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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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048 心配と驚愕


 「あ!おーい!!大丈夫か!?なんともないかっ!?」


 アルメガ南門が見えてきたタイミングで門の方から男性の大きな声が聞こえてきた。聞き覚えのある声だ。


 「お。ガーデルさんだ。」


 声の主は僕が街に入る時に何かと世話を焼いてくれた南門の門番をしているガーデルさんだった。


 「知り合いか?」


 徒歩に戻ったグレンが聞いてくる。


 「ああ。僕が街に入る時に色々助けてくれた人だよ。」


 かなりのお人好しの人だ。


 「なるほど。てことは森から出てきたばっかの記憶の無いお前に世話を焼いてくれた人ってことか。かなり心配してそうだな。」


 その説明だけでグレンは大体理解してくれたようだ。そしてその予想通り依頼で街を出た記録はあるから心配しまくっていることだろう。


 「してるだろうなぁ・・・。」


 それによく見ると門の前には沢山の警備隊員がいた。冒険者の姿もちらほら見える。


 今からあそこに行くのはちょっと面倒だ。


 そんな事を思いながら僕たちは門に向かって進んでいった。






 「おい!2人とも無事か!?」


 門に着くとガーデルが走ってきた。そして僕の肩を掴むと僕とグレンを交互に見ながらまるで叫ぶように聞いてきた。


 「あー、はい。大丈夫です。すいません、心配をおかけしました。」


 すごく近くまで顔が来たのでちょっと驚いてしまった。


 「よかった・・・。重傷者を連れた2人の冒険者がユニーク個体のアクアタイガーに襲われたって言ってたんだ。それに逃げてる最中にあった冒険者が自分らを逃すために1人で残ったってな。あれナインの事か?」


 僕が残っていたことも伝わっていたらしい。そりゃ伝えるか。


 「はい、僕です。」


 とりあえず肯定しておこう。誤魔化す理由はないし。


 「馬鹿野郎・・・。無茶しやがって。で?そっちの冒険者が助けてくれて逃げてきたのか?」


 ガーデルが一瞬泣きそうな顔になっていた。だがすぐに顔を戻すとグレンの方を見る。


 「ん?ああ、違ぇよ。俺とナインの2人で倒して帰ってきたんだ。」


 いきなり話を振られたグレンはすぐに否定するとあっさりと倒したと答えた。


 「・・・は?」


 ガーデルが固まってしまった。よく見ると周りの人たちも一様に固まっている。


 そうだよな。そうなるよな。だって2人で倒したって言ったし。しかもちゃんとユニーク個体だって伝わってたからそりゃ驚くよな。


 とりあえずガーデルの復活待ちをする。だが30秒経っても戻ってこない。仕方ない。


 「あのーガーデルさん?ガーデルさーん。」


 「は!?え?た、倒したのか?ユニーク個体だったんだろう!?」


 声をかけると復活した。時間が飛んだような感じになっているが大丈夫だろう。


 「ああ、倒したぜ。あー、ここ使わせて貰うぜ。」


 そう言ってグレンが門の横の誰もいない方に行くとマジックバッグからアクアタイガーの死体を取り出した。手っ取り早く証明するためだろう。確かにこれが一番早いな。


 ドンッ!と地面に首と胴体が離れた体長6メートルのアクアタイガーが現れる。その色はユニーク個体である事を証明するように深い青色だ。


 「ふぉっ!?」


 ガーデルが僕の目の前で変な声を上げ、また固まってしまった。周囲の人もだ。だが今回は早めに戻ってもらおう。


 「ガーデルさん!」


 「おっ!?す、すまん・・・。確かにアクアタイガーだな。しかもユニーク個体だ。本当なんだな・・・。」


 大きめに声を出し名前を呼ぶと今回はすぐに復活し、すぐに死体を確認してくれた。その顔には疲労の色が見える。決して驚き疲れた訳ではないはずだ。


 「まぁそういう訳だ。これからギルドに行って報告してくるから通してもらっていいか?」


 グレンはアクアタイガーをしまうとガーデルたちの方を向く。


 「ああ、わかった。急ぎなところ悪いが規則なんでな。2人ともギルドカードを出してくれ。」


 ガーデルに促され、僕とグレンはマジックバッグからギルドカードを取り出し渡す。


 確認作業の間、周囲に目を向ける。落ち着いてきたからか周りの声も大きくなっていた。


 「あいつの髪と肌、すごい白いな。ていうかあの見た目で男なのか。もったいない。」


 「真っ白だな。あんな色初めて見たぞ。」


 「俺は男でも構わないな・・・。いい。」


 マントがボロボロになってしまったので今は髪を隠せていなかった。替えも持ってない。というかなんか変態が混じってるな。


 隠すのも面倒なんだよなぁ。もういいか。

ただ髪が風でバサバサするから後ろで縛っておこう。


 「ほら、確認終わったぞ。隠すのやめたのか?」


 マジックバッグから出した紐で髪を縛っているとガーデルがギルドカードを返してきた。街に来た時に目立つから隠しておけと言ってくれたのはガーデルだった。やはり心配性なようだ。


 「戦闘でマントが破れちゃったので。それに隠すのも面倒で・・・。」


 カードをバッグにしまいながら本音を溢す。実際めちゃくちゃ面倒だった。視界は狭まるし、風ですぐ捲れそうになるし。


 『大変だもんね。でももう見られちゃったし、この後のギルドでも見られちゃうだろうからいいんじゃない?自衛はしなきゃだけど。』


 メイは僕が毎回面倒くさそうにしてたのを知っているのでやめるのに同意なようだ。


 (まぁその時はその時だ。)


 「お前さんがいいならいいが。気をつけろよ。それじゃあギルドに報告頼むな。」


 ガーデルはそう言うと門の前に集まる人を避けて道を開けてくれた。


 「はい。じゃあ行ってきます。」


 返事をして僕とグレンは門を潜り抜ける。早くギルドに行って報告を終わらせよう。






 ギルドに到着するまでの短い時間。沢山の人が僕たちに視線を向けてきた。というかほぼ全てが僕の頭に向いていた。


 「やっぱり目立つな・・・。」


 「そりゃそんな色してりゃな。俺も初めて見たし。」


 小さくボソッと言ったつもりだったが隣のグレンには聞こえていたようだ。


 「まぁそのうち慣れるか。僕も街の人も。」


 「慣れねぇんじゃねぇかな・・・。」


 今度はグレンがボソッと溢していた。聞こえていたがスルーする事にした。


 「すぐ終わればいいなぁ。無理だろうなぁ。」


 希望的観測を述べながらギルドの入り口を開ける。


 「まぁ疲れてんのはわかってるだろうから、そんなに長く時間は取られねぇよ。」

また明日。

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