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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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075 メイの戦い?


 「なかなか出てこないね。」


 4階層の探索をしつつ、魔物を探して早30分。


 宝箱を見つけるまでの1時間ほどの間にあれほど現れた魔物と全然遭遇しない。メイの戦闘を見せてもらう予定なので早く現れてほしいものだ。


 探していない時は次から次へと現れるくせに。と心の中で悪態を吐きながら、地図を持つグレンの指示でダンジョンを進む。


 「こんだけ進んで遭遇しねえんだ。そろそろ来んだろ。」


 一番後ろにいるグレンがまた根拠の無い予想を立てた。本当か?とも思ったが、これまでにも何度かグレンの予想通りになっているのであながちバカに出来ない。


 因みに今の隊列は僕、メイ、グレンの順だ。まだメイの戦闘方法がわからないのでとりあえず間に挟んでおいた。


 「だってさ、メイ。そろそろ来るぞ。」


 「え?本当に?信じるの?」


 僕の後ろから冗談でしょ?とでも言いたげな雰囲気の声が聞こえる。


 「いや、信じてないよ。でも信じても信じなくても一緒かなって思って。」


 別に出なかったら出なかったねで終わるし。


 「それもそうだね。」


 僕の考えを察したメイも納得したようだ。まあ出てくれるのが1番なんだけど。


 「お前ら・・・。勝手な事ばっか言ってんな。」


 グレンが後ろから呆れた声と目を向ける。だが声は聞こえても後ろは見てないのでどんな目で見てるのかは2人にはわからない。


 グレンは言っても無駄だと思ったのか懐から地図を出してルートの確認を始めた。


 「一応伝えておくけど、戦闘が始まったらすぐ終わるからちゃんと見ててね。」


 「ん?そんなにすぐに倒せるのか?」


 「まあね。見てたらわかるよ。」


 「わかった。」


 どんだけ強いんだよ。


 断言するメイにちょっとだけ怖くなってしまう。喧嘩したら速攻でボコボコにされるな。気をつけよう。


 そうして後ろを歩く少女に恐怖を感じていると気配察知に何かが引っかかった。恐らく、というか十中八九魔物だろう。


 「っ!前方17メートル先に2体!メイ!」


 「行くね!」


 距離と数を後ろの2人に伝え、メイと位置を入れ替える。ここからは先程話した通り、メイ1人での戦闘だ。どんな戦い方なのかとても楽しみだ。


 「お!ついに来たか。んじゃ、俺らは後ろで見てようぜ。」


 「ああ。」


 グレンが僕の隣まで歩いてくると腕を組んで見守り始めた。その戦闘する気のない体勢に万が一があるとも思っていないようだ。


 かく言う僕も腰の剣に手すらかけていない。


 そうして後ろからメイを見ていると、前方からDランクのサンダーフォックスが2体現れた。


 遠目に魔物の姿を確認したメイは背負っている長剣を少し手こずりながら抜く。


 「よっと。使わないけどとりあえず抜いとくね。それじゃあいくよ。マジックソード。」


 使う予定が無いらしい長剣を右手に持つと、メイは僕もよく使うマジックソードを発動した。


 するとすぐに彼女の左右に半透明の長剣が2本浮かび出す。


 魔力制御の差なのか、同じマジックソードでも完成度が全くもって違った。しっかりと長剣の形をしており、魔力の密度も高い。強度も切れ味も凄そうだ。


 僕がマジックソードの完成度に目を向けていると、メイは右手の長剣を持ち上げ、切先を魔物が迫ってきている前方に向ける。


 「行け。」


 ビュンッ!!


 そして一言呟くと左右に浮かぶ長剣がその切先を魔物に向け、凄まじい勢いで飛び出し。


 ズシャッ!!


 2体のサンダーフォックスの額に深々と突き刺さった。


 「んあっ!?」


 一連の光景に横にいるグレンが変な声を上げた。僕はなんとか声を出さなかったが、出していたら同じような感じだったかもしれない。何せ、戦闘とは言えないほど一瞬で終わったからだ。


 それに、撃ち出されたマジックソードがほとんど視認出来なかった。動いた、と思った瞬間にはもう魔物の額に刺さっていたほどだ。


 あっさりと倒された2体のサンダーフォックスが地に崩れ落ちる。


 そして額に刺さっているマジックソードが空気に溶けるように消え、魔物の死体も消えていった。あとには魔物の毛皮と魔石だけが残される。


 あまりの光景に僕とグレンが言葉を失っているとメイが良い笑顔で振り返る。


 「終わったよ。あ、ごめんナイン。剣背中に戻してー。」


 普段通りの彼女の声色に、いつの間にか強張っていた体が少しずつ戻っていく。どうやらメイの強さを目の当たりにして余計な力が入っていたようだ。


 「あ、ああ。ちょっと待って。」


 まだ少しだけ強張っている体を動かしてメイに近づき、右手に持つ長剣を受け取る。


 ふと気になってグレンの様子を見ると、彼はまだ驚きから戻ってきていないようだった。腕を組んだ状態で固まっている。口も半開きだ。


 とりあえず彼は放っておこう。


 メイに視線を戻し、彼女の背中に吊られた鞘に長剣を収める。


 「どうだった?」


 「凄かったよ。色んな意味で。」


 「そうでしょ!」


 自分の強さを見せられたからかやたらとご機嫌なメイに、僕も自然と笑みが浮かぶ。体の強張りも完全に無くなった。


 戦闘も終わり周囲に魔物の気配も無いので、気持ちを切り替え早速スキルの説明をしてもらう事にする。


 「じゃあさっき言ってたスキル。双剣と投擲について頼む。」

また明日。

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