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唐突な非日常は魔法と共に  作者: 245
魔法、はじめました。
4/8

襲撃

 避難所となっている体育館内は静謐で、無気力な雰囲気に包まれていた。それはおそらく横たわる者が多く、座っている者もやや顔を俯け、一様に口を閉じ無表情になっているからだろう。

 今後の生活に支障を来すような怪我人はいないが、大多数が軽い怪我の手当てをしている。


 「酷い状況だね……」

 「ああ……」


 これが、今のところの損害なのか、と思う。まだ朝から1時間と少ししか経っていない。

 あの白衣の男が――直接的ではないにせよ――街の人々に被害を与えている事に沸々と怒りが込み上げてくる。

 どうやら隣の相棒も同じようで、許せないね、と口にしている。

 2人してやりきれない気持ちを募らせていると、後ろから声がかかった。


 「おお、お前ら無事だったか」


 中年男性とおぼしき人物の言葉に振り返りつつ、その言葉の意味を考えてしまう。


 ――無事じゃない奴も、いるのか。


 と同時に、視界に入る人物。そこには、ここで働く、自分達の担任がいた。

 相変わらずの作業着みたいな上着に、短足という事が伺える茶色いズボン。眉間に険しく皺寄せる穏やかではない目。

 こんな状況でも、この人は変わらねーな。

 

 「先生の方こそ、ご無事で何よりです」


 いつの間にかコイツ、笑ってやがる。先生がピンピンしてるからか?

 

 「そうだな、って言いてえが、事無きを得たっつうわけじゃあねーぞ」

 

 どうやら、何も無かった訳では無いようだ。

 

 「なんかあったんすか」

 「まぁな。それもこれも外で話すぞ」


 と言って、体育館から出て行ってしまった。慌てて後を追う。

 


 先生は体育館の入り口前の階段に腰掛けると、口を開いた。

 

 「さーて、お前ら何が聞きたい」


 何もかも……と言いそうになるが、このハゲ親父は冗談が通じない。それどころか冗談じゃなくても冗談と受け取って怒り出す。今朝だって怒られた。

 オレがうーんと唸っていると、すかさず隣から、


 「先生に何があったのかと、現在の避難状況、そして僕たちが校門で1時間以上も待った理由を教えてください」


 ナイス友。でも最後のはこの人関係無いんじゃないかなー。

 

 「いいだろう。まず、さっき魔物に襲われた。ココがだ」


 !!! 

 と驚いてみたが、魔物に襲われたのはオレ達もだ。別にそれほど驚くことじゃない。

 しかし、衝撃の補足がつけられた。


 「馬鹿でけえ奴だった。体育館ぐらいだったぞ」


 今度こそ、エクスクラメーションマークだった。

 この体育館と同じサイズということは、通学路で遭遇したゴブリンなんて話にならないだろう。


 「どうやって倒したのですか?」

 「倒してねえぞ。みんなで逃げ回ってたら勝手に帰って行きやがった」

 「へぇ……」


 倒してないってことは、まだ生きてんのか。やだなー後で戦うやつでしょこれ。

 

 「そのお蔭でみんな軽傷で済んだんだ、よかっただろうよ。そんで市民は全員各学校で避難しとるぞ」

 「そうですか」


 無関心そうに友は呟いている。コイツ本当に他人に興味ねーな。


 「先生、なんでオレ達は校門で1時間も待たされたんすか」


 ここで、一切会話に参加しなかったオレが口を開いてみる。この人に言ってもしゃーない事だけど、一応ね。


 「いや、だから魔物にここが襲われてたって言うとるだろーが」

 「え? 1時間も?」

 「そうだ。聞こえてなかったのか? 足音とか」


 マジでか。そんな長期戦だったとは……。


 「いや、何も聞こえなかったすよ。な?」

 「うん。校門の前では何も聞こえませんでした」

 

 オレ達の学校は、校門から体育館までが遠い。しかも、体育館は結構な高さがある。姿は体育館に隠れて見えなかったとして、音だな。巨大生物が暴れていながら無音というのは無い。

 

 「ううむ。なんで聞こえなかったんだ? あんな馬鹿でかい雄叫びを上げていたというのに」

 

 全くの無音だった。まるで、音が消されているかのように――――。


 「……音、消されてたんじゃね」

 「……そうかもしれないね」

 「んん? お前ら分かったのか?」


 オレ達は理解しているが、先生は分かっていないみたいだ。


 「朝の宣告、音止まってたじゃないすか」

 「おお。成程な」

 

 あの音止めは、間違いなく魔法だ。それもオレが今使えるような下級魔法では無いだろう。高難易度の魔法を使える奴、しかも巨体。そんな相手に勝てるのだろうか。


 って何戦う事になってんだよ! もう来ないかもしれねえじゃねーか。マイナス思考ストップ……!


 「しかし、俺達は聞こえてたぞ」

 「範囲が決められていたのではないでしょうか」


 先生の疑問に友が答える。

 その時。

 大地が微かに揺れる。

 

 「これは……」


 先生が、まさかとでも言いそうな顔で、立ち上がった。

 どうしたんすか、と口に出そうとした時。


 轟音が、鳴り響いた。

 

 

 

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