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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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069 メイ・ウォーカー


 (ああ。)


 僕が返事をするとすぐに魔石に変化があった。


 魔力を纏った魔石は、光り輝く状態はそのままに僕の手の上からスーッと音も無く宙に浮かび上がる。


 そして僕の身長より少し上で停止する。すると次は魔石が纏う魔力の光が明滅しだした。その際にチラと魔石本体が見えたが、割れても壊れてもいなのが確認出来たので良かった。


 僕が出来る事はもう何もないので、ただ無言で明滅を繰り返す魔石を見続ける。


 すると次第に明滅する感覚が狭くなり、突然一際強く光出した。


 「うわっ!」


 咄嗟に顔の前に手をやり、目が眩まないようにして魔石を見る。


 そして光が大きく変化し出した。


 魔石が纏う魔力の光が落ち着き、次第にその形を変えていく。


 ゆっくりと、人の形に。


 魔石を中心に胴体が出来ていき、そこから頭と手足の形にスーッと光が伸びていく。


 わずか数秒で人の形が出来上がると人の形をした光はその輝きを残したまま、頭から人の肌や髪の毛などに変化していく。


 光り輝いていてちゃんとは見えないが、僕と同じ真っ白な髪ふわっと生まれ、顔の造作がはっきりとしていく。


 そして首、胴体、最後に手足がゆっくりとより詳細になっていく。


 とても不思議な光景だ。


 僕の体を作った。自分の体を作りたい。そう聞いた時はここまでおかしいとは思わなかった。その時は作れるんだな、くらいにしか思わなかった。


 治療のために高位の治癒魔法によって手足を作り出す事はあっても、全身を作り出す事は無い。いや、出来ないのだ。魔法にも出来る事の限界がある。


 そしてそもそも、魔力から人は生まれない。


 だからこそ、今目の前で起きている人の体を魔力で作り上げるという行為はこの世界の常識と限界を超えた現象なのだ。


 それ故に、この光景を目の当たりにして改めて思ってしまった。


 「メイ、君は何者なんだ・・・?」


 世界の理を超えるような現象に、抑えていた思いが言葉として溢れ出した。


 返ってくる言葉は無い。彼女は肉体の作製に集中しているのだろう。


 そうして目の前で起きる現象に僕が動揺している間にメイの体が出来上がっていっていた。


 僕の目の前には光り輝く女の子が目を閉じて浮かんでいる。ただ光が強くてどんな顔をしているのかはっきり見えない。


 ここまで出来上がっているのでもうすぐ終わるのだろうか。そう思っていると宙に浮くメイの肉体が一際強い光を放ち出した。


 「うわっ!またか。」


 不意打ちのように放たれる光に驚きながら再度手で目を覆う。するとすぐに光が弱まり、そのまま肉体から放たれる光も収まっていった。


 終わった、のか?


 そう思い、光が無くなった肉体に目を向ける。


 一糸纏わぬ少女が宙に浮いていた。


 Cランクの魔石だと子供サイズになると言っていた通り、歳の頃は10歳前後だろうか。髪は肩までの長さで僕と同じく真っ白だ。目鼻立ちは目を閉じているのでわかりづらいが整っていると思う。


 光が収まってよく見えるようになったメイの顔を見ていると、宙に浮くメイの体がゆっくりと地面に降りてきた。


 スタッと地面に足をつくと目を閉じたまま立ち、動かない。


 あれ?メイ?もしかしてなんか失敗したのか?


 「メイ?」


 全く動かないので心配になり僕はメイの体に声をかける。


 ピクッ。


 すると僕の声に反応したからか、閉じられた瞼が少しだけ動いた。ただまだ大丈夫なのかわからない。


 「メイ。」


 もう一度声をかける。


 ピクッ。


 視界の端でメイの指が動いたのが見えた。


 それから時間をかけるようにゆっくりと瞼が開いていく。僕と同じ赤い瞳が見える。


 完全に開ききると目が合った。


 メイの口角が上がり、顔に笑みを浮かべる。


 そして小さな口が開き。


 「やっと顔を見て話せるね。ナイン。」


 僕の耳に、思念では無いメイの声が届いた。

また明日。

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