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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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063 四足ダンジョン1


 「これがダンジョンの入り口?洞窟にしか見えないな。」


 朝一番でアルトの町を出発し、たまに現れる魔物を倒しながら草原と森を進んで5時間半。


 グレンの持つ地図に書いてある崖までやってくると洞窟の入り口にしか見えない場所があった。どうやらここがダンジョンの入り口らしい。


 「結構こんな感じらしいぞ。俺が前に行ったダンジョンも洞窟みてえな入り口だったぜ。」


 そうなのか。中はどうなってるんだろう?洞窟型なのかな?あとでメイに聞くか。 


 「なるほど。まぁそれはそれとしてダンジョンにも着いたし休憩と昼食取って入ろっか。」


 「そうだな。」


 時間ももうすぐ正午なのでちょうどいいだろう。というかお腹空いた。


 僕たちはダンジョン入り口付近に座るとバッグから朝に町で購入した肉と野菜が挟まったパンを取り出して食べ始める。


 因みにバッグの容量の関係上、このパンを食べると町に戻るまで食事は携帯食料になる。


 しっかりと味わって食べながら先程の疑問を解消する。


 (なあメイ。これって入り口が洞窟みたいなのだから中も洞窟なのか?)


 『そうだよ。』


 見たまんまという事か。なら。


 (他の森とか遺跡とかのはどんな入り口なんだ?)


 『森のダンジョンの場合は木とか蔓草で作られた門みたいなのが入り口だね。遺跡のダンジョンだと石造りの建物があって、その中に下り階段があるよ。』


 なるほど。入り口からしっかりそのダンジョンの特徴があるんだな。わかりやすくて助かる。


 (固定もランダムも入り口の特徴とかは変わらないのか?)


 『同じだよ。』


 ふむ、ならいきなりランダムダンジョンが近くに現れたりしてもすぐ気づけそうだな。


 (ありがとう。さて、ご飯も食べたし装備と持ち物の確認して入るとするか。)


 メイに礼を言って手をほろい、腰に差した水虎の長剣を抜いて刀身を確認する。傷や汚れもなく、問題無さそうなのですぐに鞘に戻した。


 一応道中の魔物に使ったが、弱過ぎて切れ味などはよくわからなかった。結局アビリティもまだ使っていない。ダンジョン内までお預けだ。


 それと、今のうちに取ろうと思っていたスキルを取得しておく。


 (えーとあった。取得っと。)


 『あー、確かにあった方が良いね。』


 (だろ?)


 メイも納得したスキルとは罠感知だ。これがあればトラップにいち早く気づく事が出来るはずだ。


 スキルレベルは取得したてのためまだ1だが、低ランクのダンジョンなのでこれでも大丈夫だろう。


 僕はさっそくステータスのスキル欄からあまり使用していない隠蔽を外し、罠感知をセットする。


 これで準備完了だ。


 「よし、問題無さそうだな。グレンは?」


 ステータスを閉じて立ち上がり、グレンに声をかける。


 「俺も問題ねえ。そんじゃ行くか。」


 どうやらグレンは僕より少し早く終わっていたようで、答えるとすぐにダンジョンに向かい出した。


 「はやいはやい。今行くって。」


 先に入ったグレンを急いで追いかけ、僕も遅れてダンジョンに突入した。












 入ってすぐに気付く。壁が光っているとかでは無いのに何故かダンジョンの中は明るかった。


 「・・・明るい。」


 訳がわからずに入り口から数メートルのところで立ち止まり、首を傾げる。


 『あれ?知識に・・・、無かったみたいだね。ダンジョン内は明るいんだよ。だから松明とか灯りの魔道具とかは必要無いんだよ。』


 僕の言葉と様子に気付いたのかメイが教えてくれた。


 また随分と不思議空間のようだ。これもメイがうっかり漏らした旧システムとやらのものなのだろうか。それともこれが普通なのかよくわからん。


 「そんじゃ進むか。隊列はどうする?」


 僕がうんうん悩んでいると先に入っていたグレンが振り返って聞いてきた。


 「トラップあるらしいし僕が前でいいんじゃないか?最悪何か受けても痛いくらいで済むし。」


 肉壁だな。役割分担と行こうじゃないか。


 「・・・普通痛いのは嫌だろ。」


 「嫌だけど一番いいのはこれだろ?」


 「はぁ・・・、お前がいいならそれでいいよ。他でやんなよ。」


 「やるわけないじゃん。頭おかしいと思われるわ。」


 グレンは渋々納得しながらも了承してくれた。小言も付いていたけど。


 「・・・いや、十分おかしいぞ。」


 無視しよう。


 僕はグレンを無視してダンジョンを進む。ぱっと見た感じは明るい洞窟といった感じだ。横幅も3、4メートルあるので狭くも無い。これなら戦いづらいという事もないだろう。


 今のところ洞窟が真っ直ぐ伸びているだけなので迷わないが、この先に分岐が出てくるので先に地図を確認しておく。


 「えーと、真っ直ぐ行って、分かれ道で右なのか。ふむ、とりあえず宝箱を探す予定だから右側から行くか。ていうか改めて思うが凄い広いな。1階でこれか。」


 地図に記載されたダンジョン1階はまさにアリの巣だ。それでも宝箱を探すつもりなので全ての道を通る予定だ。


 とりあえずは分かれ道まで行ったら通った道に魔道具ペンで線でも書いておこう。


 「ダンジョンだからな。と出たぞ。ビッグラットだな。ナインがやるか?」


 地図を確認しながら進んでいるとグレンが前方から近づいてくる魔物に気付いた。


 「お、やるやる。アビリティ使ってなかったからな。」


 「そういや急いでたから使ってねえな。よし、試してみろよ。」


 急いで地図をしまうと腰に差した水虎の長剣を抜く。


 さて、今回は最初からアビリティを使ってみよう。確かアビリティ名を言うか思考してから魔力を流し続ければいいんだったか。それじゃあ早速。


 「水纏。おおっ!?」


 口に出してアビリティ名を言い、魔力を流す。するとすぐに鍔の辺りから水が現れ、一気に刀身を覆っていった。


 ちょっとだけこの水を触ってみたい誘惑に駆られたが、ビッグラットが目前まで近づいて来ているため我慢する。


 ここからどうすればいいんだっけ?とりあえずこのまま斬ればいいのかな?


 「せいっ!」


 「ピギャァ!!」


 フェイントも何もなく普通に突っ込んできたビッグラットを真上からの斬り下ろしであっさり倒す。


 「お?」


 なるほど。どういう原理かわからないがビッグラットに当たった瞬間、確かに少しだけ威力が上がった気がした。こういう事か。


 振り下ろした長剣を持ち上げてじっと見つめる。魔力を流し続けているので今だに水を纏った状態だ。


 (面白い。それになんか水魔法使えたみたいで嬉しい。)


 『確かに武器のアビリティだと属性魔法みたい事が出来るね。余裕があったら色々集めてみれば?』


 (魔剣とかアビリティ持ちの武器をか?絶対高いだろ。・・・欲しいけど。ダンジョンの宝箱からも出るらしいけど、やっぱりレア?)


 『そうだね、武器や防具はかなりレアだから出たらもの凄いラッキーって感じだよ。』


 (てことはほぼ出ないのという事だな。期待しないでおこう。)


 『それがいいよ。』


 とりあえずお金が必要だなと再確認をして、長剣に流していた魔力を止める。


 シュー・・・。


 するとすぐに刀身を纏っていた水が霧になるかのように消えていった。こんな風にすぐ消えて無くなるのも半物理である魔法現象ならではなのだろう。


 「中々良さそうだな。使い勝手はどうだ?」


 水の消えた水虎の長剣を腰に戻すとグレンが後ろから声をかけてきた。僕が剣を収めるまで待っていたようだ。律儀だな。


 「良かったよ。水纏中はちゃんと威力も上がってたみたいだし問題無さそうだ。」


 「そうか。その割には黙って剣を見てたけどよ。あれ何だったんだ?」


 ああ、あれは・・・。


 「・・・僕、無属性魔法しか使えないからさ。水魔法が使えたみたいで嬉しかっただけだよ・・・。」


 なんか子供みたいですごく恥ずかしいんだけど・・・。


 「子供みた、何でもねえ。」


 僕の不満そうな表情に気付いたのかグレンはすぐに言葉を改めた。決して睨んではいない。決して。


 「そうだ、足元ちゃんと見ろよ。素材と魔石落ちてんぞ。」


 グレンに言われて足元を確認する。すると確かにビッグラットを倒した辺りに皮と魔石が落ちていた。


 「本当だ。とりあえず拾っとくか。」


 ダンジョンなので解体をしなくて済むのは凄く助かる。解体はそこそこ大変で面倒くさいのだ。


 皮と魔石を拾って袋に入れ、マジックバッグにしまう。皮に関してはとりあえず拾っただけだ。たぶんもっとランクの高い魔物の素材が手に入ったら捨てるだろう。持てる数にも限りがあるからな。


 「お待たせ。じゃあ先に進もうか。」


 「おう。魔物が出たら次俺な。歩くだけだと疲れるから体動かしてえ。」


 「あいよー。」


 歩いてるなら体を動かしてるのでは?と思ったが言わないでおこう。

諸事情により一週間ほど投稿をお休みします。

次回は3月7日です。


それではまた一週間後。

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