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死天使の覚書  作者: 御月 雪華
そして、今も続いていく
13/14

黒翼と花の円舞曲

「ボス――! ボース―!! ボース、ボス、ボス、ボース―!!!」

「ええいっ!! 猫の仔を呼ぶように連呼するなっ!!」

 バタンっともの凄い勢いで執務室の扉を開け放った漆黒の少年に、これまた漆黒の男が青筋を浮かべて怒鳴るのが、この執務室に二人が揃った時の標準だ。問題無い。

「そんなことどうでも良いんですっ!!」

 そして、やはりいつもの如く上司の怒声などどこ吹く風でズカズカ執務室に入って来た少年は、いつも勝手に座る布張りの長椅子も、いつも勝手に使用する茶器も、いつも勝手に物色する酒瓶も無視して、珍しく双眸をキラキラと輝かせて上司を見やった。

「『花』が咲いたんですっ!!」

 否、全然いつも通りだった。頻度が極端に低いために遭遇回数が少ないだけで、いつも『花』が生まれ変わって来た時はこんな感じだった。

 ちょっと遠い目をする上司を相変わらずキラッキラした瞳で見つめ、少年は弾んだ声で叫んだ。

「休暇くださいっ!!」

「その前に仕事はどうしたっ!!」

「だーかーらー、小さな子供を連れて来るのは嫌だっていつもいつも言ってるでしょう?」

「おーまーえーはーーーっ!! いつもいつも言ってるがなっ、仕事を選り好み出来る立場とでもっ!!」

「そんなことより休暇っ!! 休暇くださいっ!! 休暇っ!!!」

「うがぁぁぁぁーーーーっ!!」

「………ボス、そんなに興奮すると血管切れますよ?」

「だっれの所為だぁぁぁーーーーっ!!!!」

 還る魂を迎える〈冥の門〉の守人の執務室では、今日もいつもと変わらぬやり取りが繰り広げられ、闇の精霊王はやはりいつもの如く部下の少年に振り回される。しかし、それでも、友であり慕わしき隣人である魔力の民の屈託のない笑顔に、今日も結局、闇の精霊王が折れるのもいつものこと。

「~~~~っ!!!! とっとと行って来いっ!!」

「有難うございますっ、ボス!」

 ベシっと投げた休暇受理書を受け取って少年は弾む足取りで駆けて行く。

 何だかんだ言っても魔力の民にはどうしても甘くなる精霊達は、少年を微笑ましそうに眺めつつ、疲れた表情の上司にそっとお茶を差し出すのだった。




   ―――ねぇ

   ―――ああ


   ―――なんて、あなたが居る幸せよ―――




「死天使の覚書」END.

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