物ができるようになっている。仕組みはギルドカードに専用のマナで刻まれている明細で支払いができるらしい。硬貨ではなく、持ち運びやすいギルドカードを選んだのは頭が良い。そして、ギルドカード内のお金を取り出して各国のギルドで現金化することもできる。


 ギルドカードにどれくらいお金が入っているかは数字と絵で解る。揚貨は数字で書かれ、銅貨は蜘蛛、銀貨は蝙蝠、金貨は蛇の絵柄で表示される。


 例えると、蛇2蝙蝠5蜘蛛48、549と言った具合で段落に別けられて表示される。


 ギルドではその国の納税の義務をギルドが処理してくれる。ただし、ギルド所属している人達はどれだけ稼ごうにも稼ぎの一割はギルドへと納金される。これは所属国の納税とはまた別である。


 これを踏まえたうえでギルドに入る人間は馬鹿だろう、王国師団の方が安泰ではないか。と子供の頃の純粋なボクは思っていた。


 その部分には保証人欄と連帯保証人欄がある。保証人欄には自分の名前、そして連帯保証人の欄にボクの断りなく名前を綴った。ちなみに、連帯保証人になると、リンジが払えなかった税をボクが払うことになる。


「おぉい!何で勝手にボクの名前書いちゃうの!」


「駄目なの?ヨシュアしか知り合いがいないし、これ書かなかったらギルド入れないんじゃないの?」


「うぅん、他にはギルドに担保を作れば入れない事もないけど、それも無いだろうし・・・いいよ。ボクが責任を持つ!」


「ありがとー」


 書き終えたリンジは受付嬢へと用紙を返す。


「それではあちらの彫像の口の中に利き手入れてください。安心してください、唯の魔力測定器ですので。その後にまたこちらへ戻っていただいてもらえば、ギルドカードをお渡しします」


 受付嬢が指す場所は人と同じくらいの大きさの蛇の彫像の顔。口が丁度手が入るくらいの大きさ位開いている。リンジは言われた通りに前まで行って右手を入れた。蛇の目に付けられた測定石が真っ赤に染まる。ボクとキサラギさんと受付嬢だけが息を飲む。


 そして直ぐに測定石は音を立てて割れた。


 その場にいる誰もかもが、その音に足を止めて注目している。


「これって保険きく?」


 リンジは訳の分からない事を言って冷や汗をかきながらボク達の方を向いた。



術一覧

フライアウェイ

中級補助魔術。馬より早く目的地まで飛行することが出来る。魔術が施されているので人体に影響は出ない。

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