段ボール箱
あのね。
僕、大好きなお母さんと居たの。
おっぱい、いっぱい飲んで……兄弟と遊んで寝て……楽しかった。
家にはパパさんとママさんが居て、お姉ちゃんとお兄ちゃんも居たんだ。
起きたら遊んでくれて……楽しかったぁ~。
遊んでいたら人が来た。
何人も来た。
抱っこして貰ったり、僕も兄妹も人大好き♡
だって、優しいよ。
抱っこしてくれるし、ナデナデしてくれる。
人が一杯来るようになって兄弟が段々来た人と行っちゃうの。
今日は誰が行くんだろう?
残ったのは僕と女の子と一番下の男の子の三匹。
それから、人が来なくなっちゃった。
僕達三匹はお母さんに甘え放題になった。
兄妹が減ったから……。
寝て目覚めた時に、声が聞こえて来たんだ。
パパさんとママさんとお姉ちゃんとお兄ちゃんの声。
お母さんが言ったんだ。
⦅シ―――っ、静かにしててね。⦆
パパさんの声だ!
「どうするんだよ。売れ残ったじゃないかっ!」
「仕方ないじゃないの。うちの子が産んだ子犬なら欲しいって言ってたのに、いざ
生まれたら『ごめんなさい。飼えないわ。』って掌を返されたんだから……。」
「でっ、どうするんだよ。父さん、母さん。」
「うちで飼おうよ。」
「無理よ。大型犬四匹になるのよ。」
「お前が面倒みるのか? 餌代だって馬鹿にならないぞ。お前が稼いでくれるのか?」
「私、大学生よ。無理!」
「じゃあ、どうするんだよ。この子犬! 大体、産ませなかったら良かったんじゃね?」
「そんな……今更……みんなしてお母さんのせいって言うのね。」
「誰のせいとか、もう別に良くない?」
「そうだ。どうするかだ。」
「捨てるしかないね。」
「どこに……?」
「取り敢えず、段ボール箱に入れて捨てる。」
「だから、捨てる場所!」
「バスの中はどうだ?」
「バスの中?」
「案外、捨てた時は気付かれないと思うぞ。」
「どうするの?」
「あのな………。」
お母さんが悲しそうな眼をしてた。
⦅お母さん? どうしたの?⦆
⦅もう、お前たちともお別れね………。⦆
⦅お別れ?⦆
それ以上、お母さん、何も言わなかった。
お母さんのおっぱいを飲んで、眠たかったから寝た。
朝になって、お母さんのおっぱいを飲んでたら、いつものようにご飯が出て来た。
三匹で食べる。美味しい~!
僕、ご飯大好き♡
昼になってからママさんが僕たち兄弟三匹を入れた。
入れられて直ぐに真っ暗になった。
⦅何? 何? おかあさぁ~ん。⦆
三匹でお母さんを呼んだ。
お母さんの声が聞こえた。
身体がフワッと浮き上がった。
抱っこされてるみたいに……
お母さんの声、聞こえてたのに段々と聞こえなくなっていった。