名前
なんか……隅っこに居ると安心するんだ。
なんでだろう?
分かんないや。
⦅眠たくなっちゃった………⦆
「この子、テレビと壁の間に居ると安心するのかしら?」
「居るね。寝てるし……。」
「わんわん!」
「大翔、わんわんは眠たいのかも……。
わんわん、おねんねみたいよ。」
「わんわん、おねんね?」
「そう、おねんね。」
「ひろ、も! おねんね。」
「まぁ、大翔ったら……。」
「わざわざ、隣へ行くのか?」
「わんわん、いっちょ、ね。」
目が覚めたら、小さい人が隣で寝てた。
⦅ビックリしたぁ~!
でも……みんなと寝てた時みたいだ。
みんな、どこに行ったのかな?
会いたいなぁ……。
お母さん……。⦆
「あらっ? 起きたのね。」
僕をお姉さんみたいな人が抱っこした。
⦅僕をどうするの?
抱っこは好きだから、お尻尾ブンブンになっちゃう。⦆
降ろされたら、隅っこに行った。
「あれっ? やっぱ、そこがいいのか?」
「今日は激動の日だったから……
この家に慣れるのに少し時間が掛かるのよね。きっと……。」
「じゃあ、俺はうちの王子様をベッドへ運ぶとするか……。」
「よろしく!」
「おうよ。」
お姉さんみたいな人がずっと見てるんだ。
⦅僕をどうして見てるの?⦆
「ねぇ、貴方の名前、何がいいかしら?
レオ、ロイ、ルーク………。
どれがいいかしら?」
⦅なまえ? 何、それ?
美味しいの? お腹空いたよぉ~。⦆
バスの人が戻って来た!
「ねぇ、この子の名前何がいい?」
「どうしようか?」
「ゴールデンレトリバーだから、英語の名前がいいと思うんだけど……。」
「そうだな!」
「私は、レオ、ロイ、ルーク…を思いついたんだけど……。」
「どれも、いいな!」
「でしょう! でっ、どれにするかなのよね。」
「俺は……ロイかな?」
「どうして?」
「大翔が言えそうだから……。」
「そうか……。じゃあ、大翔に決めて貰おうか?」
「そうしようよ。一応、俺はロイでっ!」
「私は…ルーク!」
「分かれたんだな。」
「だから、大翔に決めて貰うのよ。」
「夕飯だけど、私たちの後でこの子よね。」
「そう! 人間が先!」
それから、僕は隅っこに居たんだ。
ご飯を待ちながら……。
しばらくして遠くから声が聞こえて来たんだ。
「わんわん! わんわん!」
「大翔が起きたわ。」
「じゃあ、お迎えに行って来よう!」
小さい人を抱っこしてバスの人が戻って来た。
「わんわん!」
「好きになったんだな~。」
「大丈夫よ。わんわん、どこにも行かないからね。
これから毎日……。 居るのよ。」
「いる?」
「そうよ。」
「大翔、わんわんの名前、決めるよ。
ロイとルーク、どっちがいい?」
「わんわん!」
「あのね、名前はわんわん、じゃないんだよ。
ロイ……ルーク……どっちがいい?」
「わんわん!」
「だからロイとルーク!」
「わんわん!」
「ああ―――っ! 無理だ!」
「あなた……大翔にはロイもルークも違うのよ。」
「じゃあ、どうするんだよ!」
「ONEはどうかしら?」
「わん?」
「英語表記でO・N・E!」
「わんわん!って呼んでもOKだな。」
「私たちにとってはね。」
「じゃあ、ONE! お前の名前は今日からONEだぞ。」
それから、僕はONEと呼ばれるようになったんだ。
ご飯やおやつに釣られて僕は覚えたんだよ。
ONEって呼ばれたら「いいこと」があるって分かって、ONEを覚えたんだ。