007 森を進む
今日は2話投稿です。
石の建物を離れ、草地と森の境を越える。
ここからは完全な森だ。
方向を見失わないように気をつける事を意識する。
それはそれとして・・・
「なぁメイ。これ、方向ってこっちで合ってる?」
移動を始めたが、そもそも街の方向は聞いていなかった。
聞かされることが多くて普通に聞き忘れてた。
『合ってるよ。あの建物の正面から真っ直ぐ進めば大丈夫。』
メイが自信満々な様子で答えてくれた。
「そっか。それじゃあ迷わないように時々左右の山脈を確認してくか。森を出るまでどのくらいかかる?」
山脈が見えてて助かった。
とりあえず森が深くなったら木に登って山脈を確認しよう。
あとは時間だなぁ。
太陽がほぼ真上にあるので今は大体正午くらいだろうと当たりをつけてメイに聞いてみる。
『それがいいね。流石に年数経ってるから森の見た目が違って案内できないしね。』
まぁ数百年単位だからな。
『それとナインの足だと出口まで、たぶん丸一日かかるよ。』
付け足すように凡その必要時間を告げてくる。
「やっぱりそのくらいかかるよなぁ。」
わかっててもげんなりしてしまう。
気分が落ちて顔も下を向いてしまった。
足元を見ながら無言で歩き続ける。
すたすた。
すたすたすた。
『あー・・・、うん。』
メイが何か言いたいようだが、なぜか口篭っている。
気にさせてしまったのだろうか?
『えっと、私は気にしないんだけどね。私はナインの目を通して外を見てるんだよ。だから下ばかり見てないでちゃんと前を見ようね。』
・・・ん?
思ってたことと違った。ていうか・・・。
僕の目を通して見てる?
じゃあ下を見てる今の視界も?
「そうか・・・。」
僕はゆっくり顔を上げた。
顔を上げてから10分程、お互い無言になって森を進む。
どうしようか。
この変な空気を変えようと考え続ける。
うーん。
何かないだろうか。
頭を悩ませていると少し前に話したスキルのことを思い出す。
そうだった。あとでスキルを見ようと思ってたんだった。
「ステータス。」
気づいてすぐにステータスを開く。
『どうしたの?』
いきなりステータスを開いたことで、メイは怪訝になりながら声をかけてくる。
「スキルを見て、何か取得しようと思ってさ。そうだ、オススメがあったら教えてくれないか?あと取得方法も教えてほしい。」
言いながらスキル欄を確認する
エクストラは三個、通常のスキルは十個まで有効化できるみたいだ。
何が取得できるのかリストを出してみよう。
ずらっと現在取得可能なスキルが出現する。
うーむ、いっぱいありすぎてわかんないなぁ。
『オススメかぁ。とりあえず鑑定は取っといたらいいんじゃないかな?強くなるスキルじゃないけど、一ポイントで取得できるし、スキルレベルも上がりやすいし、スキルレベルが上がれば人以外の名前とかレベル、HPとかが見れるようになるよ。それとスキル取得とかは全部思考操作だよ。取りたいものがあったら"取得"って念じてね。』
ほう、鑑定か。
えーっと・・・。あ、これだ。よし、取得っと。
言われた通りに念じると、SPを一ポイント使ってスキルリストから鑑定が取得された。
取得するとそのままスキル欄に装着され、有効化される。
『疑う事なく取得したね。よかったの?』
「運命共同体なんだろ?」
自分で言ってたじゃないか。
『ふふ、そうだったね。』
嬉しそうに、そして少し照れた反応をメイはしていた。
その反応に僕も少し照れてしまう。
「さて、他はどうしようか?」
誤魔化すように話を進める。
実際一つしか取得していないので、他にもあるなら聞いておきたいからだ。
『うーん、今は武器もないから武器系のスキル取っても仕方ないしなぁ。森にいるから気配察知とかだったらいいかも。スキルレベルが低いうちは察知範囲が狭いけど、上がれば少しずつだけど広がるからね。』
なるほど。
確かに察知できれば危険を回避したりもできるし良さそうだ。
取得っと。
すぐに気配察知スキルをリストから取得する。
『あとは、隠蔽とかかな。発動すると自分の気配を減らしてくれるスキルだよ。激しい動きとか大きな音とか声を出さなければ動いても切れないって特徴があるね。ちなみに似たスキルで潜伏っていう気配だけじゃなくて存在感を減らすスキルがあるんだけど、潜伏の場合は少しでも動いたり音を出すとスキルの効果が切れちゃうんだ。』
つらつらとオススメスキルと注意点、そして似たスキルの説明をしてきた。
ふむふむ。
戦闘スキルではないけど今この森を出るとなると必要だろう。
気配察知で敵を見つけ、鑑定で確認し、隠蔽でその場を離れる。
うむ。完璧だな。
想定と納得をしてすぐさまリストから隠蔽を取得する。
これでスキル欄に三個のスキルが装着され、SPはゼロポイントになった。
やることも終わったので、歩きながら操作していたステータスを念じて閉じる。
「よし。これで大丈夫だな。そうだSPってどうやって増えるんだ?」