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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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093 ルチルミナ

祝!4000PV!


 「大丈夫?追いかけてごめんね。」


 女性が隠れている場所から3メートルほどの位置で止まったメイは怖がらせないよう、出来る限り優しい声で呼びかける。


 「ひっ!?だ、誰ですか・・・?」


 木箱の陰から追いかけていた緑ローブの女性の声が聞こえくる。怖かったのだろう、その声からは恐怖と警戒の感情がかなり感じられた。


 「私の名前はメイ・ウォーカーっていうの。こんな見た目だけど冒険者だよ。」


 ゆっくりとした口調で自己紹介をする。するとほんの少しだけ警戒が解けたのか、女性が木箱の陰からちょっとだけ顔を出した。遠目からだが震えているように見える。


 「あなたのお名前を聞いてもいい?」


 「ル、ルチルミナです・・・。あの、私を捕まえに来た、訳ではないんですか・・・?」


 「話が聞きたかっただけだよ。ルチルミナさんは爆破なんてやってないんでしょ?」


 「やってません!!あ、いや、ごめんなさい。本当に私は何もしてないんです。」


 ルチルミナと名乗った緑ローブの女性は大きな声を上げて無実を主張した。その必死さがナイン達には演技に見えなかった。やはり詳しく話が聞きたい。


 「大丈夫。警備隊とのやりとりから見てたけど、私達はルチルミナさんが犯人だとは思ってないよ。」


 「本当・・・ですか?」


 「うん、話を聞かせて欲しくて追いかけたの。」


 「そうですか・・・。」


 本当は、最初は逃げたから追いかけたのだが、いう必要はないだろう。余計に警戒されるだけだ。


 ナイン達はルチルミナの警戒が落ち着くのをじっと待つ。


 そうしていると、木箱の陰にいる彼女から感じられる気配が少しずつ落ち着いていくのがわかった。


 そろそろかな?と感じたメイが声をかける。


 「詳しく聞かせてもらってもいい?」


 「・・・わかりました。」


 カタカタと音を立て、木箱の隙間からルチルミナが出てきた。


 持っていた長杖が見当たらない。追跡していた道中に落ちてはいなかったので、いつのまにかマジックバッグにしまったのかもしれない。


 「近づいてもいい?あ、後ろの2人も一緒で大丈夫?」


 「大丈夫です、どうぞ。」


 「ありがとう。」


 許可が出たのでメイを先頭にして、ナインとグレンもルチルミナの近くへ移動する。


 ただし、また警戒される可能性があるのでメイの前には行かない。


 「改めて自己紹介するね。私はメイ・ウォーカーだよ。それでこっちの2人はパーティーメンバーだよ。」


 「ナイン・ウォーカーです、はじめまして。」


 「グレンだ。一応リーダーをやってる。形だけだがな。」


 簡単にだがルチルミナに自己紹介をする。


 自己紹介を終えると、ルチルミナの視線が何度もナインとメイを行き来しだした。


 ナイン達は、ルチルミナが何を考えているのか何となく理解する。


 「兄妹です。」


 なのでメイが余計な事を言い出す前に誤魔化してしまうことにした。


 「な!?違うよ!!」


 「ややこしくなるからダメ。」


 「・・・今回だけだよ。」


 どうしても夫婦だと言いたいメイが否定し出したが、今の状況でそれは本当に勘弁してほしかったので釘を刺す。


 何で僕が許してもらったみたいになってるんだ?納得いかないんだが。


 心の中で愚痴を言いながらルチルミナの反応を伺う。だが彼女は、今のやりとりの内容や意味がよくわからなかったらしく、首を傾げるだけで何も言ってはこなかった。


 小さくホッと息を吐き、話を進める。


 「えっとすみません。ルチルミナさん、で合ってましたよね。」


 「あ、はい。ルチルミナ・ファーライドと申します。ルチルで構いませんよ。それと、話し方もそんなに丁寧にしなくて大丈夫です。」


 「あー、わかった。ルチルさん、さっそくで悪いんだけど、爆発が起きた時の状況を教えてもらってもいい?」


 ルチルから丁寧じゃなくていいと言われたので、言葉を崩し、本題に入る。


 本来の予定ではメイが聞く役だったはずなのだが、何故かナインに変わっている事に誰も気付かない。


 「はい。あの爆発が起きる前、私は魔道具屋に行こうとして、爆発した場所のすぐ近くを歩いていたんです。」


 気持ちが落ち着いたルチルが、先ほどの事を思い出しながらゆっくりと話し始めた。


 「そうしたらいきなり爆発が起きて、私、すごいびっくりして、それから、誰かが怪我をしていたら治療しなきゃって思って、急いで爆発が起きた場所に向かったんです。」


 治療しなきゃと考えるルチルは、中々に正義感のある女性のようだ。


 そして、ナインも同じ様な事を考えて爆発現場に向かっていたので、何となくシンパシーを感じていた。


 「でも路地に着いても焼け焦げた跡があるだけで、怪我人はおろか誰もいなくて、どういう事だろうって思いながら立ち止まっていたら、警備隊がやってきたんです。」


 「ん?誰もいなかった?死体とかも?」


 「はい、ありませんでした。」


 ん?という事は今回はただ爆発しただけなのか?


 町中で聞こえてくる世間話なんかでは、この爆発事件で多数の犠牲者が出ていると話していた。なのに今回は死亡した人はおろか、怪我人すらいない。


 犠牲者や怪我人が出なかった爆発があったのかな?


 今までの爆発事件でどれだけ犠牲者が出ているのか、詳しく調べたほうがいいかもしれない。


 「ありがとう、続きをお願い。」

また明日。

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