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夏色

(喉が渇いたな)


「はあっ、はあ…あ、」


(先客が…)


「ん、」


春の風が頬を撫でる

校舎裏の水飲み場に居たのはどこか見覚えのある顔の少女だった。


「…どうしました?」


少し不信感を抱きながら此方へ微笑みながら問うてくる。


(どっかで…見たような、)


クラスの女子か?学年?…いや、そういうのじゃ、


「あ、あの…。えっと…あ、水飲みに来たんですよね!すみません!すぐ退きます」


自分の中で完結させてしまって、この場を去ろうと横を通ろうとした。


(ん、この横顔…)


「美琴!……さん、ですか?」


人違いだったらどうしようと。勇気を振り絞り念の為敬語で問うてみる


「え、なんで…名前を。えっとどこかで、?」


合っていたらしい。ここで確信する。


(中学の頃の同級生だ。いや結構な顔馴染み、幼馴染の琴音だ)


「えーっと…?」


(あれ、いやまてよ、コイツなんで俺と同じ高校に居るんだ?一緒だったっけ)


矛盾と過去の記憶を漁って脳がフリーズしそうになったその時


「清水くん!!!」

「あっ、ご、ごめん。考え事を…て、俺の名前!」

「ま、間違いじゃなかったみたいで良かった」


相手も俺の事を認識して思い出したようだった


「久しぶり、清水くん。中学振りだね」


立ち位置と身嗜みを整えひと挨拶をする琴音


「中学振りって、、もう今は高三の春だぞ…?」


そう、何故俺が矛盾を感じていたのか。

今が高一ならばまだ理解できるがもう高三。今迄一切の琴音の存在に気づかない筈が無い。


「??」

「いや、??じゃなくて、、琴音今迄何してたんだよ、一緒の高校なんて知らなかったぞ、」

「うん、だって言ってないもん!」


(いや、そんな当たり前。みたいな顔されても、)


「ん、ああ…高校来てなかったの!」

「え、ああ…そういう事」


(そうだった、コイツは昔からそういう奴だった)


「高一は来てたんだけど、特に他の子と交流も無かったし、単純に気づかなかっただけだと思うよ」

「一声かけてくれりゃ、、」

「えへへーうっかりー」


時間と共に昔の感覚を取り戻し、久しぶりに再会した友人のように会話をした。


キーンコーンカーンコーン


妙に会話が弾みすっかり授業の事を忘れていた。


「あ、そうだった。まだ授業中だった!」

「そういえばそうだったね〜」

「ごめん!俺先行くわ、また会えたら!」


そう言って大きく手を振り琴音を背に急いで戻った。


(俺は体育の授業中だったが、琴音は制服だった。アイツ何してたんだ?)


それにまだ長袖でないと肌寒い時期、琴音は額にびっしりと汗をかいていた。今はそんな事考えていてもしょうがないと足を早めた。



翌日

琴音のクラスに行っても琴音は居なかった。今日は来ていないらしい。いや正確に云うと今日も、来ていなかったみたいだ。


「昨日は来てたのにね」


昨日居たのはちゃんと琴音だったらしい。



(まあ、アイツの事だからどっかで来るだろう)


だがあれから一ヶ月来ることはなかった。

後から知ったが連絡先は繋がっていたらしい。


〔大丈夫か?何かあったのか。〕

〔家、ちょっと行ってもいいか?〕


既読は付かない。

疑問形で問うたが、琴音に拒否権など無く、琴音の家へ向かった。


中学の頃から気が合った俺達はよく一緒に遊んだり学校をサボったりしていた。

学校に行けない琴音を少しでも行けるようにする為に迎えに行ったりしてた事もあってかお互いの家も知っていた。


ピンポーン


しばらくの沈黙の末


ガチャ


「うげ、本当に来たのかよ。笑」


顔を出したのはあの日みた表情と何一つ変わらない笑顔の琴音だった。


「本当は連絡見てたんだろ」

「まあまあ、とりあえず中入ったらどうです?」

「はあ、分かったよ。お言葉に甘えて」


腰を下ろし、疲れと緊張で乾いた喉を潤す


「んで、琴音。お前学校来てないだろ」


別に悪いことじゃない、ただ俺は昔からこういう立ち回りなのだ。


琴音は遠くを見て何か考えているようだった。


「ねえ、清水くん」

「?」

「付き合ってよ」

「!?」


(!?は、どうゆう…)


「サボるの付き合って」

「え、」


(あ、そういう…)


「え、なになに〜変な事考えた〜?」

「うるせえよ」


(いや、サボると言っても。もう中学生じゃないんだぞ、それに俺には学校が…)


ただ、何故なのか。今になっても分からないが、琴音の顔を見ていると、如何しても断れなかった。


「分かった。でも俺には学校がある」

「承知の上だよ〜。青春してみたいだけ」


(昔どんだけやったよ…)


ただ、俺は内心嬉しかったんだと思う。この退屈で窮屈な世界から逃げ出せるような気がして。


そして確かに暑かった。汗が噴き出るほどに



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