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死天使の覚書  作者: 御月 雪華
死天使の覚書
3/14

覚書3.桜の花が咲く頃

 帰らなきゃ。

 彼女が待ってる。

 絶対に帰るって約束したんだ。

 絶対に、必ず帰るって誓ったんだ。

 帰らなきゃ。

 帰らなきゃいけないのに。

 瞼が酷く重い。

 身体が指先からどんどん冷えていく。

 きっと、目を瞑ったら二度と開かないんだろうな。

 帰るって、約束したのに。

 聖誕祭の夜は一緒に祝おうって約束したのに。

 ゴメン。

 ゴメン……

 帰れないかもしれない。

 ゴメン。

 ゴメン―――

「諦めちゃダメだよ」

 ?

 君は?

「ねぇ、諦めないで。

 まだ『命の灯【ひ】』は消えてない。

 だから、諦めちゃダメ」

 君は、誰?

 彼女に似てる―――

 君は、誰。

「わたしは        。

 ねぇ、もうすぐ会えるの。

 もうすぐ会えるから。

 ねぇ、一緒に帰ろう。

 この手を取って。

 ねぇ、一緒に帰ろうよ。

 一緒にあの温かいお家に帰ろう」

 ―――うん。

 うん。

 帰ろう。

 温かい場所に。

 帰りたい場所に。

 待っていてくれる人がいるところに帰ろう。

「うん。うん。

 帰ろう    」

 うん。一緒に帰ろう。

 彼女が待ってる。

 だから、一緒に帰ろう。

「うん。

 一緒に    のところに帰ろう。

     」

 名前、考えなきゃ。

 彼女と一緒に、君の名前を。

 優しい名前にしよう。

 温かい名前にしよう。

 綺麗な名前にしよう。

 待ってるよ。

 彼女と一緒に君を待っている。

 帰るから。

 必ず、絶対、帰るから。

 彼女の為に。

 君の為に。

 オレの為に。

 きっと、帰るから。

 だから、また会おう。

「うん。

     。

 待っててね。

     と一緒に待っててね。

 桜の花が咲く頃に、二人に会いに生まれるから」

 うん。桜の花が咲く頃にまた会おう。

「うん。

 またね」

 うん。また―――




 桜の花が咲く頃、盗賊退治で大怪我を負い九死に一生を得た兵士は、仲間に支えられて帰った家で妻と一緒に新しい命を向かえた。

 生まれた子は、母親に良く似た女の子だった。

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