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第1話

 それは突然やってきた。

 その登場により、バラ色だったはず(?)の僕の高校生活は、スパイスの効いた変化球色(そんな色があればだが)に塗りつぶされることになったのだ。


 高校生活にもそろそろ慣れてきた四月下旬の土曜の昼下がり。

 両親は出かけており、昼食を終えた僕は録画しておいた深夜アニメをリビングで見るともなしに見ていた。

 昔は夜の七時台に何本もアニメ番組をテレビ放送していたらしい。

 今からは考えられないことだ。

 アニメといえば深夜。

 それも大体ライトノベルが原作。

 マンガ原作の健全(?)なアニメは、朝か夕方に数本放送されている。

 夜の七時台に何本もアニメ放送がされていたなんて、昔は今と随分時代が変わっていたんだな。

 今の時代はバラエティ番組全盛だから。

 深夜アニメを見るなら今みたいに両親が居ない方が見やすい。

 深夜アニメには、なかなかきわどいシーンも少なくないからだ。

 そういうシーンが始まってしまい、父親ならまだしも母親が同じ部屋にいると、どうにも気まずくなってしまう。

 ちなみに今見ているアニメには……。

 そういうシーンはほとんど出てこない。

 親が居ないこういうときこそ、そういうシーンに出てきてほしいよ。

 そして、親がいるときは、そういうシーンが出てこないでくれると気楽でいい。

 朝や夕方やっているアニメなら、そのテの心配は無いんだけれど、深夜アニメはそういうとこ気をつかうんだよな。

 ま、それはさておき。

 来週からは部活動の仮入部も始まる。

 中学校では一応バスケットボール部だったが、身長も運動能力もそれほど高くない僕は、試合にも出たり出なかったり。

 まあ、あんまりパッとしない中学バスケ部時代を送っていた。

 高校ではどうしよう?

 運動部はやめて文化部にしようかな?

 それともどこにも所属しないで帰宅部とか……。

 学校に届けを出せばアルバイトだってできるし、何も部活をやるだけが高校生の放課後の過ごし方ではあるまい。

 まあ、といったようなことをつらつらとなどとぼんやり考えながらアニメを見ているたところ――。

 ピンポ~ン。

 玄関の呼び鈴が鳴った。

 来客か?

 僕はアニメを一時停止にし、ソファを立ってリビングの壁の小型モニターを覗いた。

 画面に映っていたのは、知らない女の子だった。

 茶色い長い髪。

 光線の加減なのか銀色にも見える。

 見たことも無い変わった形の髪飾りを頭のあちこちにいくつか付けていた。

 服はこれまた銀色に輝くワンピース。

 やはり服のあちこちに、丸だの四角だの三角だのの、変わった装飾が付けてある。

 SFアニメに出てくる未来の人間が着ていそうな、そんな服。

 そんな銀色の女の子が、口を開いて発した第一声は――

「難場さんはオタクですか?」

 ……。

 はあ?

 いきなり何を言い出すんだこの子は?

 オタクかって、僕のこと?

 そりゃ確かに僕はマンガやアニメが好きだけれど、中学のときは運動部だったし、そんなインドアタイプのオタクじゃないぞ。

 僕ははっきり言い返してやった。

「難場はオタクじゃありません!」

 僕の返事に、モニターの女の子はちょっとびっくりしたような顔をした。

「でも、表札に『難場』って書いてあるんですが……?」

 なんだよ、表札読んだんなら、わざわざ聞くことはないだろ。

「あの、それじゃ、『難場さんはオタクですか?』じゃなくて、『難場さんのお宅ですか?』って言えばいいんじゃないですか?」

 僕は言ってやった。

 なんで訪問される側が、訪問する側に、訪問の仕方をレクチャーしなければならないのか意味不明ではあったが。

「あ、そっかーー。すみません。助詞の用法に誤りがありました。では、訂正しますね。難場さんのお宅ですか?」

 女の子はにっこり笑って言い直した。

 「助詞」だの「用法」だの「訂正」だの、言い方の堅苦しい子だな。

「そうですけど?」

挑夢いどむさんはいらっしゃいますか?」

 挑夢というのは僕の名だ。

 僕のフルネームは難場挑夢なんばいどむ

 どのような困難な場面に出くわしても、果敢に夢の実現に向かって挑んでいってほしいという願いを込めて名づけたと両親から聞いている。

 「いどむ」だなんて、あまり聞かない珍しい名前だと思う。

 今、世間で言われている、パッと見て読み方の分からない“キラキラネーム”だの“DQNネーム”だのといったいう部類に当てはまる名前だろう。

 「難場」は苗字だから仕方ない。

 けれど、名前の方は「挑夢」じゃなくてもっと平凡な、普通の、よくある、ありふれた、目立たない名前にしてほしかった。

 僕は普段からそう思ってやまないのだ。

 そんな僕の名前「挑夢」を、その女の子は呼んだ。

 同年代の女の子に名前を「さん付け」で呼ばれたことなど無い。

 そんな新鮮な刺激を受けたためなのだろうか。

 僕の脳は、一瞬の間に以上のようなことをいろいろと頭に思い描いてしまったのだ。

「挑夢は僕ですけど……」

「よかった! おうちにいてくださって……。私、カデンと申します。世界を滅亡から救いに来ました」

 ……。

 なんだあ? 世界を救うって?

 新興宗教の勧誘?

 せっかく親に気兼ねすることもなく、録画しておいた深夜アニメを見ながらくつろいでいた土曜の昼下がりの至福のひとときを、こういうセールスだの勧誘だので邪魔されたくない。

「あの、悪いですけど……、そういうの興味ないんで……」

 僕はドアホンモニターのスイッチを切ろうとした。

「あ、待ってください、待ってください。宗教の勧誘とかじゃありません」

 なんだこの子、僕の心が読めるの?

 まるで、スイッチを切ろうとした僕の指の動きを察知したかのような慌てた様子で僕を止めた。

「じゃあ、何の用ですか?」

「世界を滅亡から救う用です」

 ……。

「だから……、そういうのは興味ないって……」

「これを見てください!」

 女の子は、自分の両手を両頬に添えるとそのまま上に上げた。

 それがどういうことかお分かりいただけるだろうか。

「どわわわわあああああーーーー」

 僕はびっくりして大声を出していた。

 なぜって、女の子の上げた両手の上に女の子の顔がのっていたからである。

 女の子は、人形の頭みたいに、自分で自分の頭部をスポッと外し、高々と頭上に――いや、その「頭」を持ち上げたのであるから肩上に――、掲げて見せたのである。

 僕はあっけにとられてしまった。

 ドアホンのモニターを見たまま僕の体はフリーズしている。

 言葉も出ない。

 女の子は頭部を元に戻した。

 時間にすれば十秒もなかったのだろうけれど、ずいぶん長い時間、女の子が頭を外していたような気がした。

 通行人や近所の誰かに見られなかっただろうか……?

 僕はちょっと心配になった。

「分かっていただけましたか?」

「な、なにが……?」

 分かっていただけましたかって何のことだ?

 少なくともこの女の子が人間じゃないことは分かった。

「私が人間じゃないことは分かっていただけましたよね?」

 ああ、やっぱりそのことだったのか。

 女の子は言葉を続けた。

「実は私は未来の世界から来たロボットなんです。世界の滅亡について難場挑夢さんに重要なお話があり、やって参りました」

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