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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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049 ギルドマスター


 「まぁ疲れてんのはわかってるだろうから、そんなに長く時間は取られねぇよ。」


 本当かね?期待はしないでおこう。


 グレンの言葉を聞きながらギルド内に目を向けると中は騒然としていた。


 アクアタイガー出現の報告があったからだろう。装備を整えた冒険者が沢山いるのと、普段受付カウンター内にいることの多いギルド員があちこち走り回っている。


 「こりゃ大変だ。早く報告しちゃおっか。」


 「ああ。カウンター行くか。」


 僕とグレンは人混みを避けて受付カウンターに向かう。カウンター前にも人が多そうだと思ったが意外といなかった。


 僕たちはちょうど空いていたところに向かい、何か作業しているのか下を向いているギルド員の女性に話しかける。


 「すいません。報告いいですか?」


 「あ!すみません!はい、大丈夫ですよ。アクアタイガーに関する報告ですか?」


 びっくりして顔を上げたのはアミラだった。アクアタイガーに関する報告と言っていたので情報をまとめたりしていたのだろうか。


 「はい、そうです。アクアタイガーなんですが、僕とグレンで倒しました。その報告だったんですがこれからどうしたらいいですか?」


 流石に異常事態なので普通に報告してはい終わりとはならないだろう。そう思って聞いてみた。


 「・・・え?」


 言われた意味がわからなかったのかアミラが口を半開きにしたまま固まってしまった。南門の時と同じ状況だ。


 「「「「「・・・。」」」」」


 気づけば周囲にいた冒険者やギルド員も言葉を失い固まっていた。先程までガヤガヤしていたギルドが嘘みたいに静かになっている。


 「間違いねぇよ。証拠の死体も持ってきてる。出せと言うなら出すぞ。」


 グレンが隣から少し大きめの声でアミラにそう言った。いや、アミラだけじゃなく周りの人にも聞かせるためだろう。


 「あ、あの!少々お待ち下さい!!ギルドマスターを呼んできます!!」


 元に戻ったアミラが叫ぶようにそういうと、受付カウンターの奥にある階段を走って上がっていった。


 「ギルドマスターってこのギルドのトップか?やっぱり直接報告って形になるんだな。」


 「そりゃあな。普通じゃありえねぇ事態なんだ。原因解明と関係各所への報告とかもあんだし下の者だけに任せる訳にもいかねぇからな。」


 それもそうか。トップが報告書見るだけとかで終わらせられる事態じゃないしな。


 すぐにやって来るだろうと思いながら少しずつ音の戻ったギルド内を眺める。


 聞こえてくる声を聞いていると、本当に2人だけで倒したのか?ユニーク個体じゃなかったか?似た別の何かじゃないか?と言った声が多かった。

そしてやはり僕の髪の話題も多かった。


 南門の時のように証拠の死体を出せば真実だとわかるだろうと思い、カウンターに視線を戻すとアミラが階段を降りてきていた。その後ろには男性が1人いた。


 高い身長にムキムキの体。そして高品質の金属鎧に身を包み、これまた強そうな両手斧を背負った男だ。この人がギルドマスターだろう。顔が恐いな。


 「お待たせしました!」


 「すまない、待たせたな。私はアルメガ南支部のギルドマスターをしているゼオランだ。よろしくな。」


 顔が恐く、見た目も強そうだが意外と荒っぽくなかった。雰囲気もなんだか柔らかい感じがする。たぶん見た目で損するタイプだ。


 「初めまして、Eランクのナインです。」


 「Cランクのグレンだ。」


 「うむ。さっそくで悪いがアクアタイガーを倒したと言うのは本当か?死体も持ってきていると聞いたが。」


 挨拶もそこそこにゼオランは本題を切り出してきた。異常事態だから気持ちはわかる。僕たちとしても早く終わらせたいので助かる。


 「ああ。俺とナインの2人で倒した。死体は俺のマジックバッグに入ってる。どこに出せばいい?」


 ギルドマスター相手でも口調を変えないグレンが話を進める。


 「本当なのか・・・。ふむ、とりあえず解体室に出してほしい。こっちだ。」


 流石にギルドマスターだからか、固まるようなことはなかった。


 ギルドの右奥に向かっていったゼオランを追って僕たちも移動する。

向かう先に解体室があるのだろう。解体料を取られるので僕は行ったことはないのでちょっと楽しみだ。


 「失礼する。すまないが場所を開けてもらえるか?なるべく広く頼む。」


 扉を開けるゼオランが中にいる者たちにスペースを作ってくれるようお願いする。


 いきなりのギルドマスター登場に中にいた解体員たちは驚いて大慌てになっていた。そして返事もそこそこに片付けだし、すぐに広いスペースが出来上がる。


 「ギルマス。このくらいで大丈夫でしょうか?」


 「うむ。大丈夫だろう。それじゃあここに出してもらえるか?」


 ゼオランが出来上がったスペースの広さを確認し、こちらを振り向いて取り出すように促してくる。


 「まぁ、ギリ入るか。よいしょっと。」


 グレンが前に進み出てスペースを見回し、バッグからアクアタイガーを取り出した。


 ドンっと音を立てて現れた亡骸は尻尾を抜いても5メートル近くあるので本当にギリギリだった。


 「うおっ!!」


 「何だ!?」


 「でか・・・。」


 解体員は何が出てくるのか知らなかったのかあちらこちらで声をあげている。そういえば何も言ってなかったな。


 「ふむ・・・。本物だな。それに報告通りユニーク個体だ。とりあえず詳細は後で聞こう。こいつは解体でいいんだよな?」


 「ああ、頼む。ナインは毛皮と牙、爪、魔石でいいんだったか?」


 ゼオランと話していたグレンがいきなりこちらに話を振ってきた。置物状態になっていたからちょっと驚いた。


 「あ、うん。皮鎧と長剣作りたいから。」


 「だそうだ。俺はいらねぇからナインに必要な分以外は売却で頼む。」


 あれ?


 「グレンはいらないのか?」


 「あー、防具にしたら強いのはわかんだけどよ。青は趣味じゃねぇんだよなぁ・・・。」


 目を逸らしながら言いにくそうにしていた。暗赤色の髪に炎の剣を使ってるくらいだからやっぱり赤が好きなのかな?


 「そっか。じゃあギルドマスター。すみませんが今グレンが言った通りで。」


 「わかった。明日までには終わるだろうから明日以降に素材と買取金を受け取りに来てくれ。」


 このサイズなのに明日には終わるのか。流石ギルドの解体員だ。


 「わかりました。」


 「それでは報告を聞きたいので上までついてきてくれ。」


 解体室での用も終わったのでまた移動をする。上ってどこだろう?


 「上ってどこだ?」


 「ギルマスの部屋じゃねぇか?」


 あ、なるほど。


 先を歩くゼオランについていくとカウンターの奥の階段に向かっていた。そういえば先程階段を降りてきてたな。


 さて、もう眠くなってきているので早めに終わってくれると助かるなぁ。


 疲れで若干ウトウトしながら階段を登った。

また明日。

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