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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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077 変化無し!


 「あった!宝箱!」


 4階層を半分ほど進んだ時、喜びを多量に含んだ少女の大きな声がダンジョンに響き渡った。


 ダンジョン内では魔物が寄ってくるので基本大声は禁止である。


 「何!?2つ目か!」


 ただわかってはいても嬉しいものは嬉しいので、僕もしっかりと大声で答えてしまった。


 「お前ら静かにしろ。・・・ほら、寄ってきたじゃねえか。」


 1番後ろにいるグレンが呆れ声を滲ませながら魔物の接近を伝えてくる。大変申し訳ない。


 彼はメイの戦闘を見た結果、その瞬殺具合に驚き過ぎて固まってしまっていたが、見事にすぐ復活した。


 あの後10分くらい口が空きっぱなしだったのは見なかったことにしよう。


 「すまん。戦闘準備!」


 「ごめんね。」


 気配感知を使用して接近する魔物の数を確かめる。


 あの後、気配察知のスキルレベルが30になったのでSPを3使用して気配感知に進化させた。これで察知範囲が20メートルほどになった。


 「えーと、3体か。じゃあ1人1体で。」


 「はーい。」


 「あいよ。」


 1番前にいる僕が皆んなに指示を出す。メイが合流してから何故か自然と僕が指示を出す形になっていた。


 あれ?僕パーティーリーダーじゃないよな?


 パーティー申請時にグレンをリーダーにしたはずなのだが。まあいいや、とりあえず早く倒して宝箱を開けるとする。






 「よし、終わりだな。じゃあ開けよう。」


 1人1体なので十数秒で戦闘は終了した。因みに一番時間がかかったのが僕である。悔しい。


 ちょっとだけ落ち込みながらドロップ品を拾いつつ宝箱に近づく。


 「罠は・・・、たぶん無いな。よいしょっと。」


 罠感知スキルに反応は無かったのですぐに宝箱を開ける。スキルレベルの低さで罠が反応しなかった可能性もあるがそれはそれだ。その時は大人しく食らっておこう。


 開いた宝箱の中を見るとこのダンジョンでは見たことがないものが入っていた。


 「何だこれ?指輪?」


 「指輪?てことはアクセサリーだね。効果は?」


 「ちょっと待って。鑑定。」


染髪の指輪(赤)

等級:D

種別:アクセサリー

効果:染髪(赤)

耐久値:200/200


 何だこれ?


 「染髪の指輪(赤)だってさ。」


 ステータス強化のアクセサリーじゃないのか。残念だ。


 「また変なのが出たね。・・・これ、髪の毛の色を変えるだけのアクセサリーだね。」


 「やっぱり名前通りか。」


 変装用というところだろうか。何にしても僕たちには使い道の無いアクセサリーだ。いや、無くもないかもしれない。


 僕は自分の真っ白な髪を手に取り、じっと見つめる。染髪の指輪でこの目立つ髪の色が変わるのなら使えるのではないか?


 「何?私と同じ色は不満なの?」


 「そ、そんな事ないよ。」


 「そうだよね。そんな訳ないよね。」


 「もちろんさ。」


 言葉は普通だが凄まじい目力で圧をかけられた。やめてくれ、ちょっと派手だと思っただけだ。


 だが物は試しだ。


 「一応どんな感じなのか試してみるよ。」


 「いいけど、意味無いと思うよ。」


 どういう意味だ?


 メイの言葉の意味がよくわからず、首を傾げながらも左手の人差し指に指輪を嵌めてみる。


 「え?あれ?」


 「ほら、やっぱり。」


 装着した結果、メイが言った意味が無いという意味がわかった。


 「何で変わらないんだ?」


 僕の髪の色は変化せず、真っ白なままだった。


 壊れてるのかと思い、再度指輪を鑑定する。だが表示された耐久値が減っている様子はない。壊れているわけではなさそうだ。


 「私がそうだったからナインもだと思ったけど、やっぱり変わらなかったね。」


 「メイも?」


 メイもそうだったという事は、過去に試して変わらなかったという事だろう。


 「うん。何でなのかはかわかんないんだけど、私って見た目を変化させるアクセサリーとかの効果が発揮されないんだよ。魔石なのか魔人だからなのかが原因だとは思うんだけどね。」


 そうなのか。


 理由は不明だがメイは見た目を変える事が出来ない。そして僕も髪色を変えるアクセサリーが使えない。


 という事はこの指輪だけでは無く、メイと同じように僕も見た目を変えるアクセサリーが使えないということになるだろう。


 戦闘力に関係する事ではないが、ちょっとだけ残念だ。


 「効果が見たいならグレンに着けてもらえば?」


 「それもそうだな。というわけでグレン。」


 指輪を外し、僕とメイの後ろにいるグレンに手渡す。だが何故かグレンは指輪をじっと見つめるだけで着けようとはしなかった。


 「俺は・・・、やめとく。悪いな。」


 少しだけ思い詰めたような表情をしたグレンは、指輪を着けずに僕に返す。そして小さく呟くようにそう言った。


 「そっか、わかった。とりあえずこれは僕が持っとくよ。」


 グレンにしては見た事ない反応だったので、内心かなり驚いた。だが、彼にも何か事情があるのだろうと思い、何も聞かずに指輪を受け取ったポケットにしまった。


 話す話さないはグレンが決める事だ。僕はただ彼が話そうと思う時まで何も聞かない事にする。


 まあどうしても聞かなきゃいけない状況になったら聞くけどな。

 

 「そろそろ先に進もっか。あと半分あるしもう1個くらい宝箱あると思うんだよね。」


 メイもグレンの様子を察したのか、明るい声で話題を変えてくれた。


 「そうだな。1個か、あって2個だろうな。じゃあ行くか。」


 「うん。」


 メイと会話しながら周囲の確認をする。魔物の気配も忘れ物も無いようだ。


 確認を終えて移動を再開する。


 僕、メイと進みだし、今だに無言のままのグレンが最後尾を歩く。


 彼の事だ、僕たちが気を遣って触れないようにしている事に気づいているだろう。


 「・・・ありがとよ。」


 だから、後ろから聞こえてきたその言葉を、僕とメイはあえて聞こえなかった事にした。

また明日。

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