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9話:今すぐKiss You(レオポルド視点)

 カトリーナのアシストにより、つつがなくエミーと昼食をともにすることが決まった。

 カトリーナが言うには、エミーは男性に慣れておらず、男性には少しの畏怖も抱いているらしい。


(もし、以前に彼女に触れた男がいたら、その男をどんな目にあわせてしまうかわからないから、むしろよかったくらいだ)


 なのに俺の昼食の誘いにはすぐに「はい」と返事をしてくれた彼女を思うと、さらに彼女が好きになった気がした。


 前日の夜は興奮と緊張のためか眠れず、目に浮かぶのはエミーの顔ばかり。

 そして運命の当日。

 昼食をともにしていると、もう結婚したかのような幻想が見え、理想の子どもの人数から聞いてしまうという失態をさらしてしまった。彼女はそれすらも怒ることなく受け入れてくれた。

 そんな彼女を幸せにしようと改めて誓ったのだった。


 だから俺はすぐにプロポーズをしたのだ。


「エミー、私と結婚してほしい」

「……はい」


(うぉおおおおおおおおお!!!!)


 「は」が聞こえた瞬間、俺の脳内は「はい」だと自動変換されて叫んでいた。

 ――いや、実際「はい」だったはずだ。

 はい、と絶対言っていた。


 俺は理性が吹き飛び、思わず彼女を強く抱き締めていた。


「よかった! ありがとう、エミー。一生大事にするから!」


 妾なんて絶対つくらないし、絶対に彼女しか愛さない。

 俺の腕の中で恥ずかしさに固まってしまっている彼女が、愛おしくてたまらなかった。


(ああ、もう! 可愛すぎる!!)


 このままかわいい唇にキスを……いや、さすがに早すぎるか。

 しかし、エミーさえよければ俺はしたい。

 彼女を少し離して、じっと見つめる。

 エミーは恥ずかしいのか、視線を外していた。


(可愛い……。エミーは恥ずかしくなると視線を上に逸らす癖があるんだよな……)


 もう、そんな小さなことまで愛しい。

 俺はエミーの頬にそっと触れ、囁いた。


「キスをしてもいいか?」


 エミーの体がビクンッと震える。

 それからもブルブルと震え続け、消え入りそうな声で「それは無理ですぅ……」と呟いた。


(恥ずかしがっている姿も可愛すぎる!!)


 彼女にとって、きっと初めてのキスになるんだろう。

 俺は余計に彼女に口づけたくなったが、彼女の気持ちを大事にしようと頷いた。


 エミーとは結婚するんだ。焦らなくとも時間はいくらでもある。

 彼女の覚悟ができたら、毎日、何度も、何度もキスすればいい。


(歴史に名を残すほどの仲のよい国王夫婦の誕生か! いいな!!)


 俺は元々世の男が妾を持つのに疑問を持っていた。

 エミーを好きになって余計にそう思った。

 他の女に使う時間なんて少しもいらない。俺の全ての時間を彼女に捧げたいのだ。


 そう思いながら、エミーの髪を優しく撫でる。

 すると、彼女の体がピキーンと固まった。まるで、石化したかのようだった。

 全く恋愛慣れしていない、この純粋で可愛い生き物に言葉を失い、気づけばまた強く抱き締めていた。


(可愛い……! もうどうしよう……! このかわいさに他の国の王子が気づく前に、一刻も早く結婚するしかない!!!)

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