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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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098 情報が足りない


 「だな。もっと色々わかってると思ってたんだけどなぁ。」


 メイの言う通り、紙も内容もスカスカだった。本当に事件について何もわからないのがわかっただけだ。


 「まあ仕方ねえよ。とりあえず、これを元にしてどうするか決めるぞ。」


 「どうするかって?」


 「まず圧倒的に情報が足りねえから情報収集はやるとして、主にどんな情報をあつめるかとかだな。」


 判明している事を書いた紙がスカスカの状態なので、グレンは情報収集を提案する。


 ナイン達も情報が少ないと感じているので反対はない。


 「・・・どんな情報。」


 「目的とか方法に繋がりそうな情報でいいんじゃない?そこから色々わかるかもしれないし。」


 どうしたらいいのかと悩んでいたナインに、真剣な顔をしたメイが助け舟を出す。


 確かに、目的や方法に繋がる情報が手に入れば、そこから更に判明することや不明点も浮かんでくるくるだろう。


 「そうだね、それが無難だし全部に繋がるしね。」


 だが集まるのだろうか?という不安が胸の内に現れる。


 たった1週間ほどだが、金策で町の外に出る事が多かったとはいえ、それでも色々な場所には顔を出している。ギルドや宿や食事処、大通りや市場なんかだ。


 だが行った先々で爆発事件の話や噂を聞いたか?と言われると、聞いた覚えがほぼ無い。


 もしかしたら爆発事件の情報が町民にはあまり広まってないのかもしれない。


 これも領主の仕業だろうか・・・。


 「んじゃとりあえず明日から目的、方法に繋がりそうな情報収集をする、でいいな?」


 「うん。」


 ナインの返事に合わせてメイとルチルも頷く。


 「あ、ルチルは留守番な。」


 「わかりました。」


 いくら変装しているとはいえ何処からバレるかわからない。なのでグレンが留守番を言い渡す。


 ルチルも今の自分の状況を理解しているので、特に悩む事無く了承する。


 「メイも護衛に置いてこっか。いい?」


 「いいよ。」


 隣に座るメイにルチルの護衛を頼む。宿の中とはいえ何があるかわからないからだ。


 その事をメイも理解しているようで、間を空けることなく二つ返事で受けてくれた。


 「あ、あの。そこまでして頂かなくても大丈夫ですよ?」


 「いや、護衛はあった方がいい。まだ領主だけが犯人とは限らねえし、裏の連中を使ってくる可能性だってあるからな。」


 「裏の連中?」


 グレンの口から聞き慣れない言葉が出る。


 「いわゆる非合法な組織連中だ。金さえ払えば誘拐、窃盗、暴行、暗殺っつう感じで何でもやる奴らだ。」


 「怖っ、そんなのいるのか。」


 警備隊や騎士よりよっぽど厄介じゃないか。


 グレンの説明を聞き不安が大きくなる。ルチルの様子をちらっと見ると、彼女も不安そうにしている。


 メイは普通な顔をしているので、不安には思ってなさそうだった。裏組織については予想していたのだろう。


 「・・・使ってくる可能性はありそう?」


 不安そうにしているルチルには悪いが、ナイン自身も不安なので聞いておいた方がいいだろうと考える。


 なんせ僕は死なないだけで弱いからな。捕まって拷問とかされたら普通に終わる。


 「正直わからん。今でも十分やり方は汚ねえからな。相手側がどこまで本気でルチルを犯人にしようとしてるかで変わる。いきなりルチルが犯人じゃありませんでした、って言ってくる可能性も無いとは言えねえからな。」


 「確かにそうだな・・・。」


 手のひら返ししてくる可能性もあるので、何とも言えないようだ。


 となると今のナイン達は、不安を抱えてビクビクしながらルチルを守りつつ、頑張って情報を集めて状況をひっくり返すしか無い。ということになる。


 何か腹立ってきたな。


 「くそ、領主とか警備隊に腹立ってきた。いくらなんでもやってる事が酷すぎないか?」


 町を治める領主が町中で爆発事件を起こし、町民を死傷させる。そしてその罪を何の関係も無いルチルに着せる。


 普通に屑だ。


 「そうだね。それにたぶんだけど、ルチルが捕まったら取り調べ無しにそのまま犯人確定ってなると思うよ。裁判も出来ないだろうね。」


 「何で?」


 「嘘発見の魔道具が使えないからさ。」


 メイの推測に3人が嫌そうな顔をして納得する。


 確かに嘘発見の魔道具は使えない。というより使えない。使ったら領主側の嘘がバレるから。


 領主が嘘をついているのを警備隊が知っているかは不明だが、証言の食い違いが起きてしまうような事を領主側がするとは思えない。


 「捕まったら終わりか。」


 「そんなぁ・・・。」


 ルチルがソファに座りながら崩れ落ちた。 

 

 捕まったら最後、何を言っても何をしても覆せないだろうという予想にルチルの目が虚になっていく。


 「・・・最悪殴り込むか?」


 「領主館にか?死ぬぞ?」


 「だよねぇ・・・。」


 言ってみただけだ。本気では無い。半分くらい。


 「・・・まあ、どうしようもなくなったらそれも一つの手ではある。リスクが半端ねえけどな。」


 「え?マジで?」


 まさかグレンが本気にするとは思わなかったのでかなり驚いた。死ぬって言ってなかった?


 「マジだ。だが最悪だぞ。やるとしても領主館を手薄にしたりしなきゃいけねえから準備がいる。副団長くらいまでなら全員で挑めば勝てる可能性もあるが、騎士団長は無理だからな。」


 グレンの説明を聞き、死ぬと言った理由を理解する。騎士団長がやばいようだ。副団長ならいけるらしいが、それでも勝てる可能性ある程度らしい。さてどのくらいの確率なのやら。


 まあグレンもナインと同じように最悪の場合と想定している。ならば、そうならないように頑張ればいいのだ。


 かなり大変そうだが、ルチルを見捨てて逃げる、なんて選択肢は選べないからな。


 「自分で言っといてだけど、最悪にならないように頑張らないとな。」


 「ああ。」


 「そうだね。」


 「はい。」


 ナインの言葉に、各々が決意を込めて返事をする。


 明日からの情報収集。メイとルチルは留守番なので、ナインとグレンのみでの行動だ。


 出来れば何か取っ掛かりくらいは掴みたいところである。

また明日。

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