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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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059 魔法現象と出発

キーワードとやらが

いまいちよくわからない。


 宿の部屋の窓から外を眺める。


 明日でアルメガの街とも当分お別れだ。正直まだ3週間しか経っていないのが不思議に感じる。


 というか目覚めてまだ1ヶ月も経ってないんだよなぁ。何でそんな僕がでっかい水虎と戦ってるんだろう?戦うとしても、もっと後でもいいと思うんだが?ゆっくり行ってくれよ。


 まったく。思い通りにいかないものだねぇ。


 『こら。黄昏れてないで荷物の整理して。』


 「はい。」


 怒られてしまった。いいじゃないか、黄昏れたって。僕にとって故郷みたいなもんなんだからさ。


 そう思ったが口に出すとまた怒られるので大人しく荷物整理を再開する。


 と言っても荷物は少ないからそんなにすることは無いんだけどね。あ、そうだ。


 「そうだ。魔道具屋で言ってた魔力現象?だっけ?あれの説明してよ。」


 買ったあとでって言ってたのに説明してもらってなかったからな。


 『ああー、そういえば言ってたね。魔道コンロのせいで忘れてたよ。』


 胃袋がうんぬんって言ってたもんね。


 『まず魔法現象って言うのは、属性魔法スキルやアビリティで発生した現象の事を言うんだよ。』


 僕は着替えを皮袋に詰めながら適当に返事をする。話は聞いてるよ?


 『それで魔法って言うのは完全な物理現象じゃなくて、基本的に半物理現象なんだよ。』


 「ん?はんぶつりげんしょう?何だそれ?」


 よく理解できなくて手が止まってしまった。


 『うーん、魔力で物理現象を再現したもの、かな?例えば水魔法で出した水でも服が濡れたり、水溜りが出来たりするんだけど、その水って短時間で魔力に戻って消えちゃうんだよ。』


 水と同じ性質ではあるけど、完全ではないから魔力に戻ってしまうということかな?


 だから洗い物とかに使う時は流しちゃうから消えても問題無いけど、飲み水の場合は体に入っても消えてしまうから無理と。


 何となくだが理解出来たので荷物整理を再開する。マントはバッグにしまっておくか。


 「水はわかったけど他の属性はどうなんだ?」


 炎とか風とか。


 『基本属性だけ説明すると、炎だと熱量で大体火が付くからあんまり変わらないね。風と雷も変わらないかな。地魔法は水魔法と似てて、魔法で出した石とか岩は時間が経つと消えちゃうよ。直接地面を隆起させたりしたら残るけどね。』


 ふむふむ。


 『氷魔法も似てるね。冷気で凍ったりするけど魔法で出した氷は自然に溶けるより前に消えちゃうよ。』


 なるほど、魔法の効果で起きた事は完全な物理現象であると。


 『最後の闇と光は性質が特殊だからまたちょっと違ったりするんだよ。闇魔法だったら影を操る物があったり呪いのようなものだったりするし、光魔法だったら日の光を再現した物だったり神聖なものだったりって感じでね。』


 あー、確かに特殊だ。日の光はまだ何となくわかるけど、影を操るとか呪いとか神聖なものとか、正直漠然とし過ぎてるしな。


 「何となく理解したよ。だけど今日買った水の魔道具が飲料にできるのは何でだ?」


 魔道具は魔法現象ではないのか?魔ってついてるけど。


 『火の魔道具はさっき説明したように魔法現象の炎から発せられる熱量で火をつけてるんだけど、水の魔道具は術式と多めの魔力で物理現象にしてるんだよ。』


 え?物理現象にしてる?出来るの?


 「出来るのか?」


 『説明の最初に基本的に半物理現象って言ったけど、普通の属性魔法でも出来るんだよ。やり方は単純で、物理現象である事をイメージしながら魔力を最低10倍使用する。これだけだよ。まぁやる人はほぼいないんだけどね。』


 そりゃいないだろうさ。やるとしても緊急時とかくらいかな?


 『で、水の魔道具っていうのは、消費魔力10倍でも問題無いようにする為に、水を出す事と物理現象にする事に限定した術式にして消費魔力を減らしてるんだよ。まぁそれでも消費量は多いんだけどね。』


 そういう感じなのか。まぁでも普通の旅とかだと水辺に寄って水の補充をしたりするしな。普段使いするものじゃないから別にいいのか。


 「なるほどねぇ。でも僕は消費魔力多くても問題無いから使い放題と。』


 『そうだね。その分水筒の数がいらないから荷物も減るね。普通だと何本か持ち歩かなきゃいけないし。』


 確かに。


 「バッグの容量も少ないから助かるな。よし、荷物整理終わりっと。」


 とりあえず整理して全部マジックバッグに入れた。何とか10枠ある内の7枠で収める事が出来た。


 『お疲れ様。じゃあ明日は朝に待ち合わせだから早く寝ようか。』


 グレンとは朝8時にギルド前で待ち合わせだ。その後は長時間歩くことになる。なら出来る限り休んでおいた方がいいだろう。


 「そうだな。それじゃあ寝るか。」


 『うん。おやすみ。』


 早いよ。僕まだ寝る準備してるんだけど?まぁいいか。


 「おやすみ。」












 「おう、早いな。遅れたか?」


 朝のギルド前で立っているとグレンが通行人を避けながら歩いてきた。


 「まだ5分前だよ。それに僕も今さっき来たところだ。」


 本当は30分前から居たが、言う必要はないので隠す。決してワクワクし過ぎて早く来てしまったわけではない。そんな子供ではない。


 『子供みたいだったね。』


 やめなさい。そして何でわかるのさ。


 「それじゃあ行くか。どっちから出る?街中は混んでるからどっちから出ても対して変わらねえぞ。」


 グレンの言葉に大通りを確認する。朝だからか確かに大通りには通行人が沢山いた。


 これを避けながら北門に向かったら時間もかかるか。なら。


 「南門から出るか。それで街壁沿いに北に向かおう。」


 ガーデルにも挨拶したいしな。






 人混みを抜けて南門に到着する。


 南門は出入審査待ちの人もほとんどおらず空いていた。まだ、アクアタイガーの影響は抜けていない上に元々南側からくる人は少ないからだろう。門番が暇そうにしている。


 すると待機場所からガーデルが出てきて門に近づく僕たちに気がついた。


 「お、ナインじゃないか。そうか、今日だったな。ん?何で南に来たんだ?」


 ガーデルが声をかけてきた。今日街を出る事はビッグスネーク討伐の続きをする時に伝えていた。


 「ガーデルさんに挨拶するのと、街中が混んでたので南から回り込もうと思って。」


 北門に向かってたら会えなかったな。


 「律儀なもんだな。気にしなくてもよかったんだぞ。だが、来てくれてありがとうな。」


 ガーデルが少し耳を赤くしながら答える。照れてるのか?


 「この街に来た時、本当にありがとうございました。」


 腰を折ってガーデルに感謝を伝える。記憶もお金持っていない上に変な格好の僕を助けてくれた。街に入った時も隠れて宿代を持たせてくれた。


 本当に感謝している。


 『ありがとうございました。』


 メイも声が届かないとわかっていても同じく礼をしていた。


 「・・・気をつけてな。」


 「はい。また会いましょう。」


 必ずまた。今度はちゃんとメイも一緒に。


 「グレンだったな。お前さんも気をつけてな。」


 ガーデルがグレンにも言葉をかける。アクアタイガーの時に一緒に森から戻ってきたのを知っているし、僕の仲間だからな。


 「ああ、安心しろ。ちゃんとこいつの面倒は見るよ。」


 「頼んだぞ。」


 はい?何だ?僕は君達の親戚か何かか?会話の内容おかしくない?


 「僕はそこまで危なっかしくないぞ。」


 失敬だな。


 「「・・・そうだな。」」


 ハモって言うな。


 「はぁー・・・。それじゃあそろそろ行きますね。」


 さっさと空気を変えて出発しよう。微妙に居心地が悪くなってきた。


 「そうか、何度も言うが気をつけてな。それと、良い旅を。」


 「はい。いってきます。」


 良い旅にしよう。そしていつか必ず戻ってこよう。


 僕にとっての故郷となるこの街に。


 街壁を西沿い数メートル進んだところで足を止める。隣にいるグレンが不思議そうな顔で僕を見る。


 僕は後ろを振り返り、門前に向かって大きく手を振り、もう一度。


 「いってきます!」


 再開を誓う言葉を口にした。

また明日。

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