高い空
まだ日が昇っていない早朝
琴音と待ち合わせをした場所へ急ぐ。
「はあっ、はあ…」
(こんな所に呼び出しやがって…)
高台を登った所に居たのは日の出を待つ琴音だった
「おまたせ」
「ん、おはよう。日の出間に合いましたねえ〜」
「朝からって…俺後から大変なんだぞ、」
「それでも来てくれるんよね、ありがとう」
(親には部活で早めに登校すると後から連絡を入れておこう。ただ、今日は学校をサボる。コイツと)
「あ、ほら!」
裾を引っ張られ、琴音の指さす方へ目線をやると日が昇り始めていた。
「やばっ、きれー」
子供のように瞳を輝かせ笑みを浮かべる琴音を見ると少し安心した。
「あ?なんで私見てんのよ、日の出を見なさいよ」
「え?ああ、うん」
琴音を見ていたのは無意識だし、変な事で怒られたな。と太陽へ目をやる
(まぶし、)
目を上手く開けられない。
「あんまり直視するんじゃねえぞ、琴音」
「分かってるんですよ〜」
「よし、行くか!」
暫く日を見た後、高台を下り家と真反対の方角へ歩いていく。
「目的地は決まってるのか?」
「ん?無いよ〜。とりあえず行ってみよー!」
(やっぱりな、)
俺達は昔から知らない道や景色を探すのが好きだった。今回もそれをするらしい。
「ちょっと怖いな」
「こわがりぃ〜」
「うるせえぞ」
早朝、いつもと違う顔をする街に好奇心と恐怖心が隣り合わせになる。
「あっちは昔行ったから、今日はこっちね!」
「はいはい、」
バッグの中には携帯、食料、お金、服…と旅行でもするのかという荷物が入っている。昔からこうやって色んなものを抱えて街を探索していた。
汗をかき始める
日が差す中坂を登るのは結構疲れる
「はあっ、はあ…どこまでっ、」
「あ、見て!」
一足先に坂の上に辿り着いていた琴音が俺を急かす
急いで登った先には上から見える海、住宅街、さっきより近い空だった。琴音が空に手を伸ばしあと少しで届くんじゃないかと思うぐらいに。
カチャ
デジカメに思い出を詰めていく
「よし、次だ!」
「次は何処へ?琴音さんー」
「駅へ向かうぞー」
そう言って駆け足で坂を下っていく琴音
「お、おい!気をつけろよ!」
「わ、わっ…とまっ、わあっ、」
「はあっ、はあっ…し、死ぬかと思ったあ、」
「馬鹿かよ、」
「う、うるさいっ」
(拗ねてしまった、)
足を早め駅へ向かっていく琴音を後ろから「やれやれ」と言わんばかりに眺めながら歩き進める
駅に着き、切符を買い電車へ乗る
まだ朝方の方で乗っている人は居ない。
「ふふ、2人だけだね」
(またそんな事を簡単に言う、)
確かに今この電車の中で2人だけ。2人だけの世界だ。
対面の位置に座り、時計を確認したり琴音はさっき撮った写真達を眺めていた。暫く待っていると揺れる電車。窓から少しづつ日が溢れる。
「動いた動いた」
静かにはしゃぐ琴音に日が当たり光る。
とても綺麗だった
カシャ
「ん、ああー、撮るなあ!ちょしゃくけん!」
「言えてないぞー」
「くう…」
綺麗なものは写真に残しておかないと。いつ消えるか分からないのだから、せめて形に。
目的地は無い。ただ琴音が此処だと言った場所へ行くだけ。切符も当てずっぽうで買っている。
「わあー…ははっ、あ、きれい」
琴音は終始目を輝かせ世界で一番綺麗なものを見た時のような表情をしていた。
約1時間乗った電車を下り改札を通る。
駅を出て携帯を確認するともう既に6時になっていた。
(杉崎…、来た事ない所だな)
「よーし、冒険へ出発だあ」
「おー」
どんな綺麗な景色が見れるだろう。
駅を1枚写真に残し、知らない街へ足を踏み入れた。