表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死天使の覚書  作者: 御月 雪華
死天使の覚書
6/14

覚書6.桜の花が咲いたなら

 桜色に染まった丘を君と二人で歩く。

 左手と右手を確り繋いで、桜色の欠片が舞い散る中をゆっくり歩く。

「綺麗ねぇ」

 彼女がうっとりと左手を差し伸べる。

 気紛れに揺れる花弁は、彼女の指先を擦り抜けて風に舞う。

 くすくす。

 くすくす。

 彼女が癖の無い髪を揺らして楽しそうに笑う。

 僕もそれで楽しくなる。

 彼女が泣くと悲しくて。

 彼女が笑うと嬉しくて。

 ああ、本当に。

 僕は、君が―――

「ねぇ、カイン。綺麗ねっ」

 彼女が振り向く。

 長い髪がふわりと舞い上がり、柔らかく肩に落ちる。

 うん、綺麗だね。

 桜色に染まる君は、とてもとても綺麗だね。

「うん、とても」

 彼女が淡く染まるように微笑む。

 綺麗な綺麗な愛しい僕の桜【キルシェ】。

 君に伝えたいことがある。

 ずっとずっと昔から、君に伝えたいことがある。

 絶対、必ず、君に伝えると決めていることがある。

「キルシェっ」

「? なぁに?」

「僕は、君が―――」

 薄紅色した桜の花弁が鮮やかに空気を染め上げる日。

 僕の一世一代の求婚を、愛しい彼女と桜だけが聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ