046 仲間
第一章最終話です。
「無いな。さっきのナインの説明で大体わかった。そんじゃ、そろそろ街に戻るか。」
そう言うとグレンはこちらに歩いてきた。
聞きたい事も無くなったから帰りたいのだろう。
「そうしよっか。無事な姿も見せなきゃだしね。」
逃した冒険者も心配しているかもしれないしな。
僕は立ち上がると街の方向に進み始めた。グレンもそれに付いてくる。
(あ、ビッグスネーク・・・。)
『依頼は大丈夫だよ。期限見てなかったの?受けてから3日以内って書いてたよ。』
依頼がまだ終わってないことを思い出したがいつの間にか普通に戻ったメイにツッコまれた。
(そうだったか。ていうかもういいのか?)
なんか困惑してただろ。
『うん・・・。色々考えたりしたんだけど、やっぱりわかんないからね。もう少し情報が無いと予想も出来ないし。だからとりあえず後回しにしたよ。』
なるほど。
(まぁそれがいいんじゃないか。旅していけばたぶん嫌でも関わるようになるだろ。)
世界中に何かしてる国なんだし。
『そうだね。』
「そういやナインの事は教えてもらったのに、俺の事はなんも話してなかったな。」
いつの間にか並んで歩いていたグレンが話しかけてきた。
確かにグレンの事は知らないな。
「俺はサウスト大陸出身だ。1年前に冒険者になって国を出て、適当に旅をしている。この炎剣は昔祖父から貰ったもんだ。それとこんなんだが一応貴族の四男だ。」
僕の返事は聞かずに一気に身上を話しだした。
サウスト出身なのかー、と思っていたら貴族の四男にちょっと驚いた。
「貴族・・・?」
『見えないね・・・。』
思わずグレンをジロジロ見てしまった。
メイも驚いてるようだ。
結構荒っぽい口調しているけど、マジで?
「お前がそんな反応になるのはわかるが、もう少し隠せよ。」
「そうは見えなくて。」
「色々あったからな。」
グレンにも色々あったようだ。
まぁ確かに四男とはいえ貴族なのだ。それが冒険者になって国を出るのだから何か理由があるのだろう。
「そっか。旅をしてるって事はアルメガは寄っただけなのか?」
深くは聞かないことにして話を変える。
「ああ。サウスト大陸でCランクになったからイース大陸に来たんだ。ただこの大陸は魔物があんま強くないから、そろそろ北のノースト大陸に行こうと思ってんだ。」
Cランクって事は中級冒険者なのか。
それなら確かにイース大陸じゃ強くなりにくいし別の大陸に向かうか。
ユニークのアクアタイガーは例外だ。
そもそもこの大陸にいる魔物じゃないし。
「ノースト対陸かぁ。」
『行きたいの?』
やはりメイにはわかるようだ
(うーん、正直行ってみたいかな。海が見たい。)
見たことないから。
『行きたいならいいよ。最初に言ったけど自由に生きていいんだからね。』
メイはこの大陸から離れても構わないらしい。
やらなきゃいけない事といえばメイの体用の魔石を探すことくらいだ。それも別にこの大陸じゃなくてもいい訳だし。
(わかった。ありがとう。)
「ナインはこの先どうすんだ?」
メイに返事をしたと同時にグレンが聞いてきた。
「一応僕も近いうちにノースト大陸に向かうつもりだよ。」
今さっき決めた事だが、前から決めてましたみたいな顔して答えた。
「お!そうなのか!じゃあ一緒に行かねぇか?」
ん?一緒に?
「一緒に?グレンと?」
「ああ。冒険者になってからの1年、誰かとパーティ組んで行動ってのはした事無ぇけどよ。どうせ行く方向は同じなんだから一緒の方が何かと便利だろ?それにナインとなら何かと面白そうだからな。」
思わず聞き返してしまったがグレンはそれは楽しそうに答えてきた。すごくいい笑顔だ。
「いいのか?僕、普通じゃないけど。」
返答する前に一応聞いてみる。
さっきも説明したが僕は魔人だ。今後を考えると僕が原因の厄介事にグレンも巻き込まれる事になるだろう。
「別にいいんじゃねぇか?そんなもん気にしてたら生き難くなるぞ。それにもうお前が魔人だって知ってんだ。知ってるやつと一緒の方が楽だろ。」
どうやら本当に気にしないようだ。それと確かにグレンが言うように事情を知ってる人と組む方が楽なのは間違いない。
『いいんじゃない?体の事隠さなくて済むし。』
メイも同じように思ったみたいだ。
それならば。
「そっか・・・。じゃあこれからよろしく頼むよ。」
僕は足を止めてグレンに手を差し出す。
「おう!よろしくな!」
同じく足を止めたグレンは僕の手を握るとまた嬉しそうに笑った。
これにて第一章終了となります。
3日ほどお休みしまして11日より第二章開始となります。
拙い文章ですが読んでくださっている方には感謝を申し上げます。
物語を書くというのはとても難しいですね。
第二章はもう少し丁寧に書けるように頑張ります。
それではまた2月11日に。