バスの中
⦅暗いよぉ~。怖いよぉ~。どこなの?
おかあさぁ~ん。おかあさぁ~ん。
どこに居るの?
おかあさぁ~ん。⦆
僕は鳴いて……鳴いて……
兄妹も鳴いて……。
でも、お母さんは来てくれない。
暗くて、怖い。
出られなくて、怖い。
ずっと鳴いてるのにお母さんは来てくれない。
鳴いていたら疲れちゃって……お腹も空いて来た。
⦅お腹空いたよぉ~。おかあさぁ~ん。
おっぱい飲みたいよぉ~。⦆
いっぱい鳴いてもお母さんは来てくれない。
⦅僕たち、どうなるの?⦆
鳴いてて疲れちゃって……寝てしまった。
どのくらい寝たのか分かんないや。
寝てたら、人の声がした。
パパさんみたいな声だった。
「なんだ? この段ボール箱?」
その声の後、直ぐに明るくなった。
⦅眩しいよ……朝?⦆
「嘘だろ……。
なんで? なんで犬が居るんだ?」
⦅僕たちのこと?⦆
「おい! みんなぁ~!」
その人は僕たちが入った段ボール箱という物を抱っこするみたいにして、どこかへ僕たちを連れて行った。
⦅ねぇ、ここ、どこなの?
お母さんはどこに居るの?
パパさん、ママさん、お兄ちゃん、お姉ちゃんは?
ねぇ、どこに居るの?⦆
どっかへ僕たちを抱っこして連れて行った人。
どっかに僕たちが入った箱を置いたみたいだった。
見上げたら人が一杯……居た。
⦅誰? 誰なの?⦆
「ほら、犬が入ってたんだよ。」
「ほんとだ!」
「捨てたのか?」
「そうだな……。」
「無責任だな。」
「どこにあった?」
「バスの後部座席に置いてあった。」
「誰が置いたか分からないよな。」
「分からん。」
「どうする?」
「子犬だろ?」
「子犬? こんなに大きいのに?」
「これ、ゴールデンレトリバーの子犬だぜ。」
「俺、動物病院へ連れて行くわ。」
「お前、飼うのか?」
「まさか……三匹も無理だよ。」
「俺、引き取り手が無かったら一匹飼います。犬、飼ったことあるんで!」
「お前が飼ってくれても、二匹残るからな。」
「あの……学校に張り紙出して飼ってくれる人を探すとか……は、どうですか?」
「それ! いいな!」
「じゃあ、写真を撮ってポスターを作るか。俺が作るから……。」
「学校は…… 役所を通して頼んでみるかっ。」
「ありがとうございます!」
「お前に礼を言われるのは……。」
「いいえ、嬉しいです。このままだったら殺処分なんで……
それ、俺は嫌です。」
「じゃあ、先ずは動物病院だな。お金は俺達で寄付ということで!」
「はい!」
「それから、飼い主が見つかるまで、ここで育てるから!」
「はい!」
「じゃあ、お金を出し合おうか……。」
「はい!」
ここは、バスの運転手さんたちが居る場所って言ってた。
この日から、僕たち三匹はこの人たちと一緒……でも………お母さんは居ない。