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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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050 報告と疑問

祝1000PVです!

ありがとうございます!


 「ここだ。入ってくれ。」


 ゼオランは扉を開けて部屋の中に入ると僕たちに入室を促してきた。


 ギルマスの部屋は受付カウンターの奥の階段を登って3階にあった。


 「失礼します。」


 部屋の中は思いの外狭かった。壁際に大量の棚があるせいだろうか?その棚の中には資料か何かがこれまた大量に収められていた。


 「そこに座ってくれ。」


 中央にあるテーブルを挟んだ左側のソファに座る。向かいにはゼオランも座った。


 「それじゃあまず2人が遭遇した経緯から頼めるか?」


 座ってすぐゼオランは今回の経緯を聞いてきた。


 「えーと、まず僕からですね。最初に東の森でビッグスネーク狩りをしてたら大きな音と地響きがして・・・。


 最初は自分からなので遭遇の経緯を話す。その後冒険者が3人現れたこと。逃げろと言われて逃げようとしたらアクアタイガーが現れたこと。そして冒険者のうちの1人がやられたので残って囮になったことなんかだ。


 「それで時間稼ぎをしようとしたんですがボコボコにされて、ヤバいってなった時にグレンが来ました。」


 「ああ。んでナインが回復する時間を稼いで2人で撤退しようとしたんだがアクアタイガーのスピードが速すぎてな。どうやっても逃げられねぇと思ったから2人で戦ってなんとか倒したんだよ。」


 グレンが現れたところからは自分で話してくれた。それと僕の秘密はちゃんと隠してくれている。助かります。


 「ふむ・・・。そうか。一応こちらでも逃げてきた3人の冒険者から話は聞いている。重傷を負った仲間を助けるために知らない奴が囮で残ったとな。君だったのか。」


 「あ、はい。僕ですね。あの、重傷の人は助かったんですか?」


 あの人大丈夫だったのだろうか。胸元ざっくりいかれてたんだよな。


 「大丈夫だ。ギリギリだったがな。南門の方でポーションを使い、ギルドで治癒魔法をかけた。」


 よかった。


 「そうですか。助かってよかったです。」


 『ギリギリって言ってたから間に合ってよかったね。』


 全くだ。あの時すぐに決断してよかった。


 「見ず知らずの冒険者を助けてくれてありがとう。私からも礼を言う。ただ、こんな無茶はやめなさい。命がいくつあっても足りないような無謀な行為だ。」


 まぁ言われるだろうなとは思っていた。でも言ってしまえば、僕の命はいくつもあるようなものなのだ。だから。


 「やめません。僕はまた同じような場面に遭遇したとしてもまた同じことをします。」


 申し訳ないと思いながらもゼオランの気遣いをキッパリと否定した。


 まさかはっきり否定されるとは思わなかったのだろう。言われたゼオランは驚きに目を大きく開けていた。


 「死ぬとわかっていてもか?何故だ?」


 数秒経ってゼオランは単純に疑問を口にした。


 「それが僕だからです。」


 変える気はない。変わる事もない。


 「・・・そうか。」


 それだけ口にするとゼオランは僕の顔をじっと見つめてきた。まるで僕の本質を、心を覗いているような感じがした。


 そして数秒見つめると少しだけ悲しそう顔をした。


 呆れられたのだろうか。まぁ仕方ないか。


 「・・・とりあえず君たちの経緯は理解した。それで、何か出現した理由になるよう痕跡は無かったか?」


 ゼオランは表情を戻すと話もまた戻した。


 出現の理由か・・・。


 「何かあった?」


 「いや、わかんねぇな。俺たちは途中からだからな。出現に関してはあの3人の冒険者に聞いてくれ。」


 それが一番だろう。僕も言っちゃえば巻き込まれた側なので出現の理由など知らんのだ。


 「わかった。この後に詳しく聞き取りをしよう。それで次なんだか、何かその他に気付いたことはなかったか?」


 気付いたこと?何かあっただろうか。


 アクアタイガーとの戦いを思い返してみるがそもそも記憶も知識も無い僕には何がおかしいのかよくわからない。めちゃくちゃ強かった。くらいだ。


 「・・・あくまで俺の感覚だが、戦闘経験が少ねぇように感じたな。なんかこう、攻撃された時の反応の鈍さとか、攻撃のバリエーションとかパターンの少なさとか。仮にもユニーク個体なんだ。もっと戦闘慣れしててもおかしくねぇと思ったよ。」


 そうなの?


 『確かにそうだね。使ってきた魔法もウォーター・ボールにウォーター・ランス。それと体に纏わせたり、水爪撃の時に使ってたウォーター・エンチャント。後はウォーター・シールドとウォーター・スパイラル。これ、水魔法スキルでいったらレベル20までの魔法なんだよ。』


 そうだった?


 メイも同意しているのでそうだったのだろう。正直あれで戦闘経験が薄いと言われても僕にはまったくわからない。


 「そうか・・・。それはまた妙だな。」


 グレンの言葉にゼオランは視線をテーブルに落とし、顎に手を当てて何か考え込み出した。


 (ん?戦闘経験が少ないと何かあるのか?)


 『うーん、何と言うかチグハグな感じかな。レベル28ってことはそこそこ戦闘してるはずなんだけど、そんな風には感じないっておかしいでしょ?ましてやユニーク個体なんだよ?』


 あー、なるほど。僕は戦闘経験少ないとかわかんなかったけど、わかる人から見るとおかしいのか。


 『例えで言えば促成栽培みたいな感じ?無理矢理レベルだけ上げたみたいな。』


 (おおー。その言い方だとわかる。そりゃおかしいな。)


 それでチグハグか。


 「とりあえずその情報もこちらでまとめておこう。他にはあるか?」


 考えがまとまったのかゼオランは視線を戻し、他にもあるか聞いてくる。


 「いや、ねぇな。ナインは?」


 「僕も無いかな。」


 そもそも僕は思いつかないんだけどね。


 「そうか、わかった。2人とも今回は助かった。感謝する。それと素材の代金とは別に報酬も出す。明日以降に一階受付で受け取ってくれ。」

また明日。

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