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ミュイ・ヴィオレッタの生き方 上

人としての能力は並、送ってきた人生には物語のような煌びやかさはなく誰もが過ごしたことのあるような日常を水で伸ばしたようなそんな普通の日々を過ごしてきた。

そんな私の人生にもたった一つの自慢をあげるとするなら_目の前にいる輝かしい美貌の持ち主が私の婚約者であるということよね。


「ミュイ?ねぇ聞いてる?」


「えぇ、もちろん聞いてるわよ。ラルク」


目の前に座って疑うような視線を向けている男は、私の婚約者ラルク・アルホーン。しかもなんと一年後には婚姻の義の日取りも決まっている。私の人生には似合わない、物語に出てくるような王子様さながらの金髪に国宝級の美貌を携えている。

まぁ、実際に国王の息子であり三男だったことで王位継承権はとっくに破棄したそうだがそれでも高貴な血筋であることに変わりはない。

なぜそんな人物と平凡な私が婚約を結ぶことになったのかといえば……………偶然よね。

たまたま変装して一般貴族として夜会に来ていたラルクとたまたま話が弾んでたまにお茶を一緒にするようになった頃、婚約しようと言われ悪い気はしなかったので了承した。

その後、届いた婚約の契約書に押されていた判子が王家のものだった時はほんとに驚いたけど……


「それじゃあ明日は適当に街をぶらぶらした後その噂の店に行ってみよう」


「そうね、やっと噂の雲のお菓子を食べれるなんて明日が待ち遠しいわ!」


明日はそんな彼と久しぶりの二人きりで街にお出かけだ。ラルクが身分を明かしていない頃はたまに街におりてフラフラと遊んでいたが、最近はめっきり行っていなかったので楽しみだ。

なんでも砂糖だけを使ったお菓子で棒に巻き付けて完成品はまるで空に浮かぶ雲のようだと社交界でも噂になっていたお菓子を食べに行けるのだ。

どうにもそのお菓子は注文などができないようで直接行って食べるしかないのだ。


「まったく、相変わらずお菓子が好きなんだな」


一体どんなお菓子なんだろうと思考をめぐらせていると、私の表情から何を考えているのかを察したラルクが苦笑している。


「ラルクだって好きでしょう?いつもより顔色が明るいわ」


しかし付き合いも長いんだから私にはわかる。

ラルクの表情はいつもより明るい、あんな呆れたみたいな顔しているけどラルクも噂のお菓子を食べれることが楽しみなんでしょ?

ラルクの思考を読み取り、ふふんと笑っているとラルクは何かボソボソとつぶやく。


「いや、それは久しぶりの…デートだからで…」


「ごめんラルク、今なんて言った?」


「なんでもない!明日、寝坊しないよう今日は早く寝ろよ!」


ラルクにしては珍しい小さい声だったので聴き逃してしまった、それを聞き直そうとしたら顔を真っ赤にしてそんな捨て台詞とともに急に帰ってしまった。


「そんな図星だったからって恥ずかしがらなくてもいいのに……」


颯爽と走っていくラルクの後ろ姿を見ながらため息をつきながら心を落ち着かせる。

明日は久しぶりのデート。もちろん雲のお菓子は楽しみだけど、そんなことよりも久しぶりに二人で出かけられることが凄く嬉しい。その事を考えてしまうとものすごくだらしない顔になりそうで、その事がラルクに知られてしまうのが恥ずかしくてつい見栄を張ってしまった。


「ふふふ、私もラルクのこと言えたものじゃないわね」


火照った両の頬を手で覆いながら笑っていると、ふと壁にかけられた鏡が目に入り、鏡に写った自分の顔を見て胸が痛くなる。

私は、彼に秘密にしていることがある。

私と彼の関係は婚約者で、既にお互い好きだと気持ちも通じあっている。お互いの趣味も好きな食べ物も嫌いな食べ物も嫌いなことも隠し事は何も無いけど、唯一、彼に言えないでいることがある。

私は___私が彼に抱いているこの気持全ては晒すことが出来ない。愛と言うには重く、ドロリとしていて、叶うことなら彼の全てが欲しい、彼の持っている表情全てが見たい、彼から発せられる言葉だって全て私が受け止めたい、私以外のものを見ないで欲しい。そう思ってしまうのもきっと私の人生に突然現れた普通とはかけはなれた彼だったからだろう。他の誰であってもこうはならなかったはずだ。

彼が私に抱いているのは至って普通の愛情で私のそれとは全く別物。

そんな、粘度の高い愛を彼を見せることはできない。見せてしまえば彼は離れていってしまうから。



大丈夫、ラルクが隣にいてくれるだけで満足よ。これ以上求めるのは贅沢すぎるわ……


「さ、明日も早いんだし早く寝れるよう準備しなきゃね」


考えれば考えるほど沈みそうになる心を断ち切るよう立ち上がり屋敷に戻る。

ラルク明日はどんな格好で来るのかしら?

その時にはもう暗い部分は身を隠し、楽しみな明日のことで頭がいっぱいだった。



今日はずっと楽しみにしていたラルクと街でデートの日。目が覚めてからラルクが来るのが待ちきれなくてずっとソワソワしてしまっている。

そんな私の様子に両親も使用人も生暖かい視線を向けてくるので少しばかり居心地は悪いがこの後のことを考えたらそんなことは気にしていられない。

もう何度もメイクはチェックしたし、洋服も確認した。準備万端のまま部屋で待っていること数時間扉がノックされる。


「おはようミュイ、俺だ。ラルクだ。用意はできてるか?」


扉越しに愛しいラルクの声が聞こえて今にも扉を勢いよく開けようとする自分の体を抑えて、深呼吸をして気持ちを落着けてから扉を開く。


「おはようラルク、思ってたより早かったわね」


嘘だ、本当は早く来てとずっと思ってた。ただそんな私の内心は見せることなく、あくまで落ち着いて普通に接する。


「早いに越したことはないだろ?ほら、早く行こうぜ」


「ええ」


そう言って私の手を引いて歩くラルクの後ろ姿が揺らめいて見えた気がして、目を擦って見直せばいつものラルクの後ろ姿があった。

ずっとそわそわと待っていたからぼーっとしちゃったのかしら?せっかくのデートなんだからそんなことしてちゃもったいないわよね。

気持ちをリセットして今日のことに集中しよう。




街は久しぶりに来たが相変わらず賑わっていてどこかしこから色んな音が鳴り響いている。


「とりあえずお店は昼からだし、適当にその辺歩いてみる?」


「そうだなー、あっ!前に行った雑貨屋にでも行ってみないか?」


以前街におりた時に行った雑貨屋は店主が世界中を旅しながら交流を広げたそうで見たことないものばかりで見るだけでも楽しかった。


「いいわね!それじゃああっちね」


はしゃいでいた、久しぶりのデートが嬉しくてラルクの隣を歩けているのが幸せでつい気持ちが昂ってしまった。

歩くラルクを走り抜いて大通りに出た瞬間私の体は強い衝撃に襲われた。何が起きたのか分からないまま浮遊感を感じながら映る視界の中、驚きと絶望を宿した顔で私を見ながら走り寄るラルクの姿。


私…空を飛んでる……?

あぁ、ラルクが見たことの無い顔をしているわ……


何が起きたのか分からない、けれどもうラルクの顔を見れるのもこれが最後だということは何となくわかった。

最後の瞬間あなたの姿が少しばかり遠いのが残念だけど、私は幸せだったわ……


その後直ぐに二度目の強い衝撃と共に私は命を落とした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




目を覚ますとそこは毎日を過ごした自分の部屋だった。体に痛みはなく服の中を見ても体のどこにも傷らしいものは無い。

妙な夢を見ていたのねと考えようとしたが、激しく主張している動悸と身体中から吹き出した汗が先程の夢の現実味を伝えてくる。

少しベットの上で鼓動を落ち着けた後、汗を流すために使用人を呼び浴室の用意をしてもらう。

しかし、そこでも違和感を感じる。目の前にいる使用人が記憶にあるより少しばかり若く見える。気のせいかとも考えたが、それが気のせいでないことが髪を乾かすために鏡の前に座った時に確信へと変わった。

鏡を見れば驚いたことに最後に見た自分の姿よりいくつか幼い。これじゃ十代前半くらい?

おかしな出来事に夢を疑ったが頬を抓ったらちゃんと痛かった。


一体どうなってるの……?


それから数日過ごしてわかったことは私は多分あの時馬車に轢かれたか何かで事故にあい死んでしまったということ。そしてさらに何故か五年前の十五歳の頃に戻っているということ。そして、明日がラルクと出会った初めての日だということ。つまり

ラルクに会える……?!

自分の身に起きたことへの理解は正直まだ出来ていないし、意味がわかんないけど、ラルクにまた会えるなら何も問題は無い。

急いで明日のために体の手入れをする。頭がそこまでいい訳では無い私にだってわかる、明日だけは行動を間違える訳にはいかないということが。

ラルクとの初めての出会いの瞬間、後々になって何度もあの時のことはラルクと話したし自分でも思い返してきた。

あの時と全く同じやり取りをすればまたラルクと居られる。自分が死んだ日のことも覚えているから、そこさえ気をつければ私は今度こそ最後までラルクと一緒に過ごすことが出来る。


使用人に今までで一番の状態にしてと身体のメンテナンスを頼む。

どうせ戻るならあと数日余裕が欲しかった。そうしたら、もっといい状態でラルクと出会えたのに……

……いや、それだと私が我慢できないかも?


使用人も私の熱意に押されたのか、普段からもっとしたかったのかすごく頑張ってくれた。おかげで全て終わった頃には日が沈みかけていて、もうヘトヘトだ。

まぁ、明日のためならいくらでも頑張れるけどね!

その後家族と一緒に食事をとって自分の部屋でテーブルに向かい、明日の事をノートにまとめる。覚えてはいるが念の為まとめておくことは大事だ。なにか見落としてることがあるかもしれないし……

ただ、元々思い出していた以上のことは何も出てこなかった。


出会いは夜会だったから早起きする必要は無いがせっかくメンテナンスしてもらった顔に隈を作っては行けないのでその日は早く寝ることにした。



夜会当日、朝から体のケアを満遍なくしているといつの間にか時間になっており、急いで夜会の会場に向かう。

会場では、久しぶりに見る顔ぶれや懐かしい友達と会うことも出来た。

しかし、ラルクの顔が見えない。それもそのはずで、ラルクはこの夜会に嫌々来たからもうこの時間は外のテラスにいる。

本当はすぐにでも行きたいけど、前回はもう少し後に行っていたから今日の私ももう少し時間を待ってから行かなくちゃ。

それから、久しぶりに友人だった人達やラルクと会う前までよく話していた方達と軽く話してからテラスに向かう。

でも、ラルクのいるテラスは普通の道を歩いていてもつかないのよね……そういえばなんで私はこの草むらを歩き始めたんだっけ?


たしかあの時……


足を止めて少し考え始めたその瞬間、横の草むらからガサガサと音がしたかと思えば勢いよく猫が飛び出し反対側の草むらの方へと走り去っていく。


そうだわ、あの猫を追いかけたんだわ!


テラスへの整備された道を外れて、膝下ほどまで草花の伸びた草むらを真っ直ぐ歩けば見慣れたテラスが見え始める。そしてそこには待ちわびた人の姿も………

あぁ……そうよね、この時は黒髪だったのよね。


実際には死んでしまう直前まで一緒に居たのだから会っていない日数なんて二、三日程度なのに、とても懐かしく思えてしまうのは髪色が出会った当初のものだったからかもしれない。

大丈夫、ここからのことは何度も頭の中でシミュレーションしてきた。出会った当初の頃と同じように話せばなんの問題もない…………だから…………


だから、お願いだから、震えないで……ミュイ・ヴィオレッタ!

頭では大丈夫だと理解できていても、心と体が落ち着いていくれずカタカタと震えそうになる。

もう、ラルクも私がここにいることには気づいているはず。早くラルクの元に行って人がいることに少し驚いた振りをして挨拶をしなくちゃいけないのに……

体が言う事を聞いてくれない……

いつの間にか膝は曲がり腰が落ちる。呼吸も乱れ、入ってくる空気の量よりも吐く息の方が多くなる。

息苦しい……視界に靄が掛かりだした……

あぁ……もうダメ……


「ねぇ、大丈夫?」


突如聞こえてきた声に震えが止まる、聞き覚えのある声に顔を上げると目の前にラルクが立っていた。

変装の為に染めている黒髪と黒を基調にした服装のラルクは今にもあの夜空へと消えてしまいそうに感じるほど美しい。

………………そうよ、私は今からこの夜空と見紛うほどの人を捕まえるんだから…震えてる暇なんてない!


沈んでいた身体を持ち上げラルクと向かい合って深々と頭を下げる。


「御機嫌よう、お目汚し失礼致しました。猫を…追いかけていましたの」


初対面の相手に向けるような程々の笑顔で、礼節には特段気を使い演じる。


「あぁ、いや、そうなのか」


不思議そうに私を見つめるラルク、先程まで蹲っていた私が普通にたって挨拶したことに驚いているんでしょうね。ふふ、なんだか可愛いわね。

っと、そんなこと考えてる場合じゃないわね。元々の予定を思い出して頭の中を切替える。


あら、首を傾げてるわ。そんな姿も…………………………

………………き、切り替えて…


「私はミュイ・ヴィオレッタ。良ければお名前を聞かせていただけますか?」


できるだけ落ち着いて名前を尋ねる。この後、彼は名前は教えてくれるが家名を名乗らない。まぁ、お忍びで来てるのだし王名は名乗れないわよね。

しかしこちらが名乗っていて向こうに名乗られないというのは気分を害するもので普通は怒ったりするらしい。しかし、当時の私はそんなこと何も気にしなかったためそれもラルク的には好印象だったようだ。

だからこのやり取りは今日一番の重要な場面と言っても差し支えない。


「…………ラルクだ。家名は今は教えられない」


案の定の返答に口角が上がりそうになるのを耐える。


「そうですか……ではラルク様、夜風も気持ちいですしよければお茶しませんか?」


当時の私がしたようにお茶に誘えばラルクはあのころと同じように驚いた顔をした後、すこし笑ってゆっくり手を差し出してくる。

その手を取るとテラスの方へ案内される。


「僕でよければお付き合いしますよ。ヴィオレッタ嬢」


あぁ……家名ではあるけれど、ラルクに名前を呼ばれるとどうしてこんなにも心が潤うのだろうか。

あなたの隣を再び歩けているこの瞬間がとても幸せだ。………………だめね、私この気持ちを隠しながら彼に接していけるかしら?


そんなこれからへの不安も少しだけ感じながら私は幸せの未来のために歩き出した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ラルクとの出会いをやり直したあの日から五年が経った。あの後、順調に事は進み私は無事ラルクと再び婚約することが出来た。

しかも嬉しいことになんと明日は私の誕生日なのである。やり直しの人生の中でもここ一年間は気を張りつめていたからすごく大変だった。

それというのもこの年はやり直しの前の私が死んでしまった年のため、ラルクとのデートの時はもちろんちょっとした外出の時も家の中でさえも周りに気を使いながら過ごしてきた。

そうして気を張り続けてようやくここまで来ることが出来た。それなのに……

赤いモヤのかかった視界にはラルクが悲壮な顔をしているのが見える。何かを言って入るみたいだけど残念ながらもう私に何かを聞き取ることは出来ないみたいだ。

ラルクの声を聞けないことが残念でならない、なんて言っているのかな……

ふと、ごそごそと私の腕の中で小さな女の子が動くのがわかる。

数秒前、私とラルクの少し前を一人で歩いていた薄汚れたボロボロの服を着た少女に向かって突然、道端にあった鉄柱が折れ倒れかかった。

あまりにもみすぼらしいその姿に少女の方を見ていた私はいち早くそれに気づき女の子を抱き庇い、少女の代わりに重い鉄柱の下敷きとなってしまった。

怪我の具合を見てあげることは出来ないけど、動き様からしてそこまで大きな怪我はしていないだろう。

よかったと思いながらも少しばかり憎くも思ってしまう。私の死は運命なのだと理解はできたけど、あと少しこの子が歩くのが早ければあるいは遅ければもう少しラルクとのデートを楽しめたのではないかと……

まぁ、こうして命を落としてまで助けてあげたのだからこれくらい思うぐらい神様も許してくれるわよね?


意識も薄れてきた……

自分が今どうなってるのか、周りに誰かいるのかも分からない…………ふわふわと宙を漂う雲になったみたい。

だけど、そんな状態になってもこれだけは伝えたい。


ラルク、大好きよ


どれくらい言えたか分からない。全て伝えれたかもしれないし、一言も口に出来ていないかもしれない。

もう何も見えないし聞こえないからそこに居るのかも分からないけど……きっと届いたと思いたい。


そうして、私の二度目の人生は幕を下ろした。

私の三度目の人生の幕開けと共に……


あれから何度も人生を過ごし今日はなんと、記念すべき十回目のラルクと出会う日!記念日にしようかしら!?

出会った日自体は一回目から九回目まで全て同じなので記念日という観念はおかしいのだかミュイはそんなこと気にせずラルクと出会うための夜会の会場を見る。

初めて死んだ日からかなりの年数がたった。と言っても毎回巻き戻ってるわけだから私の体感年数が経ってるだけだけど。

しかし、まさか十回も人生をやり直すことになるとは思わなかったわね。

最初の方こそ何とか死なないように頑張ったり今回が最後かもしれないと怯えたりしてたけどもう吹っ切れた。

もう通算すれば六十年くらいは生きてるわけだし、これからはボーナスと考えてやりたいようにやろう!と。

そして今回の人生、私は今までとは全く違う過ごしてみたい人生があった。

これまで私は全ての人生でラルクと色んな所に行って色んな話をした。もう、ラルクのことで知らないことは無いんじゃないかな?と考えてたところで新たな彼の一面を知ってしまった。

どうやらラルクは怒るとものすごく怖いのだ。

それというのも、前回の人生で私が少しだけ危ないことをしたらすごい勢いで怒られた。それは今までの人生で見たこともない顔で……

私はそれから彼のその顔が忘れられなくて…もう一度見てみたいと考えていた。

でもそう考えた時はもう十九で死ぬまで一年を切っていたし、どうせなら心の底から怒った顔をみたかったから、次の生はそのために使ってみることにした。

そのためにも、まずはラルクに他の女の子を好きになってもらうことだ。

どうしてそうなったのかって?

ふふ、簡単な話よ。

まずラルクには他の女の子を好きになってもらう。

そして私はその女の子に意地悪なことを言ったり嫌がせをすればきっとラルクは相当怒るはず。

そして、私はその顔を真正面から見ることが出来る。

どう?完璧な作戦でしょ?

前回の人生で見つけた小説にそんな感じの話があってこれだ!って思ったわね。

今生はラルクと過ごすことはほとんど出来ないだろうけどあの時の顔を見られるなら人生一回分捨てるくらいなんて事ない。

…………その代わり次の人生は沢山甘やかしてもらいましょ。

方針の確認も終わったところで考えていた作戦を始める。

まず、ラルクと私の出会いである夜会のテラスあそこに別の女の子を向かわせる。ちなみにラルクの相手になってもらう女の子にはもう目処をつけてある。

これでも九十九回ラルクとは結婚目前までいってるので彼の好みは熟知しているつもりだ。

ラルクの好みに近い女性、且つ今夜の夜会に参加している人物で探せばちょうどいい相手を見つけることはそう難しいことではなかった。

私は何とか人づてにその女性をあのテラスに向かわせ、それを確認したあと夜会から抜ける。

この夜会でするべきことは終わったのでいつまでいてもしょうがない。先程から一人でいるせいかダンスの誘いも多くて鬱陶しいし……

……それより!これからの計画をもっと煮詰めないと!


急ぎ馬車に乗って家に帰る。胸の中の方がじくじくと妙な不快な感覚がするのを無視してその日は寝床についた。


「お嬢様、こちらが報告書にございます」


「ありがとう!」


後日、家臣に頼み例の令嬢のことを調べてもらうと最近親しくしている男性がいるとの事で作戦がうまくいったことを知り、次の作戦に移ることにした。


「親しい男性は間違いなくラルクの事ね……!それなら次に参加するパーティと言えばあそこね」


一週間後にとある伯爵の誕生日パーティが行われ私とラルクはそこで再会をしてそのパーティ以来次に会う約束をするようになった。

あの令嬢も参加するはずだからきっと同じような展開になるはず……


「なら私はここは参加せず二人には仲を深めてもらって、その次に開かれるパーティでその令嬢を罵倒すれば……」


ラルクは私に冷たい視線を向けながら怒りをあらわにするにちがいない。

ふふふ、ラルクの冷たい視線……想像しただけでゾクゾクするわね。


「…………次に会えるのは一ヶ月後くらいかしら?もう合計六十年弱くらい生きてるけど、こんなに会わないのは始めてね」


ラルクと出会ってから今までほとんどの日を一緒に過ごしてきた。

だからかしら、今までは意外とあっという間だったとしか思わなかったけど……………………今生は長くなりそうね。


お読み頂きありがとうございます。

この話は二話構成で、続きは25日に投稿予定ですので出来ればブックマークをして続きを楽しんで頂けたら幸いです。

よろしくお願いいたします

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