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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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097 お高い宿


 倉庫街を離れ、ナイン達が泊まる宿をチェックアウトした4人は、現在、新たに取った宿の部屋に集まっていた。


 「広いね。料金が高いだけはある。」


 今いるリビングルームを見回し、ナインが感想をこぼす。広さとしては、だいたい20畳くらいある。今日まで泊まっていた部屋の3倍近い広さだ。


 もちろんリビングルームだけじゃなく、ベッドルームもある。こちらは二部屋あり、各部屋にベッドが2つ置いてある。


 「やっと気を抜けます。ふぅ・・・。」


 ルチルがソファにもたれかかりながらため息を吐く。町中での移動中や、宿のフロントなんかでかなり緊張したのだろう。


 移動中、出来る限り避けていたが、何度か警備隊の横を通る事があった。だが、変装が上手くいっていたのだろう、警備隊は全く気付く気配が無かった。


 「ここって食事が出ないんだっけ?」


 部屋の隅にあるキッチンスペースに視線を向けたメイが、グレンに問う。


 そういえば、部屋を取る時にそんな事を言ってたな。


 「ああ、だから部屋にキッチンスペースがあんのさ。まあ大概は屋台とかで買った飯を持ち込んで使う事はないんだけどな。」


 この宿には一般的な宿にはある食堂が無い。宿泊客が自分で食事を用意するタイプの宿である。


 「でも、そのお陰で相場より安いんだっけか。1泊4万トリアが安いのか?って思っちゃうけど。」


 宿泊料に食事料が含まれていないのに、この部屋の宿泊料は4万だ。


 乗船料のためにお金は貯めていたので、半月くらいなら何とか大丈夫だが、いつまで泊まり続けるのかまだわからないので、場合によっては、事件について調べながら金策をしなければいけないかもしれない。


 「この部屋と同じくらいの広さで食事付きとかだと、6、7万くらいすんぞ。半分くらいの広さで良いなら4万でもあるけどな。」


 「高っ!それは無理だわ。」


 「だろ?だからここがいいのさ。飯にしても、ナインとメイが作れるから問題無えしな。」


 「グレンもやれよ。」


 「皿の上に炭が乗るが、それでもいいか?」


 僕の愚痴にグレンが真面目な顔で返してきた。どんだけ出来ないんだお前は。


 仕方ないので食材なんかの買い物を頼もう。と思ったが、料理が出来ないグレンに頼むと変な物を買ってきそうなのでやめておくことにした。


 ナインはため息を吐き、グレンの返答を無視すると話題を変える。


 「とりあえずゆっくり出来る場所に来たんだし、改めて事件の話をしようよ。」


 宿を変えて気持ちを落ち着かせてから話をする。と決めていたので、さっさと話を始める事にする。


 早くしないと、夕飯が遅くなってしまうからな。


 「そうだね。でも何から話すの?」


 「うーん、そうだなぁ。」


 少しだけ考え、まずはルチルについてもう少し詳しく聞こうと決める。


 「そもそもルチルはこの大陸出身なのか?」


 「いえ、私はノースト大陸のリヴァイン王国出身です。」


 リヴァイン王国という初めて聞く名称が出たが、今はそれどころじゃないのでまた今度にする。


 それにしてもイース大陸出身じゃないのか。


 「いつこの町に来たんだ?」


 「えーと、2週間くらい前です。お祭りに参加したくて船の護衛依頼を受けて来ました。」


 「ん?2週間前?」


 「は、はい。あの、なにかありましたか?」


 何か変な事を言ってしまったのかと思ったルチルが不安からおどおどし始める。だがナインはそれに気付く事なく、視線を少し下げて少し前の記憶を掘り起こす。


 爆発事件に関して初めて聞いたのは、町に入る時だったよな。門番が注意しろって言ってたんだ。それで確かその時・・・。


 やっぱりそうだよ。


 「・・・爆発事件って、4週間くらい前から起こってなかったか?」


 ナイン達がカルヴァースに来たのは1週間ほど前。その時点で、3週間ほど前から爆発事件が起きていると門番から教えられていた。


 「そうだね。門番が言ってたね。」


 「そうなんですか?」


 「あれ?知らなかった?」


 「はい。私、少し前から起こってるって事くらいしか知らなくて。」


 いつから事件が起きているのか、ルチルは知らなかったようだ。


 それにしても。


 「何か、ルチルを犯人に仕立て上げようとしている割には、やり方が雑じゃない?」


 領主が主導しているのはほぼ確定だろう。何せ領主本人が逮捕命令を出しているらしいからな。


 だがそれにしては雑に感じる。


 ルチルが2週間前にカルヴァースにやってきたという事は、ちょっと調べれば素人でもすぐにわかる。


 こんな簡単にわかってしまうような事を無視して、ルチルが犯人だと決定しているのは何故だ?市民に冤罪だったと発覚しても問題無いのか?


 「何でだろうね。領主がアホ、っていう訳でも無いと思うし。」


 「アホじゃなさそうなのか?」


 「流石に違うんじゃない?私が思うに、たぶん、このやり方で問題無いっていう何かしらの理由があると思うんだよね。全然わかんないけど。」


 「なるほど。あー!正直、何が何だかさっぱりわかんねえな。一旦わかってる事まとめようぜ。」


 ナインも領主はそこまで馬鹿では無いと思っている。だが、これで問題無いと思える理由は何かが全く思いつかない。


 なのでグレンの言う通りに一旦まとめる事にする。そうすれば何か見える事があるかもしれない。


 とりあえず、現状でわかっている事を時系列にしながら紙に書いていく事にした。


 テーブルに紙を置き、4人で囲う。


 それから数分、4人でワイワイと騒いだり、時には黙って考えたりしながら、各々が思い出せる限りの情報を紙に書き込んでいった。


 ちなみにこの時にわかったのだが、ルチルはソロの冒険者とのことだった。


 「出来た。ふむ、今はこれが限界かな。」




4週間ほど前

爆発事件発生


2週間ほど前

ルチルが船の護衛でやってくる


1週間ほど前

ナイン達が町にやってくる


今日

爆発発生

ルチルが先に現場に行くが、焼け焦げた現場には怪我人すらいない

すぐに警備隊がやってきてルチルの名前を呼び、捕まえようとする

ルチル逃走




爆発事件について


人通りの少ない通りを1人で歩いている時に起きている

犠牲者がいる

ルチルが犯人にされている

目撃者と証拠があるらしい

領主から逮捕命令が出されている




不明、疑問点


爆破方法

爆発事件を起こした理由

ルチルを犯人にした理由

すぐにバレるような冤罪にした理由

今日の爆発で犠牲者がいなかった

他の爆発でも犠牲者がいない時があったのか




 とりあえず現状判明している事などを紙に書き込んでいったのだが、かなり少なかった。


 「全然わかんなかったね。紙がスカスカだ。」


 「だな。もっと色々わかってると思ってたんだけどなぁ。」

また明日。

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