085 久々の空
祝3000PV!!
ありがとうございます!!
「・・・り!あ。」
転移門が起動し、僕達は一瞬にしてダンジョン入り口横に移動した。
叫び声を上げている途中に転移されたために、最後の一音だけがダンジョン周辺の森にこだまする。
「悪い。ゆっくり起動すりゃよかったな。すまんすまん。」
驚きから呆然とした状態になった僕に気付いたグレンがニヤニヤしながら謝罪してきた。全く悪いと思ってなさそうだ。
だが、危険が無いものにびくびくしていたのが何だか恥ずかしいので、出来れば何もなかった事にしてもらいたい。
「いや・・・、大丈夫。それより今って何時くらいかな?」
強制的に話を変えようと時間を確認する。
アルトの町からダンジョンまでは5時間半ほどかかったのだ。現在時刻によってはかなり急いで戻らなきゃいけなくなる。
「えーと、お昼ちょっと前だね。」
メイは顔を上に向け、太陽の位置から時間を確認した。
「昼前か、ならちょっとだけここで休憩してから行かないか?ボス戦終わったばっかりだから少し疲れた。」
「俺も休みてえな。あと少し腹減った。」
僕が2人にそう提案すると、グレンも賛同してくれた。
確かにお昼前ならお腹が空いても仕方ないだろう。
「じゃあ少し休もっか。」
メイも休憩に賛同し、僕達はダンジョン横の空いたスペースに移動する。そして各々適当に地面に座ると休憩を開始した。
グレンはマジックバッグからいつもの携帯食料を取り出して食べ始めている。とても不味そうな顔をしながら。
僕とメイは比較的綺麗そうな場所に並んで座り、交代で水筒から水を飲む。
「うへへ、間接キスだね。」
少女がしてはいけないような顔をしている。その姿でそういう事を言うなと何回か伝えているのだが、全く覚えていないらしい。
「はいはいよかったね。ステータス。」
「むぅ。素っ気ない。何してるの?」
「言ってる時の顔がヤバいんだよ。それと、今のうちにスキルいじろうと思っただけだよ。」
ニヤついたメイに適当に返事をしながらステータスを開き、セットしているスキルを確認する。
おそらくさっきのボス戦でスキルレベルが上がり、進化できるものが増えているはずだからだ。
「お、武術と魔力感知が30になってる。進化させちゃおう。」
ぱぱっとSPを使用して2つのスキルを進化させる。武術が武道に、そして魔力感知は魔力感知Ⅱになった。
だがやる事はこれで終わりでは無い。
ステータス画面からスキルリストを開くと目的のスキルを探して取得する。
選んだのは双剣とMP回復UPだ。
取得が完了するとすぐにステータスのスキル欄に戻り、スキルの付け替えをする。
今回取得したスキルと入れ替えるのは空中跳躍と疾走だ。
「・・・よし。これでいいかな。」
思考操作でささっとスキルの入れ替えを終わらせ、ステータス画面を確認する。戦闘時の動きに関わるスキルを外しているので最初は違和感が出そうだが、慣れれば問題無いだろう。
「終わったの?見せて。」
僕の横で大人しくしていメイが終わったのを見計らってお願いしてくる。一応気を遣ってくれていたのだろう。
「いいよ。はい。」
メイになら見られても困りはしないので、ステータス画面が見えるように少しだけ腰をずらして彼女に寄る。
ナイン・ウォーカー
Lv.19
HP:460/460
MP:32,539,861/32,558,419
AP:450/450
EXP:920/1800
STR:58+5
VIT:39
DEX:45
AGI:47+5
MGI:55
SP:29
エクストラスキル
<---><---><--->
スキル
<長剣Lv.3><武道Lv.1><双剣Lv.1><魔力制御Lv.4><魔力感知ⅡLv.1><身体強化Lv.25><鑑定ⅡLv.2><気配感知Lv.8><思考強化Lv.4><MP回復UPLv.1>
「ふむふむ、双剣とMP回復UPを取ったんだね。でも空中跳躍と疾走は外して良かったの?」
僕のセットしているスキルをざっと確認したメイが入れ替えた理由を聞いて聞いてきた。
空中跳躍なんかはアクアタイガー戦で最後に使用したりしてたので気になったのだろう。
「疾走に関しては足が早くなるのはいいんだけど、効果はそれだけだからな。それに空中跳躍も便利なんだけど、シールド使えば似たような事が出来るし。」
疾走も進化すれば瞬歩になり、疾走の効果と一時的に移動速度が上昇するアーツを覚えられるが、これもまだ試していないがやり方次第では似たような事が出来そうだった。
「なるほどねー。」
「双剣を取った理由はメイが見せてくれた戦い方の影響があるかな。一応自分流は考えてるけどね。」
「そうなんだ。でもそれがいいよ。参考にするならいいけど、完全に真似だけしちゃうとその先が無いからね。」
双剣を取得した理由を伝えると、メイはそう言って忠告のようなアドバイスをくれた。
まあ僕も、真似だけするのは違うなと思ったので投擲は取らなかった。自分が思い描く戦闘スタイルには武道スキルの方が合っていると思ったのもあるが。
「そうだな。」
「MP回復UPは?」
「これに関しては、正直今は必要無いんだよ。でもこの先の事を考えてスキルレベルを上げておいた方がいいと思ってさ。」
いざ必要になった時にスキルレベル1で効果が低いはマズいからな。それにこのスキルも僕が考える戦闘スタイルに必要になる。なので今からだ。
「あー、私がそれだったわ。最初は必要無いなあって思って取らなかったんだけど、今の戦闘スタイルになった時にMP回復量が全然足りなくてね。急いで取得してレベル上げしたんだけど、すぐには上がらなくて大変だったなあ・・・。」
遠い目をしたメイが少しだけ早口になって自身の失敗談を語る。話すにつれて段々と苦い表情になっていった。
「そうか。それじゃあそろそろ町に戻ろうか。グレンも食べ終わってるし。」
よっぽど大変だったのだろう。だが触れて面倒くさくなっても困るので流す事にした。
それに、向かい側に座るグレンがちょうど携帯食を食べ終わったところだったので、移動を開始するにしてもいいタイミングだろう。
「そうだな。話に聞こえてたがスキルの付け替えなんかも終わってんだろ?なら行こうぜ。」
すぐに移動を開始するつもりなのか、グレンは僕の提案に了承するとささっと荷物の確認をしてから立ち上がる。
それに続いて僕も手早く荷物の確認をして立ち上がり、グレンの元に歩いていった。
「あ、待って!えっと・・・、よし、忘れ物無し。ちょっと置いてかないでよ!」
僕が側を離れた事で正気に戻ったメイは急いで周囲を見まわして荷物の確認をし、文句を言いながら僕の横まで走ってきた。
その後、ぷりぷりと怒りながら文句を言うメイを宥めながら、僕達はアルトの町に向かって森を進んでいった。
ちなみに、手を繋いであげると速攻でご機嫌になった。
やっぱりチョロいと思う。
「あー、やっとベッドだ。布団薄っすいけのどベッドだ。」
あれから急いで町まで移動し、何とか夕方前くらいに門前に到着する事が出来た。ただし、町に入るにあたって重要な事を忘れていた。
メイの身分証が無い事と、服がぶかぶかな事だ。正直すっかり忘れていた。グレンもメイ本人も忘れていた。
「寝ちゃダメだよ。買い物行くんでしょ?」
僕達は町から少し離れた場所で、何とかそれっぽく聞こえる筋書きを考えた。
メイを僕の妹にし、この町で合流予定だったが心配で迎えにいった。すると魔物に襲われて逃げているところに遭遇した。僕達は何とか助け、こうして町までやってきた。荷物は魔物に襲われた際にほぼ全て無くしてしまったことにした。
「・・・そうだな。早く終わらせないととグレン待たせちゃうし行くか。」
その時はこれでいける!っと思ったが、グレンに嘘発見の魔道具使われたら終わりじゃねえか?と言われ、結局ボツになった。
ではどうやって町に入ったか。それは至極単純な方法だ。
メイの肉体を一旦魔力に戻して消し、魔石の状態に戻す。そしてそれを持って町の中に入り、物陰で再度肉体作成をした。これだけだ。
「まずは服だね。その後はマジックバッグかな?」
その後は急いでメイに服を着せると真っ直ぐギルドに向かい、ダンジョンで手に入れた素材の売却をした。ボス素材もあったので中々の金額になり、合計で17万トリアになった。
それから僕達はその場でささっと売却金を分配し、ダンジョン前日に一泊した金の羽亭に向かった。
「うん。あ、でもメイのマジックバッグに使うEランク魔石も探さないと。」
幸い部屋は空いていたので僕達は一人部屋を2つ確保し、夕食の時間まで自由時間にしようと決めた。
そうして僕達は宿の一階で解散し、僕とメイはとりあえず部屋に向かった。そして僕は部屋にあった久々のベッドに感動して思わず寝転んだ。
「そうだったね。じゃあ時間も無いし急いで行こっか。」
「ああ。」
まだ横になっていたいがベッドから何とか体を起こし、メイと共に部屋から出る。
そういえば服が売ってる店がわからないなと気付いた。だがここの店主に聞けばいいかとすぐに思いつき、僕は部屋の鍵を閉め、メイを連れて店主のおばさんがいたカウンターに向かった。
作者都合により1週間お休みさせていただきます。
次回更新は4月5日です。
それではまた来週。