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唐突な非日常は魔法と共に  作者: 245
魔法、はじめました。
6/8

迷宮

大分空きましたね……

 魔物が喋らないという先入観があったのはなぜだろうか。それは、魔物はヒト以外の生物がモチーフになる事が多いからだと思う。言葉という概念は人類にのみ存在し、他の生物には無い。

 何か作品の中で魔物が言葉を話すとすれば、知性のある上位の魔人とか、そういったものなのだ。

 だからこそ目の前の、知能が高いとは思えないような魔物が人語を話す事に驚く。


 「こいつ、今……」


 見ると先生も驚いているようだ。

 というか、全員茫然としている。オレの友達なんて何言ってるんだコイツって顔をしている。

 そんな状況に気を遣ってくれるはずもなく、魔物は再度口を開く。


 「目先の危険は消しておかねばな」


 と、何やら瞳を閉じ顔を俯けた。

 ここで気づいたのだが、どうやらこの魔物の声はダイレクトに届いている。声を消す魔法があるから、声を作る魔法もあるのだろうが、習得の難しい魔法だろう。この魔物は中々のやり手のようだ。

 そう、今だってこの魔物はじっとしていて、集中しているように見える。魔法の詠唱を心の中でするように。

 あれ? 今攻撃すればいいんじゃ……。

 

 考えを伝えようと友人の方を向いた瞬間、唐突に視界が真っ白に染まる。

 最後にオレの目に映ったのは、友の険しい表情だった。


 

                   * * *


 

 ふと気が付くと、そこは薄暗い密室だった。前後に伸びる空間。近くの壁をそーっと触ってみると、ごつごつとした岩の質感がある。

 どうやら、ここは洞窟の中らしい。

 全くというほど物音が無く、少し、怖い。

 

 狭い場所と暗い場所と水中は嫌いなのだ。

 オレ、怖がりなんだ!


 とはいっても、これからどうするか。というか、ここは何処だ? さっきまでオレは……魔物がじっとしているのを見て――。

 

 「急にこの場所、かぁ……」


 思わず声にでてしまう。でも今一人だから別に良いのか。

 

「とりあえず、誰か探すか!」


 心細くなる自分を勇気付け、オレは進む。


 ……どっちに?

 前か、後ろか。元来た方向は分からない。こうなったら……。

 

 「ど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な、て、ん、の、か、み、さ、ま、の、い、う、と、お、り……」

 

 二択の時といえばコレだろ。どうでもいいけどこの後に続く言葉が地域によって違うんだよな。

 

 「…………こっちか」


 自分に指が指す方向は、ここで気が付いた時に最初に目に入った方、つまり前方だ。

 

 「んじゃ、行きますかねー」


 オレは暗闇の中へと進む。

 すると、すぐ近くに木製の扉があった。


 「おー……。それっぽい」


 ありきたりな鉄板で縁どられた扉で、急いでいたら気が付かなさそうだ。


 期待を込めつつ扉を開けると、そこはドーム状の狭い空間だった。中央に丸机が置かれ、端には本棚やかまどがある。


 出口では無かった。だが、あまり残念な気持ちでは無い。むしろ、探検をしているようで楽しい。等と思いつつ、物色を始める。

 丸机の上には、何も置かれていない。

 本棚。4段に分かれていて、2段半ぐらい本に埋められている。

 一冊を手に取ってみると、内容は日本語で書かれていた。なんてご都合主義。


 幸運に感謝しつつ、ページをめくる。すると、図と分かりやすい記述で魔法についての事が書かれていた。

 急いでるわけでも無いしちょっと勉強しとくかと思い、オレは丸机の横の椅子に座った。


 

                   * * *


 

 本を中間まで読み終わった所で、思い切り伸びをする。


 「うぅ~……。今何時……」


 と言いかけた所で止まる。時計らしきものなどこの場には無い事を思い出したからだ。

 まだ半分だが、有益な情報を沢山知れた。


 魔法について

 

 魔法とは、人々が昔から夢見てきた力である。

 人類の極限状態からの脱出方法として発現した。

 魔法の習得は、大きく3つの段階に分かれる。

 

 魔法の概念の理解

 詠唱文の詠唱

 魔力の消費による発動

 

 以上を持って1つの魔法の習得となる。

 

 魔力…人それぞれが先天的に持つエネルギ―。夢への憧れが強いほど大きい。

      初発動時に消費される魔力が発動者の残存魔力量を超えていると、発動者は死亡する。

 魔道具…魔導師により作られた、魔力を持つ道具を指す。魔道書、魔杖などが有名である。

 魔道書…さまざまな魔法についての詠唱文、イメージが書かれている書物。これの通りにすれば、初級魔法程度ならば覚えられる。

 魔杖…魔法の威力や魔力の増加を目的として付加魔法が掛けられている杖。

 魔導師…魔道具の製作、または魔法全般の研究を目的とする者の総称。

 魔術師…魔法の習得、使用をする者の総称。


 魔法の属性について

 魔法には、6つの属性があり、さらに4つの階級に分けられる。


 火・水・風・土・雷・無

 の六属性。


 下級、中級、上級、特上級

 の四階級。


 上記に関連して、適性について


 人にはそれぞれ魔法適性があり、基本2種とされる。

 また、中級からはおのおのの適性属性しか使えない事が多い。

 上級魔法からは習得が難しく、魔力に恵まれ魔法の才に秀でた者が、数年の修業を経て習得できると言われる。


 魔物について

 魔物は、地球上に突如として現われた生物で、非常に攻撃性が高い。空想上でしばしば語られる形状のものがいることから、これもまた人々の夢見てきたものの具現といえる。

 目的は不明。ただし、本能的に魔物以外の生物を襲うという事が分かっている。

 また、生物が魔法の使用によって魔物を倒すと魔力の増加が確認されている。

 知恵のある魔物には魔物達を組織する個体がおり、頂点に君臨する者を魔王級と呼ぶ。

 その下に、

 上位魔長、下位魔長級、

 上位魔頭、下位魔頭級、

 と呼ばれるものがいる。



 ここから先は、下級魔法の覚え方が分かりやすくのってたり、魔法や魔物についての論文が書き連ねられている。

 全部読みたいのは山々だが、いかんせん疲れた。なので、この本を持ってまた洞窟を歩くことにする。


 こういう本があるのって便利だな、と思いつつ、オレは部屋を後にした。 


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