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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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058 装着と旅支度


 「確認しました。ここで着ていっても大丈夫ですか?」


 この後は買い物しかしないが、それでも新装備はワクワクする。着心地も確かめたい。


 「着替えならそっちでやれ。」


 ヴァインの指差す方を見る。店内の端に試着室のような場所があった。何度か来ているが全然気付かなかった。女性客もいるし必要か。


 カウンターに置かれた防具を持って移動する。おお、鏡があるじゃん。


 脱ぐ必要のある物は・・・無いな。あ、ブーツくらいか。よし、着るか。


 ガサガサ、ゴソゴソ。


 ふむ。前に着けてた皮鎧と着方はあんまり変わらないな。


 鎧を着けるとジャケットを着る。少しだけ裾が長く、お尻くらいまで丈があった。これなら腰も守られるし安心だ。


 それからショートブーツを履き、最後にグローブを着ける。着心地は問題無さそうだ。


 そうだ鏡があるんだ。折角だから着た姿を見てみよう。


 「おおー。・・・黒いジャケット着てるから髪がより目立つな。」


 前まではグレーっぽいマントを着てたのでもう少し落ち着いて見えてたはずだ。


 『寧ろいいと思うよ!うん!いいね!かっこいいよ!!』


 え?何?めちゃくちゃ興奮してるじゃん。でもかっこいいはちょっと嬉しいぞ。


 (似合ってる?)


 『似合ってるよ!今後装備を更新する時は黒をメインにしようね!私も体出来たら黒にするからお揃いにしよう!』


 そ、そこまでか。まぁ似合ってるならいいか。でも。


 (お揃いは・・・、かなり恥ずかしいなぁ。)


 たぶん髪の色も同じなんだろ?めちゃくちゃ仲良しみたいじゃん。


 『え!?だ、だめなの?そんなぁ・・・』


 ええぇぇぇっ!?そんなに落ち込むの!?

くうぅ・・・、仕方ない。


 (・・・わかったよ。黒でお揃いな。)


 拗ねられても面倒なので我慢する事にする。頑張ってくれ、未来の僕。


 『うへへ・・・。楽しみだなぁ。』


 笑い方ひどいな。






 「それじゃあ、ありがとうございました。またアルメガに来た時はよろしくお願いします。」


 ヴァインさんに防具のお礼と別れの挨拶をする。


 着替えを終えた後に街を出る事を伝えたが帰ってきた反応は兄のアジャンと同じく、整備はちゃんとしろだった。


 「おう。気をつけて行けよ。またな。」


 「はい。またいずれ。」












 旅をするなら火の魔道具と水の魔道具が重要。


 ヴァインのところを出たあと、メイに言われたので街を探し回った。


 (この水虎の長剣じゃダメなのか?アビリティで水出るだろ?)


 見つけた魔道具屋で水の魔道具を見ながらメイに聞いてみる。因みに魔道具は片手で持てるくらいの大きさの筒状で、端に水属性の魔石が付いている。これを持った状態で魔力を流すと筒の先から水が出てくる仕組みらしい。


 『魔法現象だから手を洗ったりとかなら出来るけど、飲料水には出来ないよ。』


 魔法現象だから?メイさん?また教えてくれてない事だよ?


 (そうなんだ。とりあえず魔法現象に関しては後で聞くとして、まずはこれ買っちゃうか。いくらだ?)


 水の魔道具を手に取って下に書いてある値札を確認する。


 (・・・2万。高いな。)


 装備の製作費とこの魔道具で全財産の半分くらい無くなるぞ。


 『Eランクの魔石と金属使ってるからこのくらいするよ。ほら、買っちゃおう。魔法現象の説明は買った後でね。』


 材料費と工賃と利益でこのくらいになる訳か。まぁ仕方ないか。


 値段に何となく納得しながら会計をするため奥のカウンターに向かう。その際買う予定では無い他の魔道具が目に入ってくる。


 (面白そうな魔道具がいっぱいあるな。あれとかちょっと欲しい。)


 足を止めて視線を向けた先にあったのは魔道コンロなるものだった。


 『魔道コンロかぁ。でも料理出来ないでしょ?それにあれ5万するよ?』


 値段は見てなかったわ。それに確かに料理は出来ない。グレンは・・・、何となく出来無さそうだ。干し肉食べてる姿が真っ先に浮かぶし。となると。


 (メイは料理出来る?)


 長く生きているメイならいけるのでは無いか?


 『うーん、簡単なのなら出来るけど・・・。でも私に頼むなら魔石手に入れてから買えばいいんじゃない?』


 それもそうだな。それに気になって見ていただけだし。


 (それじゃあその時は頼むな。)


 何を作れば胃袋を・・・などと言うメイの声をスルーして僕は会計に向かった。


 別に何でもいいんだよ。食べられれば。






 水の魔道具以外に地図に携行食、寝袋に水筒なんかを購入して回り、宿に戻ってきた。


 夕月亭も何だかんだ3週間利用したなぁ。


 「というわけで明日この街を出るよ。世話になったな。」


 宿の看板娘?のリーネルに旅に出る事を伝える。本当に世話になった。結局宿代は最後まで3000トリアじゃなくて2000トリアのままだった。


 「そうなのねぇ。まぁ冒険者だし、まだ若いから旅くらいしたくなるわよねぇ。寂しくなるわ。」


 君も若いでしょ。僕と同じくらいかな?


 因みに僕の年齢は18歳にしている。グレンには15、6にしか見えないと言われたが。


 「色々見たいし知りたいからな。まずは海が見たくてさ。船に乗りたいし、海鮮も食べたい。」


 アルメガで食べる事が出来たのは淡水の魚介だった。それでも満足していたが、メイに海の幸も美味しいと教えられたのだ。なので是非食べたい。


 船はノースト大陸に行く時に乗れるのでそこでしっかり堪能しようと思う。船酔いは心配だけど。


 「あー、海ね。私も一度だけ港町に行った事あるけど、中々綺麗だったよ。食べ物も美味しいしね。」


 おー、やっぱりそうなのか。これは楽しみだ。


 「あ、そういえば来月末じゃなかったかな?カルヴァース豊漁祭。」


 カルヴァースとは今話していた港町の名前だ。確か海町カルヴァースだ。


 それにしても。


 「豊漁祭?お祭りか?」


 『そんなのあったかな?』


 メイも知らないみたいだ。ここ数百年に出来たのかな?


 「そうそう。豊漁を願ってーとか、安全を祈願してーてのだよ。かなり大きいお祭りだね。昔はもっとちゃんとした祭事だったらしいよ。」


 「へー。来月末かぁ。移動もあるから参加できそうだなぁ。」


 出来れば参加したいな。どんな感じなんだろう。美味しい物とか珍しい物が多いのかな?


 『お祭り・・・。その頃には私の体も・・・。』


 メイの心の声が漏れ聞こえてくる。わかっております。ちゃんとメイも参加出来るよう探します。


 「羨ましいわぁ。今度どんな感じだったか教えてね。」


 「ああ、必ず教えるよ。もちろん他の大陸での事も含めてな。」


 お土産話だな。


 「ありがと。そうだ!宿代、今日抜いて5日分多くもらってるから返すわね。」


 あー、そういえばアクアタイガーと戦った日の朝に10日分追加で払ってたな。・・・ふむ。


 「いや、返さなくていいよ。最初の頃ならまだしも、結局ずっと安くしてもらってたからな。そのまま受け取っといてくれ。おっと拒否権は無いぞ。」


 断られないようにしておく。今後もお金は必要だがそれはそれだ。感謝を忘れてはならん。


 「えー・・・、うーん、わかったわ。じゃあ今日の夕食は豪華にしてあげるわね!」


 リーネルは少し納得いかない顔を浮かべていたが、僕の表情を見て納得してくれた。だが続いた言葉に僕はちょっと不安になってしまった。今までにも謝罪の意味を込めてとかで同じことがあったのだ。


 「ありがとう。でも、食べ切れる量で頼むよ・・・。」


 リーネルが気合いを入れると量が倍以上になるのだ。

また明日。

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