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第18話

 愛藤姫乃と映画に行った翌日の月曜。

 登校しようと玄関を出ると、隣の家の玄関の前に幼方真咲がいた。

「あ、おはよう、挑夢」

「あれ、真咲? どうしたの?」

「どうしたのって……、たまには一緒に学校行ってあげようかなって思って待っててあげたんじゃない」

「『待っててあげた』って……、なんか恩着せがましくないか」

「なによ、文句あるの」

「無い無い。まあ、じゃあ、行こうか」

 僕は幼方真咲と連れ立って歩き出した。

「ねえ、挑夢」

「なに?」

「この映画知ってる?」

 真咲はチラシを取り出した。

 映画のチラシだ。

 知ってるも何も……、それは昨日愛藤姫乃と見に行った映画のチラシだった。

 内容は緊張しちゃって全然覚えていないけれど。

「あのさ、そのさ……」

 真咲はなんだか口ごもっている。

「なんだよ」

 大体ずけずけものを言う正確の真咲が口ごもっている姿なんて珍しい。

「えっと……、た、たまたま、映画のチケット二枚もらってさ……、その……、よ、よ、よ、良かったら一緒に見に行かない?」

「え?」

 なんと真咲から映画を誘われてしまった。

 う~ん、これってどういうことだろう?

 単純に映画が見たいってことかな?

 断る理由は……特に無いよな。

 だって、愛藤姫乃と見た時は、全然内容を覚えていないんだから。

 ちまたで評判の映画だったから、もったいないと思っていたんだ。

 どうせなら、ちゃんと見て、内容をしっかり頭に入れたいと思っていた。

 真咲と一緒だったら緊張しなくて済むだろうから、今度はきちんと見られると思う。

「いいよ、ちょうどもう一度見たいと思っていたし……」

「もう一度?」

「いやいや、テレビのCMで見て、一度見たいなーーと思っていたから、ちょうどいいかなーーなんて思っていたので……。行こうよ、映画」

「ほんと? 良かった!」

 真咲の笑顔が輝いた。

 あれ、この感じ……、覚えがあるな。

 そうだ。

 昨日、愛藤姫乃が僕に見せた笑顔が、こんな感じの笑顔だった。

「じゃあ、待ち合わせの時間と場所だけど……」

 真咲が指定したのは、昨日愛藤姫乃と行ったのとは別の映画館だった。

 ちょうど気分転換になっていいよな。


 日曜日になった。

 待ち合わせの映画館の前に行くと、真咲はもう来ていた。

 約束の時間より十分以上早く行ったんだけど……。

 真咲はそれ以上に早く来ていたんだな。

「よ、よお。待たせちゃったかな?」

「あ、ううん……。あたしも今来たとこだよ」

 こないだ成美先生の結婚祝いのプレゼントを買いに行ったときとは違って、今日の真咲はボーイッシュな感じの格好をしていた。

 なんていうんだろう、帽子を被っていて、その帽子の下から見えているくるくるのクセ毛とよく似合っていた。

 この日の映画は……、ちゃんと頭に入った。

 見ている内に、前回見た内容も思い出してきて……。

 なるほど、たしかに評判になるだけの内容だな。

 二度見たから、予習復習ばっちりという感じで、これなら映画の内容を誰かに聞かれても、ちゃんと答えられそうだ。

 映画を見終え、二人でコーヒーショップに入った。

「なんか、こないだに続いてまた二人で出かけて変な感じだね」

「そうか……。そうだな。確かに、中学入ってから後は、前みたいに一緒に遊んだり出かけたりすることなくなってたもんな」

「ねえ、挑夢?」

「あん?」

「またさ……、一緒にこういうふうに出かけたり遊んだりしようよ」

「え? あ、ああ……、いいけど、もちろん……」

「ほんと? やった!」

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