第6話
真咲と成美先生の結婚祝いのプレゼントを買いに行く日の朝になった。
身だしなみを整える。
幼馴染みとはいえ、女の子と二人で出かけるわけだしな。
清潔感が大切だ、ウン。
鏡を見ると……、心なしか、目の周りにクマができているような……。
夕べあまり眠れなかったからな。
「カデンはどうしているんだ?」
髪を整える僕を見ているカデンにたずねた。
「私はおうちで留守番しています。何かあったら心の中で私を呼んでください。挑夢さんの思念派をキャッチして、マッハで飛んでいきますから。そしてバタフライミッションクリアに立ちはだかるどんな障害でも、どんな敵でも粉砕してみせます。挑夢さんは安心して真咲さんとのデートを楽しんでください」
「物騒だな……。カデンの内臓兵器を使うような出来事は万に一つも起きないとは思うけど……。大体これはデートじゃないって。成美先生への結婚祝いの買い物に行くだけなんだから」
我が家の玄関の呼び鈴が鳴った。
「挑夢さん、真咲さんです」
「うん、分かってる」
玄関におもむき、扉を開ける。
幼方真咲が立っていた。
隣同士に住んでいながら、中学入学以降はほとんど一緒に過ごしたことがない。
中学校でも同じ学校だったけれど、登校時間も下校時間もお互いばらばらだったし、土日も一緒に過ごすということはなくなっていた。
学校で見かける真咲は、当然のことながらいつも制服を着ていた。
でも今日の真咲は違う。
白のブラウスにピンクのミニスカート。
頭には大きなリボンを着けていた。
制服のとき、頭にリボンなんか着けてたっけかな?
「よ、よお、おはよう」
自分でも声が裏返っているのが分かる。
なんだか、ものすごく緊張してきた。
「おはよう挑夢。すぐ出られる?」
僕の思いなんか知る由もない真咲は、いたって普通に見えた。
「あ、ああ……」
「そ。じゃ、行こうか――。あれ? その人は……?」
真咲は僕の背後に視線をやった。
「え?」
真咲の視線に促され、後ろを向く。
カデンが僕の後からついてきていた。
「あ、ば……、カデン、一緒に来たの?」
「はい、お見送りに。挑夢さん」
カデンはにこにこしている。
「誰よ?」
じとーっとした半眼で、真咲が僕を見た。
いや、睨み付けたといった方が正解か。
なんで睨まれるのか意味が分からないが……、とにかくここはちゃんと紹介しておかなければなるまい、僕の親戚として。
「や、やあ……、こちらは……、カデンさんといって……。僕の親戚なんだ。ちょっとわけあって、しばらく一緒にうちに住むことになったんだ」
「ふーん……」
何となく真咲が無表情で……、こ、この顔って、なに考えてんだろうな――?
「はじめまして幼方真咲さん。私、挑夢さんの親戚で、難場カデンと申します。これからはお隣同士ですから、よろしくお願い致しますね」
カデンは両手を前にそろえてペコリとおじぎをした。
「あ、あたしのこと知ってるの?」
いきなり名前を呼ばれて、真咲はびっくりしたようだ。
「はい。挑夢さんからは、お隣の真咲さんのお話をいろいろ伺いましたから」
「へ、へえ、そ、そーなんだ」
無表情だった真咲がちょっと笑顔になった。
「今日も二人でお出かけだって、楽しそうに準備なさってました」
「なーんだ、あたしと出かけるの楽しみにしてたの? そうだったの、挑夢」
真咲がいつもの調子に戻ってきた。
いいぞ、カデン、うまく真咲のご機嫌をとってくれて。
それにしてもカデンのやつ、親戚ということで、そのまま苗字を僕と同じ「難場」にしたんだな。
「じゃ、じゃあ、出かけようか、真咲。――カデン、行ってくるよ」
「挑夢さん、真咲さん、行ってらっしゃい」
カデンはにこにこの笑顔でボクらを送り出してくれた。
僕と真咲は連れ立って歩き出した。