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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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081 ボス戦1


 軽い地響きと音を立てて扉が開いていく。


 まだ剣は構えず、少しずつ見えていくボスの間を見据える。地図で確認したが、ダンジョンボスは奥にいるらしい。そこそこの広さをしているのでまだその姿は見えない。


 やがて扉は開き切り、5階層に無音が訪れた。


 「とりあえずいつも通り僕が先頭で行くね。」


 「ああ、作戦は敵の配置見てだな。」


 グレンと簡単な方針を決めると扉を潜ってボスの間に侵入していく。


 アルトの町のギルドと地図でダンジョンボスについては聞いている。Dランクのエアーウルフ5体とCランク下位のウインドウルフが1体だ。


 いきなり襲ってくることは無いと思うが、一応警戒しながら奥に進む。


 進んでいくと奥に何かがいるのが見えてきた。


 まだ20メートルほど距離はあるが、エアーウルフ5体が横に並び、その後ろにウインドウルフがいる。


 エアーウルフは道中で何度か遭遇し倒している。緑色の少し大きめなオオカミといった感じの見た目だ。使ってくる魔法も風魔法のエアーカッターくらいである。その魔法も発動に時間がかかる上に、カッター自体が小さいため、よく見れば避けれるレベルだ。


 ウインドウルフとは初めて遭遇する。色がエアーウルフの緑色より若干濃く見える。そしてサイズが一気に大きくなり、エアーウルフの倍くらいありそうだ。地図に記載された簡単な事前情報では、エアーカッター、エアーシールド、エアーアロー、エアーエンチャントと、4種類程の風魔法を使う上に、エアーウルフより魔法の発動と速度が早いので注意が必要なようだ。


 「横並びか、面倒臭え。あれ絶対バラけて突っ込んでくるぞ。」


 「じゃあ少しだけ距離を空けて並んで戦うか?フォローしやすいだろ?」


 「ウインドウルフまで突っ込んで来られたらさらに面倒だぞ。どうすんだ?」


 ボスの手前で立ち止まり、小声で作戦会議を始める。


 確かにボスまで来られたら面倒だな。ふむ。なら足止めするか。


 「エアーウルフが動いて、ウインドウルフも動きそうだったら僕が遠距離で足止めするよ。たぶん、10秒くらいなら何とか出来ると思う。」


 集中して無理矢理やればいけるはずだ。何となくだが感覚はわかっている。


 「んじゃそれで行くか。俺は左、ナインは右な。間は2メートルから3メートルくらいでいいか?」


 何をどうやって足止めするのかまだ言っていないが、グレンは僕の提案に納得した。そしてぱぱっと配置を決めていく。


 「いいよ。それと先に手の空いた方がウインドウルフの注意を引くって感じでもいい?」


 「ああ、それでいい。ウインドウルフに関しては動き見てその場で決めっか。まずは雑魚掃除だ。」


 あまり長くは足止め出来ないので、その後の方針も決める。ウインドウルフとの戦いは若干行き当たりばったりの臨機応変対応だ。


 「よし、じゃあ戦闘開始だ。」


 「おう。」


 「頑張ってー。」


 僕とグレンは作戦を決定するとすぐにエアーウルフに向かって走り始めた。


 それと後ろからメイの気の抜ける応援が聞こえた。無視するのも何なので、軽く手だけ振っておく。


 「グルルル・・・。ガウガウ!!」


 作戦で決めた通りグレンが左、僕が右で近づいていくと、エアーウルフ5体が唸り声を上げて走り出してきた。


 走る向きからしてどうやら僕に2体、グレンに3体のようだ。強い方に多くいったのだろう。だが僕はウインドウルフの足止めをしなければいけないので、数が少ないのは正直助かる。


 「っ!動くぞ!!」


 グレンの声を聞き、奥を見る。ウインドウルフが今にもこちらに向かって走り出しそうにしていた。


 止める!ぶっつけ本番だがいけるはずだ。

 

 「止めるよ!マジックソード!」


 僕の左側に半透明の魔力剣が1本出現する。


 今更声に出さなくても発動出来るが、今回は集中力を上げるためにあえて魔法名を口に出す。そして意識してイメージと魔力を強くし、魔力剣の強度と完成度を上げていく。


 いける。いけると思え。


 密度が上がっていったのか、メイが出していた魔力剣のように透明感が薄れ、白に近づいていく。


 よし。この感覚だ。記憶しろ。次は。


 魔力剣の完成度が高まったので、次は自分と魔力剣を繋いでいる魔力を操作する。魔法名なんかは考えてないので全てイメージと意思での操作だ。


 魔力剣と繋がっている部分の魔力を強くして・・・。前方に、強く、飛ばす!!


 「飛べっ!!」


 ビュンッ!!!


 魔力剣に命令するように言葉とイメージで指示を出す。すると空中に浮いていた魔力剣が狙い通りウインドウルフに向かって飛んでいった。


 ただし縦に回転しながらになっていたが。


 「あっ!くうー!!ちょっと失敗した!!」


 僕がやったのはメイが見せてくれたマジックソードを飛ばす技だ。


 元々アクアタイガー戦の時に魔力剣を動かす感覚を少しだけ掴んでいたので、メイの戦闘を見た時に同じ事が出来るような気がしていたのだ。


 これならマジックショットよりも物理的な威力が大きく速度も早いので、牽制や足止めにはちょうどいいと思った。


 「ッ!!ガウッ!!」


 ザクッ!!


 今にも走り出しそうにしていたウインドウルフは、自身に向かって回転しながら飛んでくる魔力剣に気付くと後ろに跳んで回避した。


 外れた魔力剣は地面に刺さり、空気に溶けるように消えていく。


 「くそー。もう一回!」


 感覚は覚えた。後は発動速度と安定性を上げる。イメージを圧縮して工程を短縮しろ。


 頭の中で自身にそう言い聞かせると、今度は魔法名を言わずにマジックソードを発動する。


 再度僕の左側に現れた魔力剣は1度目とは違い、最初から透明度の薄い白色をしていた。


 「よし。行け!」


 そして1度目の時と同じようにイメージと魔力制御でウインドウルフを狙って撃ち出す。


 それと同時にエアーウルフが僕に飛びかかってくる。


 「邪魔だ!今練習中なんだよ!」

また明日。

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