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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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095 変装


 冤罪な上に話を全然聞いてくれない。


 そんな警備隊に腹が立ったルチルが思わず重力魔法をぶっ放した。


 なるほど。


 「いい加減しろ、って感じだったんだろうね。」


 「思わず殴っちまうみてえな感じだな。気持ちはわかるぜ。」


 「私もやっちゃいそう。」


 ルチルが重力魔法を使ってしまった気持ちが凄く理解できる。


 自分がもしルチルの立場だったら?


 まず間違いなくキレるだろう。寧ろルチルはもっと怒ってもいいのではないかとさえ思う。・・・骨とか折ってたのかな?


 「うう・・・、いつもはあんな感じではないんですよ。でも、あの時はもう、我慢出来なくて・・・。」


 「まあ仕方ないよ。」


 メイが慰めるように言葉をかける。確かに、彼女とはまだほんの少し話しをしただけだが、まずやりそうに感じない。どちらかと言えば気が弱そうに見える。


 「まだ色々聞きたい事があるけど、とりあえず移動しよう。」


 いつまでもここにいる訳にはいかない。この瞬間にも警備隊がやって来てもおかしくないからな。


 「わかりました。でも、あの、警備隊に見つかったらマズイですよね。私の見た目が知られてると思いますし・・・。」


 警備隊は町中を巡回しているので、そのまま歩けばまず見つかる。隠れて移動したとしてもどうしたって限界がある。


 隠れる拠点も必要だし。


 という訳なので。


 「変装しよう。」


 そう言ってナインはマジックバッグから指輪を1つ取り出すと、ルチルへと手渡した。


 「これは・・・、なるほど。」


 受け取った指輪をすぐに鑑定したのだろう。ルチルは納得したような表情した。


 「あ、それって染髪の指輪?」


 メイは渡した指輪が何なのか気付いたようだ。


 染髪の指輪(赤)

 

 四足ダンジョンの宝箱から手に入れた、髪の色を変えるだけのアクセサリーだ。


 「そうそう。ちょうどいい物があったと思ってさ。」


 今さっきまで存在すら忘れていたこの指輪。


 理由は不明だがグレンは使いたがらない。ナインとメイはそもそも使えない。そして売るのは何かもったいない。


 そんな訳でマジックバッグの肥やしになりそうになっていたこのアクセサリーに、ついに出番がやって来た。


 「・・・どうですか?」


 「「おおーっ!」」


 ルチルが左手の人差し指に染髪の指輪をはめる。すると彼女の焦茶色の髪が、頭頂部から毛先にかけて、スーッと鮮やかな赤色に変化していった。


 髪色が結構しっかりとした赤色に変化した。これだけでもかなり見た目の印象が変わる。


 そういえばグレンは何も反応していないなと思い、ナインは隣に顔を向ける。


 「・・・。」


 「グレン?」


 そこには口を引き結び、眉を寄せながら、じっとルチルの赤くなった髪を見つめるグレンがいた。表情も暗くみえる。


 それと、何処となくだが彼の目からは、羨むような感情が見えた。気がする。


 もしかしたら、彼の中にある指輪を使いたがらない理由が顔出したのかもしれない。

 

 「・・・何でもねえよ。髪だけじゃまだルチルだってバレるかもしれねえぞ。服も変えたほうがいい。」


 ナインの呼びかけに、少しだけぎこちなく笑うとすぐにいつも通りの表情に戻し、ルチルの変装の話題に加わりだした。


 ナインも何もなかったかのように、会話に戻る。


 「他の色のローブとか持って無いの?」


 「あります。えーと・・・、これとか。」


 そう言ってルチルは杖を置き、リュック型のマジックバッグを地面に下ろすと中からグレーのローブを取り出した。


 「これは、今のローブ前に使っていた物です。カルヴァースに来てからは着てないのでこれなら大丈夫だと思います。」


 「ならそれが良さそうだね。」


 「はい。」


 警備隊が見た事ないローブなら問題無いだろう。


 ルチルはそそくさと緑のローブを脱ぎ、バッグにしまうと、グレーのローブを羽織る。そして地面に置いたリュックを背負い、長杖を手にする。


 「どうですか?私って気付かれますかね?」


 パッと見では大丈夫だとナインは思った。だが、メイはダメだと思ったようだ。


 「長杖も変えた方がいいかも。大きい武器だから目立つし、形も覚えられてると思うんだよね。」


 「ああ!なるほど!確かにそうですね。」


 「違う杖は持ってる?」


 「ありますよ。ちょっと待ってくださいね。」


 ルチルは再度リュックを地面に下ろし、バッグの中に手を入れる。そしてすぐに黄色い水晶のような物が先に付いた長杖を取り出した。


 「これならどうですか?これも今の杖の前に使ってたので、この町では出してないのです。」


 「ならそれも大丈夫だね。そっちに変えよっか。」


 「はい。」


 メイがOKを出すと、ルチルはすぐに今使っている地味な木製の杖をしまう。


 「あ、いい物がありました。」


 ルチルが嬉しそうにバッグから何かを取り出した。


 手に持っているものよく見る。どうやらメガネのようだ。


 「これも変装に使えますよね。」


 「そうだな。顔の印象が変わっから、よりルチルだとはバレねえだろうな。つか何でメガネなんて持ってんだ?目が悪いのか?」


 「いえ、視力は普通ですよ。実はこれ、元々魔道具だったんですよ。壊れてしまったんですけどね。」


 持っていた理由を説明しながらルチルがメガネを装着する。


 メガネを着けたルチルは、着ける前よりさらに大人しい感じの女性に見える。これならさらにルチルだとは思われにくいだろう。


 それにしてもあのメガネはどんな魔道具だったんだろうか?


 「それってどんな魔道具だったの?」


 メイも気になったのか、ナインが聞くより先に聞いていた。


 「暗視メガネという魔道具ですよ。その名の通り、暗視効果のあるメガネです。」


 「便利そう。」


 暗視効果があるなら夜の狩りとかにかなり使えるんじゃないか?


 そう思って口に出すが、そんなに都合が良い物では無いようだった。


 「あの、暗視効果はほんのちょっとなので、期待したほどの効果はありませんよ?」


 「そっか、残念。でもちょっと面白そう。直ったら1回だけ使わせてもらってもいい?」


 「いいですよ!他にも色々な魔道具がありますから是非!是非!」


 何気ない感じでお願いしたらルチルのテンションが凄まじい事になった。


 え?なに?魔道具が好きな人なの?


 予想外な反応に若干ビビってしまう。


 「う、うん。あとでね。」


 「はい!」


 とりあえず時間も無いのでこの話は流す事にした。


 そして、ルチルも時間が無いのがわかっているのかこれ以上魔道具の話はせずに、変装の話に戻してくれた。


 「変装はこれで大丈夫でしょうか?」


 元のルチルの見た目は、焦茶色の髪に緑のローブ、そして木製の長杖だった。


 だが今の彼女は、赤い髪にメガネにグレーのローブ、そして黄色い水晶が付いた長杖だ。


 これなら、パッと見ただけではルチルだと気付くことはないだろう。


 「僕は大丈夫だと思う。」


 「私も問題無いと思う。」


 「俺もだ。」


 ルチルの変装に、ナイン達は問題無いと判断した。


 警戒は必要だが、これなら町中を移動してもすぐには気付かれないだろう。


 「それじゃあ移動しようか。」

また明日。

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