死神の小銭稼ぎ
ある死神が良いビジネスを思いついた。
「そこの道を行くお兄さん」
そう言って死神は一人の青年を呼び止める。
呼ばれた青年は相手が死神だと気づいて思わず身構えたが、死神は穏やかな微笑みを浮かべて言った。
「そう身構えないでください。ちょっとした質問なのですがね。あなた、残りの寿命とか興味ありませんか?」
「寿命? つまり、僕が残りどれだけ生きることが出来るかってことかい?」
「そうなります」
言われて青年は黙り込む。
実のところ、そんなこと意識したことさえなかった。
そして、死神に呼び止められなかったら、きっと老境に至るまで意識することはなかっただろう。
「気になりませんか? あとどれだけ生きていられるか」
「そりゃ、気にならないと言えば嘘になるが……」
青年の悩む様子を見ながら死神は畳みかけるように言った。
「その気になる寿命についてですが、金貨五枚でお教えいたしますよ」
「金貨五枚!?」
結構な金額だ。
何せ、青年が一年あくせく働いて得るのがおおよそ金貨十枚に届くか届かないかなのだ。
つまり、半年間稼いだお金を使ってようやく分かるということになる。
「そもそもお前、金貨なんか使うのか? 死神だろ?」
「地獄の沙汰も金次第ですよ」
にんまり笑う死神を見て青年は黙り込む。
確かに気になるが……しかし、流石に高すぎる……。
そう青年は考えていたが死神が煽る。
「死に際が分かることほど便利なことはないですよ。何せ、墓場にまで持っていかれないんだからお金を有意義に使えます。今わの際に『こんなことならもっとお金を使っておけばよかった!』なんて残念に思うこともなくなりますよ」
確かにそうかもしれない。
死神の口車に乗せられた青年はつい金貨五枚を払ってしまった。
「へへへ。毎度あり! ではお話ししますね。あなたの寿命は……」
あっさりと手に入った金貨五枚。
これに味を占めた死神は同じようなことを幾人にも行った。
当然ながら金貨はみるみるうちに集まっていき、それらが山となったのを眺めて死神はしめしめと一人ほくそえんでいた。
何せ、死神からすればただ寿命を伝えるだけなのだ。
こんなに楽な稼ぎ方はない。
「これは良い小銭稼ぎが出来そうだ」
寿命を知った者達が自暴自棄になり好き放題に暴れた結果、多くの人間が死に至り死神が休む間もなくなるほどに働くことになるが、それはまた別の話。