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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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080 準備とボスの間


 「ごめんね。昔から朝はどうしても苦手で・・・。」


 僕の横に座って不味い携帯食を食べるメイが、しょんぼりしながら呟いた。


 大丈夫。わかってた事だから。


 「気にするなって。いつもだろ。」


 「うっ・・・。」


 しまった、フォローになってなかった。まあいいか、これもまたいつもの事だ。


 「そんな事気にしてないで早く食べて準備しよう。今日でダンジョンも終わりなんだから。」


 やっとこの洞窟みたいなダンジョンから出れるのだ。


 もちろん最初は楽しかった。だが段々と美味しいご飯とベッドが恋しくなってしまった。この携帯食料が大体の原因だけど。


 「わかった。そうだナイン。スキルの確認はした?進化しそうなのあったでしょ?」


 話題を変えた事でしょんぼりメイちゃんがいつも通りに復活した。そしてスキルの確認をしろと言ってきた。


 確かにあったな。どれ。


 「おー、色々上がってるな。それに何個か進化出来るようになってる。」


 剣に魔力操作、それに鑑定のレベルが30になっていた。


 スキルレベルが30になるとSPを使って進化出来るので、早速やってしまう。ついでにスキルの見直しもしておこう。


 「あとボスだけだよね?」


 「ああ、帰りは転移門が出るからそれで終わりだ。」


 道中で教えてもらったのだが、ダンジョンボスを倒すとダンジョン入り口までの転移門が出現するらしい。聞いた時はかなり驚いた。便利過ぎない?


 「了解。」


 ならば、このダンジョンの罠も慣れてきたし、罠感知はいらないな。外そう。とりあえずこれでいいか。


 他に入れ替えようと思っているスキルもあるが、こっちは進化してからにする。


 スキルリストから新スキルを取得し、セットする。


 「よし。今はこれでいいかな。ボス戦が終わったらまた確認するか。」


 新たに取得したスキルは、メイが持っている思考加速の進化前の思考強化だ。魔力制御や戦闘に役立つとのことなので、今後を考えれば重要だと判断した。


 まずはどんな感じか試してみよう。


 早速スキルの使用を意識してみる。


 「・・・やっぱりまだわからないな。」


 「何が?」


 「思考強化を使ってみたんだけど、強化されたのかがわかんなくて。」


 「あー、まだレベル1だからね。」


 思考速度が強化されたのかまったくわからない。ただそれも仕方ないだろう。何せメイの言うようにまだレベル1なのだから。


 今後スキルレベルが上がっていけば、効果も実感出来るようになるのだろう。そう思い、スキル使用を止めた。


 「とりあえずはスキルレベルが上がるように積極的に使っていくか。」


 「そうだね。さて、私の準備は終わりと。ナインは?」


 僕がスキルであーだこーだしている間にメイは準備を終わらせていたようだ。


 「僕も大丈夫。そんなに物持って無いからな。」


 出した物も寝床に使ったマントと皮袋、水の魔道具と携帯食料だけだ。マントと皮袋は食事前にしまったし、魔道具は今しまった。最後の食料は食べたので準備と片付けは終わっている。


 グレンは終わっているのかなと思い、視線を向ける。


 「グレンは・・・。準備バッチリだね。」


 「慣れてっからな。」


 そこには準備も片付けも終えたグレンが立っていた。待たせてしまってたようだ。


 全員の準備が終わっているので僕は最後にセーフティエリア内を見回す。


 「忘れ物は無いね。それじゃあ行こうか。」


 問題無さそうなので出発するとしよう。


 「ああ。」


 「はーい。」


 2人のいつも通りの返事を聞きセーフティエリアを後にする。これから向かうは5階層。ボスの間だ。


 僕とグレンはボス戦に少し緊張しながら。片やメイは足取り軽く。そんな対照的な様子を見せながら、僕達はダンジョンの奥へ進んでいった。












 「・・・大きいな。ちゃんと開くのか?」


 僕達は現在、5階層に降りてすぐの場所にいる。


 セーフティエリアを出て30分。魔物に遭うこともなく、真っ直ぐやってきた。


 「軽く押すと勝手に開くぞ。それより準備出来てんのか?」


 大剣のチェックをしながらグレンが教えてくれた。不思議扉らしい。


 「大丈夫。」


 腰に差した水虎の長剣を抜き、右手に持つとグレンに頷く。僕の準備はこれだけだ。


 グレンは僕に頷き返すと、次にメイに視線を向ける。


 準備が出来てるかの確認だろう。そう思っていると。


 「今回、私は戦わないよ。2人で頑張ってね。」


 メイがボス戦への不参加を告げた。


 「は?何でだ?」


 言ってる意味がわからず、視線だけ向けていたグレンが体ごと振り返ってメイに問う。


 調子が悪いとかでは無いと思うが。僕も不参加の理由が全然わからない。

 

 「このダンジョンに来たのって、魔石を手に入れる為っていうのとは別に、2人が強くなる為に来たんじゃないの?」


 「まあ、そうだね。」


 ダンジョンが気になるってのもあったけど、もっと強くなる為に来ている。


 「それならいいの?私が参加したらすぐ終わっちゃうよ?確かに経験値は楽に手に入るね。でもそれって2人の為になるの?」


 メイに言われて考える。


 メイに参戦してもらって簡単に戦闘が終わり、特に何もせずに経験値が手に入る。その結果レベルが上がりステータスが上昇する。


 確かに強くはなれるだろう。だが、それはステータスだけ見た強さだ。経験値ではない経験は手に入らない。スキルレベルも上がらないし、技術も鍛えられない。何より、実戦の感覚が得られない。


 それではダメだろう。それでは強いとは、強くなったとは言えない。


 僕達はレベルだけではない強さを求めているのだ。


 「・・・そうだな。それじゃあ強くなれないな。」


 「ああ、だな。」


 僕の言葉にグレンも同意する。メイの言う事に彼も納得したのだろう。


 「わかってくれたところでアドバイス、っていうか忠告ね。2人とも、ステータスを信用し過ぎちゃダメだよ。」


 いきなりの忠告に理解が追いつかない。どういう事だ?信用?


 「よくわかんねえな。どういう事だ?」


 グレンも理解出来なかったのか、メイに詳しく聞いている。


 「ごめんね。これに関しては私の秘密とは違って、教える事は出来ないんだ。ただこの言葉を覚えておいてほしいんだよ。頑張ればいつか理解出来る時がくるから。」


 そう言ってメイは申し訳なさそうな顔をした。


 メイの秘密とは関係無い。だが教えられない。話の流れから考えて、強くなる為に重要な事という感じだろうか。


 信用し過ぎちゃという言い方だった。信用するなとは言ってない。ほどほどという事か?わからん。


 「流れ的に、強くなる為に覚えておけって事か?」


 「うん。さっきも言ったけど、いつか理解出来る時が来るから。」


 「わかった。覚えとくよ。」


 「よくわかんねえが俺も覚えとく。」


 意味はよく理解出来なかったが、メイが覚えておけと言うなら覚えておこう。言い忘れの多い彼女が言うくらいだ、それだけ重要なはずだ。


 メイは僕達の言葉に満足そうに頷いた。そして少しだけ後ろに下がっていった。戦闘に参加しないからだろう。後は僕達で頑張れという事か。


 「よし、じゃあ行くぞ。」


 気合いを入れ直し、横にいるグレンに声をかける。


 「ああ、ボス戦だ。」


 グレンも気合いを入れ直したのか、真剣な声が返ってきた。準備万端のようだ。


 僕は前に向き直り、左手で扉に触れるとグッと押してみる。するとほんの少しの抵抗のあと、扉が自動で動き出した。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。


 軽い地響きと音を立てて扉が開いていく。

また明日。

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