052 思いの吐露
へへへ、評価増えてる。
いいね、あった。
『そうだね。さて、他のスキルは効果が増えただけだろうし。これでステータスとスキル確認は終わりかな?』
言われてステータスとスキルを改めて確認する。メイの言う通り他のスキルは効果が上がっただけのようだ。
「えーと。うん、終わりだ。」
『そっか。じゃあ止めないとは言ったけど今日の事について言わせてもらうね。』
ドキッとしてしまった。まぁ途中途中で言っていたような気がするけど改めて言いたいことはあるよな。反省って言ってたし。
「はい・・・。」
甘んじて受けよう。
『まず、戦ってる時にも言ったけど無茶し過ぎ!死なないとはいえ感じる痛みは普通の人と変わんないんだよ!』
「言ってたね・・・。しかも僕無視したね。」
まだ数時間しか経っていないが、かなり前の事に感じる。
『そうだよ!全く話聞いてくれなかったよね!』
メイの忠告を無視して、死なないからと囮になる事を選んだ。
『あの時、止めないとは決めたど・・・。それでも心配はするんだよ・・・。』
「ごめんな・・・。」
かなり心配させたようだ。これに関しては僕が悪い。
『わかってるんだよ・・・。あの時の行動と言葉でナインはまた同じ事をするだろうって。ギルマスにもそう言ってたしね。でもね・・・。』
「うん・・・。」
メイの声が震えている。
『何度も言うけど、心配しないわけじゃないんだよ・・・。それは、ちゃんとわかってね。』
「ああ。ちゃんと覚えておく。」
無茶し過ぎたのも、無謀だったのもわかっていた。でも自分は死なないからと、だから体を張れと、己を顧みない選択をした。
そのおかげで人を助けることが出来た。
だが、その結果メイを心配させてしまった。
僕と魔石を共有し、一心同体とも言える存在。決して離れることの出来ない存在を悲しませた。
これではいけない。
今後同じような場面に遭遇した場合、僕は間違いなく同じ行動を選ぶだろう。
だからこそ、また今回のようにボロボロになって戦うのはダメだ。
強くなるのだ。
メイに心配かけないように。
もっと強く。
『早く、体が欲しいな・・・。』
僕が強くなろうと決意していると、メイの呟きが聞こえた。
「一緒に戦うためか?」
たぶんそうだろうな。
『うん・・・。今の私、ただ見てるだけだから。』
僕には僕の思いがあるように、メイにはメイの思いがある。
僕の思いだけ優先するのは違うよな。
「Cランクでもいいか?」
『うん・・・。』
「じゃあ優先して探そっか。店に売ってたら高くても頑張って買うよ。」
アクアタイガー討伐の報酬金もくれるらしいし、まぁ何とかなるだろう。
『ありがと。』
「ああ。」
朝日が窓から差し込んでくる。
今日も元気な鳥たちの声で目が覚めた。
昨日のメイとの反省会はその後何事もなく終わった。というよりも2人とも眠くて終わったという方が正しい。
さて、今日は昼にグレンとの待ち合わせがあるからそれまでに昨日ボロボロにした服とマントを買い直さなければ。
「んんーーーっ!!」
しっかり寝たからか疲れはほとんど抜けている。肉体年齢が若いおかげだろう。
『んふぁ・・・。おはよ。』
僕が起き出したからかメイも起きたようだ。まぁここから30分くらいは寝ぼけ状態だけど。
「おはよう。さてと、準備して出かけるとするか。」
ベッドから立ち上がりタオルを持って裏庭に顔を洗いに行く。
着替えをしたいが寝巻き以外に服は2着しか持っていない。そしてその内の1着は昨日のアクアタイガー戦でボロ切れと化した。
残った1着は昨日洗濯して裏庭に干してある。
顔を洗ったついでに取り込んでこよう。
「これで買う物は全部かな?」
宿を出てから街を歩いて必要な物を買って回っていた。
まず服を購入した。戦闘でボロ布と化したので新しい物を1着。そして今着ている物と合わせても2着じゃ足りないだろうともう1着。これで服は3着になったので今後とりあえずは何とかなるだろう。
それとマントも1着。これも同じく戦闘でボロ布になってしまったので新しい物を。ちょっと奮発して水に強い生地の物を買った。これで雨の日も大丈夫だ。
『大丈夫じゃない?それにしてもやっぱり魔石は売ってなかったね。』
買い物ついでに色々見たりきいたりしてみたがやはり売ってなかった。Dランクならたまに出るが、Cランク以上はまず市場に出ないらしい。
「だなぁ。港町ならもしかしたらって言ってたけど。」
イース大陸の各地とか他の大陸から色々集まるからもしかしたら〜っと店の人や客に教えられた。
『言ってたね。まぁ仕方ないね。ちょっとしたらノースト大陸に渡るために港町に行くから、その時に探そっか。』
「そうだな。」
後は寄り道して自力で見つけるかだな。グレンに相談してみようかな。
『ほら、あと少ししたらお昼になっちゃうよ。ご飯食べてギルドに行こう。』
「おっともうそんな時間か。急がないとグレン待たせちゃうな。」
時間も無いのでささっと周囲を見回して手頃な屋台を探す。
「あれでいいか。」
屋台から漂ってくる肉の匂いに惹かれ、僕は足を向けた。
また明日。