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唐突な非日常は魔法と共に  作者: 245
魔法、はじめました。
8/8

異界

打ち切り漫画臭。

 ~今までのあらすじ~

 突然告げられた魔法の存在。わかんねーって思ってたら、ゴブリンとの戦闘に! 友人に助けられたものの、寒い中学校へ行くと今度は象の魔物の襲撃! そんなこんなで気がつくとそこはダンジョンで、謎の木の魔物を氷属性魔法で撃退!

 

 ……そう、氷属性魔法。本の属性の欄に乗っていなかった属性。なぜそれを、オレが使えたのか。

 正直分からない。可能性としては本の記載漏れか、オレの適性か。

 まあ、そんなこともオレの脳内プロローグも置いといて、氷属性どうやって説明すっかな……。


 「今の魔法は、氷属性?」

 

 おおっといきなり核心をついてきました。早い。流石オレの唯一の友人。


 「……ま、そうなんじゃね?」

 「……」


 黙り込まないでください。オレ悪いことしたっけ?


 オレが考えにつまっていると、先生が口を開いた。


 「お前ら。とにかく勝ったんだからいいじゃあねーか。とにかくほら、出るぞ」


 そう言って先生が指した方向には、入り口のものよりも一回り大きい扉が、眩く光を放ちながら部屋の中央奥にたっていた。ここに来たときにはあんなものはなかったが、このダンジョンの守護者である木の魔物達を倒したことによって出現したのだろう。そして本に書かれていた内容通りならば、あれが脱出の扉だ。


 「そっすね。早く出ましょう。……氷魔法は元からあって、本には書かれていなかっただけかもしれねえぞ」


 返事をしてから一応考えを伝えても、未だに納得しきれていない、という様子だ。

 何か、あったのか?

 等と考えつつ、オレは先生に続いて扉を潜った。一体どこに出るんだろうか。

 数秒の視界の暗転後、目を開ける。そこにあった光景は、どう見てもオレの住む地球の姿では無かった。


 まず、目に飛び込む点々と抉れた地面の色は、赤茶。空は、どこまでも赤黒い。雲は薄く灰がかっていて、工場の排気ガスを思い出した。

 太陽も、月もない。時間の概念を忘れさせるような背景に、ぽつぽつと大きな枯れ木。木の根元から地面はひび割れ、根がとびでている。そこかしこに散らばる巨大な骨。

 

 直感が、答えを告げている。ここは、白衣の科学者が語った未来の地球なのだと。

 よく見れば、巨大な骨は昔図鑑で見た虎の頭蓋骨だ。魔物だったのだろう。


 後ろから、ざわめきが聞こえる。先生達も、唖然、そして絶望といった顔だ。おそらく、オレもそんな顔をしている。

 そんな中、一つだけ、違う顔。

 

 友。オレの唯一の、親友。気の合う奴で、彼自身も独りだった。お互いに信頼していた。

 だが、あの表情は。“理解し(わかっ)ている”表情(かお)だ。


 そう思うと同時に、口が動いていた。

 

 「“氷結”!」


 友の足元の地面ごと一気に凍らせる。周囲は茫然と見ているが、さらに力をこめる。

 しかし、出来上がった氷の塊の中に、友の姿は無かった。

 

 「……してしまったんだね」


 突如、後ろから小さく聞こえる声。真後ろにいた。

 

 「“火球”……!」

 「“断空”」


 反射的にくりだそうとした火球は、空間ごと風の刃に切り捨てられた。

 上級風属性魔法“断空”。空間を一時的に切断する風の刃をつくりだす魔法。ならば。


 「“水弾”! “火球”!」


 水弾に火球をぶつける。すると、水が蒸発しあたりが蒸気に包まれる。簡易的な目くらまし。

 と同時に襲い掛かる激しい倦怠感。

 魔力切れか……?

 

 「でも……やるっきゃねえ!」

 

 そう小さく叫び、体を奮い立たせる。

 遠くで、声がした。


 「“夢霧”“土塊魔人”」


 この霧は……!

 突如、強烈な眩暈。視界がぼんやりとする。霧に映る二つの影。

 不味いと思った時には、目の前に大きな拳。間違い無く上級土属性魔法“土塊魔人”で生成されたゴーレムの拳だ。生身で受ければ常人は即死と本に書いてあった。

 拳がオレの胸に触れる瞬間、時間が止まる。その一瞬でゴーレムのパンチの軌道から逃げる。

 時間が動き出すと、空ぶった姿勢でなおもこちらを見続けるゴーレムが見えた。


 目を合わせたまま、魔法を無言で行使。ゴーレムの足を、腕を、関節を、一気に凍らせる。

 完全に動きの止まったゴーレムを友が見つめている。そしてこちらを向く。


 「君の成長には、驚かされるよ。上級魔法を3つも使ったのに死なないなんてね」

 「使ったほうが死ぬだろ、普通……」


 飄々とした態度に、さらに魔力を削られている気分した。


 「僕は修行したからね。ずっと」

 

 おかしい。魔法が使えるようになったのは、今朝だぞ。コイツは相当な才能持ちか、本当に長い間鍛錬を積んだのか――?

 

 「……少しだけ、話そうか。僕の、秘密を」

 「秘密……?」


 秘密か。思えばコイツは出会ったときから何も話さなかったな。頭がよくて顔が良くて、尊敬のような気持ちがオレにはあった。だからこそ、あまり聞けなかったのかもしれない。


 「正直に言うとね、僕が魔法使えるようになったのは今日じゃないんだ。それと、ここに来るのも」

 「何だと……?」

 「あの本に載ってることも全部知ってるし、文字も読めたんだ。ちなみに、本のタイトルは魔法大全。なんたって僕が著者だからね」

 

 な……。衝撃の連続に、戸惑いを隠せない。本を書いたのは、コイツ? 意味が分からない。


 「そろそろ時間だね。もっと聞きたいことがあったら、あの丘の向こうの城に来てよ。最上階で待ってるからさ」

 

 丘の向こうを、力なく見つめる。ぼんやりとした、漆黒の影。あれが、コイツ言う城なのだろう。

 

 「僕は上位魔王級……次期魔軍総帥なんだ。じゃあ、今度は本気で戦おう」

 

 そういって、友……だった、魔王は去って行った。

 アイツの言うとおりなら、アイツが地球の敵なのだ。敵である以上、倒さなければならない。

 

 重い足を引きずって、オレは歩き出した。あの城へと。

245先生の次回作にご期待ください!

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