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唐突な非日常は魔法と共に  作者: 245
魔法、はじめました。
7/8

開花

 さて、宛ても無く洞窟内をぶらぶら歩いていたわけだが、幸運な事に友人たちと再会を果たす事ができた。先生曰く、この洞窟で気づいた時には全員いたそうだ。オレ一人除いて。

 一人だけ仲間外れにされているようで寂しいが、皆と行動していれば本を読みふけることも無かっただろう。

 

 そして現在。本の情報を皆に伝えている。


 「ちょっと、その本を見せてくれないかな」

 

 と、隣の友人。

 いいぞ、と言って本を手渡す。すると、友はページをめくりながら訝しげな表情を浮かべる。あらやだ常識の範疇だった?

 という憶測は、どうやら外れたようだ。


 「いや、これ読めないよ。何語?」

 「はあ? んなわけあるか。日本語だ」

 

 隣から本をのぞいてみる。至って普通の日本語だ。

 

 「じゃあ、ここって何?」


 指差されたのは、魔物についての欄だ。


 「えっと、“空想上でしばしば語られる形状のものがいることから、これもまた人々の夢見てきたものの具現といえる。”だろ」

 「…………そうなんだ。やっぱり僕には読めないな。先生はどうですか」

 「ん~、さっぱり読めんな」


 なんだと。ということはもしかすると、オレには読めるチカラか何かがあるのか……。

 などと調子の良いことを思いながら、言ってみる。

 

 「まあ、読めなくてもオレが言うっすよ。なんたってオへぶ!!」

 

 ……言えなかった。壁にぶつかったのだ。正確には、扉に、だ。

 どうやら知らず知らずの内にこの洞窟の最深部に来たらしい。

 そして、この扉のことは知っている。

 

 守護者の間。それはダンジョンの出口と、ダンジョン中最強の魔物(守護者)が位置する場所である。


 と書かかれていた。本に。

 

 「なんだろう。この扉は」

 「ああ、この本によるとダンジョンの出口らしい。でも中に……」

 

 魔物がいる、と言う前に先生が扉を開けてしまった。そして入るや否や、先生があきれた声を出す。


 「出口なんてねえぞ。だだっぴろいだけだ」


 そんな筈は。と思いつつ、部屋の中を見てみる。

 そこは、学校の体育館ほどぐらいの、今までの小部屋とは明らかに違う造りだった。どうやらここが守護者の間で間違いないようだ。

 床はこけむした石畳で覆われ、壁は洞窟と同じだがツタがはっている。よく見ると小さめの木までもが生えている。ここは本当に洞窟の中なのか。


 「荒れ放題だね。守護者は掃除しないのかな」

 「魔物がするわけねーだろ」


 と言いながら、中を探索してみる。そして木に触れようとした時。

 木がひとりでに動き出した。揺れるでは無く、根が地上にぬぼっと出て歩いた。ここ地上じゃないけど。

ぬぼっと出た根は忙しく動き、本体を周りの木にぶつけ回っている。


 「なんだアレ……」

 

 何が起こっているんだと思いながらその光景を見つめていたが、ぶつかられた木を見てすぐに理解した。

 ぶつかられた木は同じようにぬぼっと根を出し、こちらに近づいてくる。

 

 つまり、こいつらがこのダンジョンの守護者であり、今からオレ達を殺そうというわけだ。

 逃げようと先生達が扉に手を掛けるが、びくともしていない。閉じ込められた。

 

 「こうなったら……殲滅だろ! “火球”!」


 すぐさま近くの木に“火球”を放つ。草には火、これ常識な。

 

 「キ~……」


 口らしき器官は見当たらないが、どこからか音を発するらしい。その苦しげな鳴き声で、効いていると思っていた。それは間違っていた。

 声を発した一体の木の方へ、突然他の木々がわんさかやってきた。そして、一斉にこちらへ向かってくる。

 見れば、“火球”を受けた木は葉一枚焦がすことも散らすこともなかったようだ。

 

 鳴き声は仲間を集めるものだったのか――。

 と思いながら、眼前に迫る根を避けようと試みる。間に合わない。瞬間、世界が静止する。

 再び動き出した世界で、根の突撃は空を切った。

 

 そういや、一瞬時間止められるんだった。

 今更のように思い返しながら、皆の所に駆け寄り、呼吸を整える。


 「はぁ……危なかった……」

 「息ついてる暇は無さそうだよ……“水弾”!」


 後ろを振り返ると、すぐ傍に友の“水弾”を受けて枯れていく木がいた。

 水弾を放った張本人は続けて、


 「皆さん。この魔物には水が効くようです。水魔法を使える方は攻撃を。使えない方は足止めを行ってください」

  

 と、皆に聞こえる声で言った。

 あまりのリーダーシップに惚れそうになるが、そんな事している場合ではない。すぐに水魔法を唱える。


 「よっしゃ、“水弾”!」


 できた水の塊は、友のものと比べると余りにも小さかった。違う。オレのが小さいんじゃない。アイツのが大きいんだ。

 一応木に向けてぶつけてみるが、逆に活性化した。


 「君は足止めをしてくれ……」 

 「す、すまん」


 怒られちった☆

 だが、オレには他の属性の魔法でいいものが無い。せめて何か、水になるものはないか。

 その時、オレに閃きの神が舞い降りた。いや知らんけど。

 神はアイデアと魔法を授けてくれたようだ。今なら、一つ無詠唱で唱えられる気がする。

 

 だがその前に、一つ確認しておかねば。どこだ、先生は…………いた。

 

 「先生。火属性魔法得意っすか」

 「ああ……一応な。どうしたんだ?」

 

 戦いの真っただ中で話しかけてきたことに疑念を抱いているのだろう。眉間に皺を寄せている。いやこの人は元からか。

 

 「オレが合図を出したら、一番強い火属性魔法を使ってください。広範囲の奴で」

 「おう」

 

 よし。後は放つだけだ。集中して、なるべく広範囲に……。


 「“氷結”!」


 オレがそう口にした瞬間、木の魔物達の根っこが、幹が、葉が、薄い氷に覆われていく。それは魔物達の動きを止めた。

 

 「今っす!」


 合図を送ると、先生が使える中で最も強いと思われる“火走”を唱える。火は一瞬で魔物達の足元にまわり、熱風で氷を溶かしていく。溶けた水で魔物達もどんどん枯れていく。

 なんとか成功したようで、良かった。急に“理解”した魔法を使った、急に思いついた方法だったが。

 みると、友も先生も驚いている。

 

 ……。氷属性とか、無かったんだった。

 

 

 

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