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死天使の覚書  作者: 御月 雪華
遠い昔の物語
11/14

君ガ忘レタ物語3.二輪目の花

  ―――何でもあげる。

  ―――何でも。

  ―――この身は貴女の為だけに存在するから。

  ―――命も何も惜しくは無い。

  ―――何だってあげる。

  ―――何だって……



「オギャァオギャァ」

 元気な赤ん坊の声が室内の空気を揺らす。

 その瞬間、張り詰めていた空気が糸の様に緩み、喜びとほっとした溜息が場を満たした。

「ね、私の赤ちゃん、見せて」

 母親の掠れ、疲れた声は、喜びに震えていた。

 産婆はにこにこ微笑みながら彼女が良く見えるように、そっと産着に包まれた小さな小さな命を抱き上げ、彼女の傍らで身を屈める。

 声も無く生まれたばかりの小さな命を見つめている母親の目には、無上の喜びと愛しさが満ちていて、心の中に収まりきれず身体の外にまで溢れ出した感情は、涙の形をとって少しやつれた白磁の頬を濡らした。

「おめでとう。良く頑張ったねぇ。ほら、ご覧。元気な双子だ」

 産婆は腕に抱いていた双子の赤ん坊を丁寧に、寝台に横たわる母親の両隣に寝かせた。母親は疲れた身体をゆっくり横向かせると、恐る恐る伸ばした指先で外気に晒されたばかりの柔らかな頬に触れる。

「じゃあ、私は男どもに無事生まれたと報告してくるよ。きっと今頃、冬眠前の熊の様にあっちうろうろ、こっちうろうろしているだろうからねぇ」

 産婆はその様を想像してけらけら笑いながら、同じくくすくす微笑む母親に器用に片目を瞑って部屋を出て行った。

 産婆が隣の部屋に顔を出すと同時に、夫の慌てた声がこの部屋にまで響いてくる。普段、理知的で穏やかな、何事にも動じない医者の顔をしているだけに尚更可笑しい。そして、自分は本当に愛されているのだと実感する。

 バタンッ。

 扉が大きな音を立てて開かれた。

「エビネ!!」

 聞き慣れた愛しい男の声が自分の名を呼び、産婆に背後から怒鳴られながら一目散に駆け寄って来る。

「エビネっ。エビネっ」

 寝台に横たわったままの妻を負担をかけないように両の腕で抱き締め、肩に顔を埋めた。

 それしか知らないかのように繰り返し己の名を呼ぶ夫に妻は優しく微笑み返し、片手を持ち上げ夫の漆黒の髪を梳いた。妻の優しい手の感触に目を細めた夫は埋めていた肩から顔を上げ、涙に潤んだ瞳で微笑んだ。

「ありがとう、エビネ。お疲れ様」

「ツワブキ」

 此方も、目に涙を浮かべ夫を呼ぶ妻。二つの影が極自然に近付き、一つに重なる。

「ツワブキ、見て。私たちの赤ちゃん。ちっちゃくて可愛いでしょう?」

 頬を紅く染め、照れ隠しに悪戯っ子の笑みを浮かべる妻の傍らで、この騒ぎにも動じず健やかな寝顔を見せている我が子達の小さな小さな手をチョンッと突付つけば、信じられないほど強い力でその指先をギュッと握られた。

「うわぁ!」

 思わず感嘆の声をあげるツワブキの表情はまるで子供で、感激に胸がいっぱいと言った様子に妻は幸せそうに微笑む。

 『小さな小さな子供【赤ん坊】』と、『大きな子供【夫】』を見比べてくすくす笑っていた妻は、肝心な事をすっかり忘れて赤ん坊に夢中になっている大きな子供の額を小さく小突いた。

「ツワブキ、この子達の名前考えてくれた?」

 妻の問いに漸く大事な事を思い出した新米の父親は、ばつが悪そうに前髪をくしゃりと掻き揚げ、そして、照れ臭そうに告げた。

「ん。その、さ。カインとデージーってのはどうかな?」

 思いっきり照れて真赤になりながら言ったツワブキは随分可愛らしく、思わず目の前の最愛の男を手招き、屈みこんだ頭に手を回して唇に音を発てて接吻した。

「良い名前だと思う。ありがと、ツワブキ」

「こっちこそ、ありがと、エビネ」

 額と額を合わせくすくす微笑みあっていた万年新婚夫婦の直ぐ傍から、不意に吃驚するほど大きな泣き声が響き渡った。

「デージー!?」

「どうしたの?」

 小さな小さな身体からは想像もつかない音量で泣き出した我が子を、双方ともに危なっかしい手つきでおろおろしながらあやす。鳴き声に飛んで来た産婆がその拙いなんてものじゃない手つきに呆れた視線を注ぐが、それでも温かい眼差しで、何時でも助け舟を出せる距離から彼らの奮闘振りを見守った。

 漸く、お腹が空いていたのだと気付いた母親が母乳を与えている横で、彼女の背を支えていた父親がふと気付いて声をあげた。

「あれ? この子」

「なぁに? どうしたの?」

 ツワブキがじっと我が子を見つめているのを見て、エビネもどうしたのだろうと視線を辿る。二人が見守る中、一心不乱に母乳を吸っていたデージーを泣きもせずにじっと見つめていたカインの背中に不意に漆黒の翼が翻った。

「あら、まあ……」

「翼、だ」

 声に、眼差しに、驚きが滲む。けれど、嫌悪や、畏怖は微塵も無い。

 生まれたばかりのまだ濡れた翼を懸命に動かし、お腹いっぱいになってまたすやすや眠りに就いたデージーの元にそっと飛び寄り、とても優しい眼差しで彼女を見つめ続ける彼は、デージー以外興味などないと言わんばかりに一瞬も視線を逸らす事なくじっと見つめ続けていて。

「デージーが大好きなのね、カインは」

「きっと仲の良い兄妹になるな」

 ツワブキとエビネは顔を見合わせ、優しく微笑んだ。




 ※※※※※




「本当に、君らは仲が良いねぇ」

 普段は趣味で風景画を描いている老人は、偶には人物画も描こうと庭で遊んでいた隣家の子供達に被写体を頼んだのだが、そのあまりの仲睦まじさに思わず感嘆の声を上げた。

「本当に、兄妹というより恋人同士だよ。コレは」

 彼の苦笑混じりの台詞に、目の前の画帳を見た十人中十人が大きく同意するだろう。

 画帳の一枚に走り描きされた幼い二人はそれほどに仲睦まじかった。日溜りみたいに笑っている少女の隣では、ちょっとだけ背の高い少年が大人びた表情で少女だけを見つめて微笑んでいる。少女と少年は一対の翼の如く、傍に居るのが当たり前のように寄り添い合っていた。

 いつでも少女の傍らにいて彼女を護る少年の存在は、この小さな片田舎の村で微笑ましく見られていた。いつも誰にでも丁寧な言葉使いと物腰の少年は誰にでも分け隔てなく優しかったが、優先順位は何があろうとデージーが一番で、何時でも何処でも優しい眼差しを注いでいた。

「退屈だったろう。ありがとう、被写体を引き受けてくれて。コレは記念にあげるよ」

「ありがとう、お爺さん」

 丁寧に切り離した画帳の一枚をデージーは笑顔で受け取ると、大切そうに胸に抱き締めた。

 その様子を見て、もう少し丁寧に描けば良かったかと一瞬思ったが、まだまだ遊びたい盛りの少女に長時間じっとさせているのも酷だろう。老人は笑いながら少女の黒髪を撫でた。

「今日はこれから何処かに行くのかい?」

「うん。午後からお父さんのお使いで、裏の山まで薬草を摘みに行くの」

 頭を撫でる大きな掌に、くすぐったそうな顔をしたデージーがにこにこと微笑む。彼女の言葉に、隣人は少しだけ心配そうな目をした。裏の山で危険な生物を見たものはまだいないが、子供達だけで大丈夫だろうか?

「そうかい。気を付けるんだよ」

 老人の言葉に無邪気に頷く少女の傍らで、少年が真剣な表情でこくりと頷いた。老人はその様子を見て安心すると、笑顔で子供達を見送った。




「ねぇ、カイン。こんな事言ったら笑うかもしれないけど。私ね、もうずっと前にも、カインとこうやって一緒にいた気がするの」

 裏山で薬草を摘みながら、ふとデージーが呟いた。

 カインが顔を上げて彼女を見ると、少女は此処ではない何処かをその瞳に映しているように、遠い眼差しをしていた。

「ずっと、ずっと、生まれてくるよりも前にも……変でしょう?」

 透き通るよな眼差しで遠くを見つめる少女を少年は思わず抱き締めた。今腕の中にいる大切なヒトが夢幻の如く消えてしまう気がした。もう二度と失いたくはないのに。

 固く抱き締めるカインにデージーは少しだけ困ったように微笑んだが、自らもそっと腕を伸ばして少年の背を抱き締めた。


 ―――とくんとくん。


 鼓動を刻む二つの心音が一つに重なる。その安心感を言葉にする事なんてきっと出来ない。どれだけ言葉を紡いでも、きっと誰にも理解できない。

 二人で一つ。

 それは、一緒に生まれてきた二人だからこそ、感じられる安らぎ。絶対の安心感。

 暫く抱き合っていた二人は、名残惜しげにどちらからともなく離れた。

「私、あっちの方、探してくるね」

 デージーは頬を赤く染めながら、くるりと明後日の方向を向くとパタパタと駆けて行った。カインはその背が視界から消えるまで目で追っていたが、結局、追いかける事無く自分はその場に残って薬草摘みを再開する。

 照れた彼女が目の前から逃げ出す事はよくあったし、視界から消えても彼から離れたところには行かない事も分かっていた。だから、カインは安心していた。それをいったい誰が責められるだろうか。

 数秒後に起こる悪夢をこの時点で予見できたものなど、一人もいなかった。




 カインの前から逃げ出したデージーは、彼の姿が視界から消えると足を止め、ほっと安堵の息を吐いた。

 彼との抱擁に何時までたっても慣れず、何時だって我に返った途端、恥ずかしさに居たたまれなくなって目の前から逃げ出してしまう。

「ああ、もう。またやっちゃった」

 そして、逃げ出した事に自己嫌悪を覚えるのだ。何時でも、「次こそは逃げ出さずにいるぞ」と決意を固めるのに、毎度毎度成長無く脱兎の如く駆け去ってしまう己に好い加減愛想が尽きそうだ。

「どうしてこうなのかなぁ」

 小さく呟き溜息を吐く少女の背後に、忽然と人の気配が現れた。それもどす黒い悪意の気配。

「誰!?」

 突き刺さる悪意に素早く振り向いた先にいたのは、何の変哲も無い5、6人の男達。特徴と言えるべきものは、山の中に立っているにはそぐわない白を基調とした見慣れない服と、己に向けられる心の臓が凍り付きそうなほどの憎悪。

 一人の男が嫌悪の眼差しで、唾棄するように呟いた。

「まだ、このような女にかかずらっておいでなのか」

 やれやれと言わんばかりに肩を竦めた男は無造作に片手を翳し。

 ―――一筋の光が、少女の胸を貫いた。



   

「デージー!!」

「漸く見つけました。カイン様」

 異変に駆けつけたカインに、男達の一人が慇懃無礼に声をかけた。

「もう宜しいでしょう? 何時までも勝手な行動を取っていないで国にお帰り下さい。貴方様は我らが祖国の女神の寵愛者なのですから」

 この男が最も立場が上なのか、外面だけは恭しく告げる様に吐気がした。この男は、否、こいつらかつての女神の神官どもは、年端も行かない少女を傷つけておいて欠片も良心が痛まないのだろうか。神が神なら、仕える者も仕える者だ。相変わらず、いけ好かない連中が雁首そろえている。

「帰れ? そんな要求に何故僕が従わなければならない? 寝言は寝て言うといい。ああ、それともあれかな? 狂った女神の手下も狂人揃いとか? 別の大陸にまで御苦労なことだ」

 男達に対峙しながら、カインが彼らの神経を逆なでする科白を放つ。男達はデージーの直ぐ側に立って、全員が手を翳していた。何時でも彼女に止めをさせるという脅しだ。男達には容易に隙が見出せず、目の前で倒れている少女になかなか近づけない。

 見ている間にも、少女が倒れ付す地面に紅い水溜りが広がっていく。男達を挑発して少女から意識を逸らせる為、カインはさらに言葉を放った。

「大体、お前達の信仰する女神は僕に殺されてもうこの世にいないだろうに、死んだ女に義理立てでもしているのか?」

「ご安心下さい。我々、神官が女神の指示にて、彼の御方の一部を万が一の為に封じていたのです。女神の力を『取り込んだ』貴方様さえいらっしゃれば、女神は直ぐにでも完全に蘇えられます。ですから、ぜひ我々と同行して欲しいのです」

 しかし、男が余裕の笑みで応えた台詞は、却ってカインの激情を煽るものだった。

「ふざけるな。僕が何故、あの女の為に僕の意思を曲げなければならない。冗談じゃないっ」

 噛みしめた奥歯がギリッと音を立てて軋む。しかし、イラつきを何とか抑えようとする少年の努力を嘲笑うかの如く、男達の一人が少女を侮蔑の眼差しで一瞥し吐き捨てた。

「こんな女に何時までかかずらっているおつもりです。全く、生まれ変わってまで男を惑わすとは、魂からの淫魔ですね」

 男の侮辱にかっと全身が熱くなり、カインが吼えた。

「そこをどけっ!!」

 彼の背で一対の漆黒の翼が翻った。

 激情のまま放った力が男達を吹き飛ばし、さらには倒れた少女までが力に煽られ木の葉の如く空に舞い上がった。

「デージーっ!!」

 カインは翼を羽ばたかせると、少女が地面に激突する前にそっと優しく華奢な身体を受け止めた。

 少女の血に染まった痛々しい姿にさらなる怒りに駆られるカインの周囲で、上空に煽られた男達が次々と聞くに堪えない音と共に地面に叩きつけられていく。地面に激突した男達は、ある者はあらぬ方向に首を曲げ、またある者は折れた肋骨に肺を突き破られて絶叫する。

 しかし、カインはそんな男達の姿に溜飲を下げるどころか、痛みに呻く男達にさらに容赦ない攻撃を加えていった。

「僕の愛する女を侮辱する事は僕が許さない。僕が誰を愛そうと、僕の自由だ。お前達の指図など受けない」

 追い討ちの一撃を放つ怒れる少年に、耳障りな笑い声が届いた。

「またも女神を拒むか。しかし、その小娘ももはや助かるまい。精々悲しみにくれるがいい」

 中心格の男が血を吐きながら嘲笑う。カインは男を一瞥し、「何を馬鹿な」と口の端を吊り上げた。

「デージーが生きるべき命なら『此処』にある」

「何、を……まさ、か!?」

 親指でトンッと己の心臓を差す少年に、男が驚愕に目を見開く。カインは男の表情に意地悪く笑った。

「これで、お前達の女神は蘇らない。一石二鳥だ」

 邪魔はさせないとばかりに、最後まで生き残っていた男に止めの一撃を放って全てを塵と化すと、カインは倒れ伏すデージーをそっと抱き上げ、双眸を閉じ静かに唇を開いた。

 静けさを取り戻した場に、歌うような詠唱が響き渡る。

 少年の唇から零れ出す長い長い詠唱に、周囲の大気も、木々も、空間までが震えた。

「もう二度と、彼女を殺させない」

 やっと、会えたのだ。あの日、力及ばず失ってしまった命を。愛しい女【ひと】を。

 ―――モウ二度ト、理不尽ニ奪ワセハシナイ。 




「大丈夫。デージーは死なないよ」

 此方を覗き込みながら、カインが穏やかな表情で静かに告げた。

 気が付けば、目の前に愛しい少年が居て、地面に片膝をついた彼に背を支えられていた。

 少女の血の気の失せた頬を両手でそっと包み込み、唇が触れるほど近くで囁く。

「命の譲渡が成立したから。何の代償も無しでとはいかないけど」

 何時もとはまるで違う、何処までも希薄な存在感。幻の如く儚い気配。

「何を言ってるの?」

 嫌な予感がした。暗く冷たい予想がひたひたとデージーの心を覆って行く。これ以上聞きたくない。聞いてはいけない。

 思わず、もう殆んど残っていない力を振り絞って両手で耳を塞ぐ。

 恐かった。どうしようもなく恐かった。彼の口調、仕草、声音。その全てが喪失の予感を孕んでいた。

 カインは何も聞くまいと両の瞼をしっかり閉じ、両手で耳を塞ぐ少女の手に己の手を重ね、乱暴にならないように、しかし、絶対の力を込めて引き離す。そして、その耳元に唇を寄せ、殆んど吐息で出来た声で囁いた。

「代償は、譲渡者に関する全ての記憶。あらゆる存在の僕に関する記憶」

「っっっ!!!?」

 声にならない叫びをあげ、デージーは目を見開いてカインを見つめた。喪失の恐怖と悲しみに、少女の澄んだ宵闇の瞳が陰って行く。

 彼女の様子をじっと見つめていたカインは、ふっと安心させるように瞳を細めた。それは、彼女が一番好きだった彼の優しい微笑み。その微笑のまま、彼は真摯な声で告げた。

「生きて。生きて幸せになって。デージーにはその権利がある」

 それは、願い。

 それは、祈り。

 それは―――

 少年の望みを最後に、抗いきれぬ力に引き込まれるように少女の瞼がゆっくりと落ちていき、その華奢な身体が屑折れる。その身体を支え、静かに地に横たわらせた少年は愛しさを宿した瞳で少女を見つめ、そっと手を伸ばし、頬を伝う涙を拭った。

「どうしてかな。今なら、あの日、彼女の言っていた言葉の意味が良く分かる。そう、デージーが幸せだと嬉しい。それは―――」

 ふわりと少年は微笑む。優しい、優しい、大気に溶けて行くような透明な微笑み。

「どうか、幸せに」

 少女の涙に濡れた指先が急速に彩を無くし、消えていく。

 脚。

 腕。

 腹。

 胸。

 翼。

 そして、双眸。

 まるで初めから何も存在しなかったかのように、世界から少年を構成していた全てが消滅していく。

 そう、一欠けらも残す事無く―――

 最後に残った意識の片隅で、何時かの『彼女』の言葉が響いた。

 

 ―――貴方が幸せだと嬉しいの。それって、私が―――

 

「ああ、そうだな……貴女が、幸せだと……嬉、しい………デージー……ビオラ……我が愛しい妻……君を………」

 

 ―――アイシテイル―――

 

 最後に紡がれた声なき声だけが、風に攫われ何処へとも無く散って行った。





  

   『ねえ』

   ―――何?

   『幸せでいてね』

   ―――何? 行き成り。

   『貴方が幸せだと私が嬉しいから』

   ―――?

   『貴方が幸せだと嬉しいの。それって、私が貴方を愛してる、って事よ』

   ―――……

   『だから、幸せでいてね』

 


 

   ――ダカラ、ドウカ幸セデイテ―――

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