042 ダメージ無視
僕が最初に走り出し、遅れてグレンも走り出した。
僕は真っ直ぐにアクアタイガーに向かう。
対してアクアタイガーは水魔法で迎え撃つようだ。奴の周りに水で作られた槍が5本浮かぶ。
『ウォーター・ランスだよ!!避けて!!』
(ダメだ!!このまま行く!!)
メイが魔法を見て警告してくるが僕は進み続ける。
あの水の槍は僕の足を止めるための牽制と攻撃だろう。
あれを回避しようとすれば足が鈍るか止まる。だからこそこのまま進む。足は止めない。
止めればこいつはグレンの方を向く。
水の槍が時間差をつけて撃ち出される。
足には受けるな。体だったら耐えろ。シールドと剣を使え。あとは。
「うおおおぉぉッ!!!」
走りながらシールドを2枚張り、最初の2発を防御する。次の1発は右手の剣で無理矢理弾く。その次の1発は顔に向かって来たので首を捻って避ける。
そして最後の1発は左腕で受ける。
バチュンッ!!!
激しい音を立てて左腕が弾け飛んだ。
「っ!!どうした!?腕1本無くなったくらいじゃ僕は止まらないぞ!!!!」
「グルル・・・。」
止まらず走り続ける僕を見てアクアタイガーが呻くように鳴いた。
腕1本の犠牲で水の槍5本を抜け切った。かなり痛いがこの程度は軽い。
今の僕がアクアタイガーと戦う方法としてはこれが正解なのだ。
『避けないんだ・・・。本当に無茶するね。』
(1発は避けただろ。)
メイの呆れた声に軽口で返し、アクアタイガーに左から斬りかかる。
「ショット!!」
それと同時にマジックの部分を省いてマジックショットも撃ち込む。
わかりやすく左から攻撃したのでアクアタイガーは右に跳んで回避する。
だがそこには回り込んだグレンが待っていた。
「ドンピシャだ!滅炎!!オラァッ!!!」
嬉しそうにそう言うと炎の魔剣を発動し、無防備なアクアタイガーの横っ腹に縦斬りを喰らわす。
「グルアアアッ!?」
アクアタイガーの体にザックリと斬撃の跡が刻まれ、その傷口からは血が流れてきた。
戦いを始めてからやっとまともにダメージが入った。
「グレン!!」
「わかってる!!」
喜びたいところだが攻撃を喰らって驚いている隙を逃すわけにはいかない。僕は左腕を再生しながら距離を詰めながらグレンの名前を叫ぶ。
グレンも返事をしながら同時に走り出す。
だが近づく僕に気付いたアクアタイガーは即座に隙を消すと、水爪撃を発動した右前脚を振り下ろしてきた。
「ッ!!」
受けるとしてもまともに受けるな!!受け切って反撃しろ!!
防御手段が足りないなら増やせ!!
「なめるなぁ!!!シールド!!」
だがシールドだけじゃ受け切れない。
だから剣も防御にまわす。だがそれでも足りない。
新たな手段を増やす。
「マジックソード!!!」
シールドを出すと同時に前脚に対して左下から剣を振る。そして少し遅れて魔力で作られた剣が1本、僕の剣に追随するように左下から現れた。
振り下ろされる水爪撃に対してマジックシールド、長剣、そしてマジックソードで迎え撃つ。
バキンッ!!!
シールドとソードが砕け散り、長剣は半ばで折れたが半分ほど勢いを削ぎ、爪に纏っていた水を消すことは出来た。
だが爪撃を完全に止められないのはわかっていたので後はそのまま胸で受ける。
「うぐっ!!」
爪が胸を抉る痛みがする。
そして衝撃が体を襲い、後ろに弾き飛ばす。
だがセットしていたもう1枚のシールドが僕の背中を受け止め、その場に留める。
僕が今のところ一度に出せるマジックシールドは2枚までだ。
防御に2枚出せばもっとダメージは少なかっただろう。だがその場合、受けた衝撃で僕は数歩後ろに下がることになる。
それではダメなのだ。
「耐えたぞこの野郎!!お返しだ!!」
無理矢理体を止めただけなので背中からも衝撃がきたが歯を食いしばって耐える。
そして折れた剣をアクアタイガーの鼻に突き刺す。
「ガアアッ!!!!」
剣が折れていたため深く刺さらなかったが、かなり痛かったようだ。
「動き止まってんぞ水虎!!ハイ・スラッシュ!!」
折れた剣を引き戻すと走り込んできたグレンが武技を使って後ろ脚に深く斬りつけた。
その隙に僕は体を治しながら無くした剣を探す。
(どこいった・・・?あった!!)
意外と近くに落ちていたので走って取りに行く。
『ナイン、今の魔法・・・。』
(ん?ああ、マジックソードか?いや、無属性魔法ってイメージと魔力制御だろ?なら想像次第でいけるんじゃないかと思ってさ。やってみたらいけた。よし、剣は無事だな。)
剣を拾い、マジックソードの事を話すとまたアクアタイガーに向かう。
僕が剣を拾う時間はグレンが稼いでくれたようだ。
「遅いぞ!!続け!!」
また明日。